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次のスタジオの練習は新しいドラムが来た。
新しいって言うかよく知ってるやつだ。
何も知らせずボーカルが連れてきた
久しぶりだった…。
元気やった?って声をかけたらニヤニヤしながら元気やでって言った。
彼をパンクにしたのは紛れもなく自分だった。
嘘みたいな出会いやったな。
22歳の時、まだ一人暮らしをする前に2階の部屋でテレビを観ながらご飯を食べてた。
その時自分は買ったばかりのダブルの革ジャンを慣らすために家でも着てた。
階段を上がる音が聞こえて目線をやるとリーゼントで眉の細い見たことのない顔があった。
ジャケットにスラックスでどう見ても知らないやつだった。
「お前誰や?」もともと自分は驚いたりすることはあまりないので普通に聞いた。
すると ここにくればパンクにしてもらえるって聞いたから…って言った。
誰がそんなこと言ってるねん。で、1人か?どないやって来た?
頭の中は謎だらけになったが大抵のことは受け入れるんでそのままご飯食べながら聞いた。
そいつは自分の家までの手書きの地図を見せた。
で、それ書いたん誰やねん?って聞いたが言わなかった。ま、どうでもよかったんだけどね。
しばらくして思い出したように...
何、黙って上がってきとるねん。下から呼べや。って言うと呼んで30分くらい待っても返事がなかったしテレビの音が聞こえたからここかなって上がって来たと言った。
それやったらしゃーないか…。
自分もこの後の予定はなかったし暇だったから付き合うことにした。
なんか弾けたりするん?って聞くとドラムを少し叩けるって答えた。
だったらパンクバンドをやれ。でもその格好はダサいわ。
目の前にあったパンクのTシャツと黒いスリムのデニムをあげるわって早速着替えさせた。
なかなかピッタリやったな。で、ピアッサーでピアスもあけて輪っかのピアスもやるわって。
あとは髪の毛やな〜これはパンクやないな。持ってるバリカンでモヒカンにした。
出会って数時間で完全に見た目パンクになった。
その頃にはお互い打ち解けてた。
帰りに手元にあったルースターズとクラッシュのテープを死ぬほど聴けって渡した。
その日から3日置きに遊びに来るようになった。
それがそのドラムだった。