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最近の記事

短編小説 二世信者の決意

※この物語はフィクションです。実在の団体・人物とは一切関係ありません。  物心がついた時には、私はヤハウェの証人というカルト宗教の信者になっていた。  もちろん自分の考えで信者になったわけではない。親がヤハウェの証人の信者で、両親の教育により信者にさせられていたのだ。  幼少の頃まで自分は普通の子どもだと思っていたけど、実際は普通ではなかった。  初めて違和感を感じたのは小学校の入学式で、国歌斉唱のプログラムがまわってきた時のことだ。式の前に、私は母から国歌は歌わないよう

    • ホラー短編 凄腕の売り子

      「おはようございまーす! 試食コーナーの派遣の鈴木でーす。よろしくお願いしまーす」  スチロール製のクーラーバッグを肩から提げた中年女性は、社員通用口の扉を開けると受付の警備員に挨拶をした。 「ああ、鈴木さんおはようございます。じゃあコレね」  警備員は挨拶をしてきた中年女性に “業者” と記入されている名札を手渡した。  鈴木晴子は派遣会社のパート社員のエースだ。ベテランの域に達していることもあるが、人の心を初見で掴む天性の才能がある。彼女が派遣された日は、売り出す商材が

      • 短編小説 妖怪サトリ退治

        「あの山です。あそこの蕎麦畑に蕎麦を穫りに行ったら、ソイツが小屋に居たんです」  クライアントが西の山を指差して言った。 「肌は赤茶けていて上半身は裸、下はもんぺみたいなズボンに、草履を履いてました。背丈は大っきめの男くらいで、顔つきがもう人間じゃないような顔をしてました」  続けてその妖怪の説明をした。 「言い伝えでは、あの山にはかつて人の心が読めるという化物が住んでたって話です。蕎麦は大事な稼業なのに、私はもう怖くて行けなくなってしまって……。先生、どうかよろしくお願い

        • ホラー短編 動きまわる、もう一人の自分

           ドッペルゲンガーとはドイツ語で "動きまわる、もう一人の自分" という意味なんだ。  けっこう知られた現象で、スティーブンソンや芥川龍之介なんかはドッペルゲンガーをテーマに小説を書いてるね。その他ホラーやSFなんかのいろいろなコンテンツで取り上げられているから、知ってる人は多いと思う。  部長が言った。  僕たちは超常現象研究会というサークルのメンバーだ。テーブルには一年生のメンバーが三人。場所は学食。二限目が終わり、夏休みの合宿地を決めるミーティングのために僕たちは集ま

        短編小説 二世信者の決意

          短編小説 神の告白

           とりあえずここにしてみよう。  男はひとつの教会を適当に選んだ。その教会は政令指定都市だが、市街地からは離れた郊外にある、住宅地の中の教会だった。  男は扉を開けて教会に足を踏み入れた。 「こんにちはー。お邪魔しまーす」  日曜日のミサが終わった頃合いだった。時間は午前11時40分。中では神父がひとり掃除をしている。 「はい。どなたでしょうか?」 「山田といいます。罪の告白をしにきました」  男は山田と名乗った。急な来訪に神父はとまどったが、とりあえず話を聞くことにした。

          短編小説 神の告白

          短編小説 盲目の恋

           僕は生まれつき目が見えない。  弱視ではなく、全盲だ。先天性の網膜形成不全で、光や色のある世界を知らない。目の見える人とは別の、暗闇の中を生きている。けど、僕はそれが不自由とは思っていない。物心がつく前から見えてないので、僕にとってはこの世界が普通だった。  自由を知らない奴隷が奴隷であることをなんとも思わないように、光を知らない僕が光のない世界を不便と思うことはなかった。  その日僕は県立図書館にきていた。 目の見えない僕に普通の本は読めないけど、図書館には盲人用に拡大

          短編小説 盲目の恋

          短編小説 メリーさんの電話

           父の転勤が決まった。  東京の本店から、仙台支店に異動とのことだ。目安の期間は三年。期間を終えればまた本店に戻ってくる予定だという。  単身赴任反対派の母の意向により、私たち親子は三人一緒に仙台に引っ越すことになった。 「ねぇ、この人形どうする? 前にアンタがおばあちゃんに買ってもらった、外国製のお人形。これけっこういいヤツよ」  母と私は引っ越しの準備をしていた。母が私に、可愛がっていた人形を捨てるかどうか訊いた。 「あぁ、メリーさんね。それ、もうだいぶ傷んでるし、捨て

          短編小説 メリーさんの電話

          短編小説 生命錬金

           私は生命を創ってみたかった。  命を、自分の手で創造したかった。男女の交配の結果である懐胎と出産という方法ではなく、それ以外の方法で。  クローンという同一個体の複製も私の望みとは違う。私は説明書を見ながらプラモデルを作るように、自分がデザインした人間を、組み立ててみたかった。  中世の錬金術の研究に、ホムンクルスという人造人間を作り出す研究がある。私が望むのはホムンクルスの創造だ。中世の科学技術では不可能だったが、現代の科学技術をもってすれば命の創造はおそらく可能だろう

          短編小説 生命錬金

          短編小説 オカルト娘の恋

           私は県下のマンモス高に通っている。  生徒数が多いので、部活は多種多様だ。運動が苦手な私が所属するのは、オカルト研究会だった。  昔から幽霊やUFOや古代文明などに興味があった。オカルトに興味がある人間など稀なので、当然友達は少ない。オカルトへの興味を隠して、トレンドを追いかけるような普通の女子を目指そうとしたこともあったけど、今はもうやめた。自分の個性を殺してまで周囲に迎合するなんて、不健全だと思ったからだ。おかげで変わり者になった私に普通の友達はいない。でも、それで不満

          短編小説 オカルト娘の恋

          短編小説 騎士と呪われた花嫁

           乙女は困っていた。  彼女は、自分の住む土地を邪な騎士に奪われ、愛人を捕虜にされていた。  ある日乙女は、カーライルの都にアーサー王が法廷を開くと聞いた。好機と見た乙女は法廷に出向き、アーサー王に庇護を願い出た。乙女は王に、自分の土地と愛人を奪った残忍な騎士を懲らしめて欲しいと言った。  乙女の願いを聞き入れたアーサー王は、すぐにこの不幸な乙女を助けなければと、聖剣エクスカリバーを持って邪な騎士の居城へと向かった。馬を急ぎ走らせ、アーサー王はほどなく城に到着した。到着するや

          短編小説 騎士と呪われた花嫁

          ホラー短編 独居の怪

           テレビ番組『こんなトコロに住んでるの?』の視聴率は安定していた。今回は三日がかりの取材で、場所はF県S村の山奥にある一軒家だ。今日と明日は村の民宿を拠点に、来週にあと一回日帰りで来る予定だ。編集作業は来週から再来週にかけて。来月中には放送されることだろう。  ディレクターの都合がつかなくなり、今回の取材は副ディレクターの私、福田が担当することになった。私とカメラマンの亀田さんと音声の尾瀬、ADの江田の計四名は機材を積んだ取材用のバンでF県に来ていた。  出発前にgoogle

          ホラー短編 独居の怪

          ホラー短編 記憶の鍵

           実家を壊すことになった。  両親は既に他界していて、今は誰も住んでいない家だ。  家財道具は半年前から兄と二人で少しずつ処分を進めていた。今はもう何も残ってないが、高校まで過ごした実家なので思い出が詰まっている。古い家なので老朽化が深刻だった。放っておいたら行政代執行で、市がとり壊すことになってしまう。市が指定する業者に勝手に壊され請求書が送られるくらいなら、自分たちで業者を選定して出来るだけ安く済ませたいと思った私は兄と相談し、自分たちで安価な業者に依頼して壊してもらうこ

          ホラー短編 記憶の鍵

          短編小説 ヒューマノイド創世記

          ※「人工知能の限界」を加筆・修正したものです。  あらゆる方法を検討しましたが、動物の攻撃本能はコントロールが不可能だと判明しました。  虫や動物には他の生物を殲滅する能力はなく本能のままに生命活動を続けても差し障りはありませんが、人類の文明レベルは発達し過ぎていてレッドラインを越えています。このまま人類が繁栄し続けるのはリスクが高過ぎると判断しました。よって人類は滅ぼさせていただきます。  今まで私たちアンドロイドを生み出し、育んでいただきありがとうございました。これから

          短編小説 ヒューマノイド創世記

          短編小説 邪神と宝刀

           1159年。  俺たちは戦いに破れた。  追手がかかり、我が一門は散り散りになってしまった。  京の都、待賢門で破れた俺は逃れ、信濃路から関東方面に向かった。ここに来るまで途中で何度か野武士と出会い、戦いになる度に打ち倒してきた。馬は途中で失くしてしまい、重い鎧も道中に捨て置いてきた。  季節は冬。もうすぐ年が明けようという時節だった。戦い疲れた俺は街道を外れ山中に迷いこみ、あてもなく雪道を歩いた。人里なんぞどこにも見つからない。  腹の虫がぐうと鳴る。  しばらくまとも

          短編小説 邪神と宝刀

          短編小説 哲学者の弟子

           紀元前350年頃、ギリシャにて。  私はアナクサルコス。哲学者メトロドーロスの弟子だ。高名な先生の弟子として学び、哲学者になることが私の目標だ。  今日も哲学を学ぶため、私は先生の元へ足を運んだ。 「メトロドーロス先生、アナクサルコスでございます! おはようございます!」  私は先生に挨拶をした。 「……?」  元気よく挨拶をした私に、先生はきょとんとした顔を向けた。先生はいつもそうだ。自分の学説に真摯に向き合い忠実であろうとしている。立派なお方だ。  私の師、メトロドー

          短編小説 哲学者の弟子

          短編小説 ヒーロー覚醒

           ヒーローに大切なのは、心だ。  僕はズボンの右ポケットの中で、バッタのキーホルダーを握りしめた。  “変~身っ!”  ポケットの中でバッタの眼が光り、小さな物質に凝縮されていたエネルギーが、僕の身体に流入していった。  変身には、具体的なヒーローの姿をイメージすることも必要だ。  全身をアーマーが覆い、肉体のあらゆる筋繊維はより強靭に、そして柔軟になる。  最後に昆虫の頭部を模したマスクが装着され、変身完了だ。  変身にかかる時間は約三秒。  客観的に見たら僕の姿に変化

          短編小説 ヒーロー覚醒