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人がわかりあうのは難しいけれど、なぜ難しいのかを知ることはできる(📕)

平日の夜、神楽坂のとある大衆居酒屋。
会社の先輩後輩と、ぐだりぐだりと目的もなく飲んでいた。

仕事の話やら世の中の話やらよくわからない話やらをしていて、そのうちコミュニケーションの取り方の話になった。

そのとき先輩たちから、「はしもとさん(のコミュニケーション)はなんか変だよね。」と言われ、予想外すぎて驚いてしまった。

自分はコミュニケーションがうまい、と思ったことはないけれど、「普通の受け答えはできる、無難なコミュニケーションの人」という認識だった。
まさか変、と言われるとは思っていなかったのだ。

むしろ、わたしはその先輩たちのことを「この人たち変だけれどおもしろいなあ」と。
だからなおのこと衝撃を受けた。
お互い変だと思っていたんですね。なんとまあ。

わたしは梅干しサワーを飲んでいて、「え?そうですか!?」と答えたあと、もう梅干しをつぶすことくらいしかできなかった。サワーはどんどんしょっぱくなっていった。

そのときに「自己認識と他者からの認識は、自分が思っているよりも乖離があるのかもしれないな」と強く感じたことが、いまだに忘れられない。

***

大人になって学んだことのひとつに、「人と人とがわかりあうのは、意外と難しい」ことがある。

ごく簡単なことが伝わらなくてピリっとした空気になったり、自分の思うように人が受け取ってくれなくて、もどかしさを感じたり。

「人はきちんと話せばわかりあえるんだ!!」と素直に思えていたのは高校生くらいまで。
「きちんと話す」にも人それぞれハードルがあることに気づいたし、そもそも「わかりあえるとはなんぞや」という疑問を持つようになった。

そういう問題意識を心の隅っこにもやもやと留まらせていたときに、ある本を見つけた。

ハイディ・グラント・ハルヴァーソン
『だれもわかってくれない 傷つかないための心理学』。


ハルヴァーソンさんは、アメリカの社会心理学者だ。
「どうして他人から誤解されてしまうのか」を心理学的な観点から解説し、どのように対処すれば良いのかを教えてくれる。

読みやすくおもしろかったので一気に読んだ。
人が人を認識するときの、心理的なバイアスやレンズ(=認識を歪ませる色メガネ)を「理解」できることが、なによりも大きい学びになった。


どうして人はバイアスを持ってしまうのか。
それは、「認識するときのエネルギーをケチるから」なのだとか。

たとえば「確証バイアス」。
「この人は頭がいい」と一度思うと、その人が何をやっても頭の良さの表れだと思ってしまうようなこと。
いちいち「この人はどんな人か」を考えるのは大変なので、無意識な思い込みに基づいて判断してしまうらしい。

だから第一印象というのは非常に重要で、あとから認識をひっくり返すのは相当に難しい。

冒頭の話で言えば、もしかしたらわたしは先輩に対して昔、なにかへんてこな対応をしてしまったのかもしれない。
飲んでいて眠くなり、適当なリアクションをしてしまったのかもしれない。
それがイメージとして染み付いて、その後がいかに普通でも「変な人だなあ」と認識されているんじゃないだろうか。
(もちろん、ほんとうに変だという可能性は否定できない......よね。)


バイアスも、レンズも、その人が使おうとして使っているものではない。何度も言うけれど、無意識なのだ。
それをうまく利用することはできても、完全になくすことはたぶん難しい。

でもそういった思い込みが人にはありうるということがわかっただけで、わたしは少し武器を持てたような気持ち。

なんで自分のことがうまく伝わらないの?やっぱり自分が悪いの?そうやって傷つく前に、もしかしてこういう思い込みがあったんじゃないか、と考えることができる。

あるいは、なんでこの人はいつもこんなことをするんだろう、と怒りを感じたときに、自分の思い込みかもなと立ち止まることができる。

1冊を通して、なるほどこんなバイアスや、こんなレンズがあるんだな、と知ることができてよかった。

ハルヴァーソンさん、ありがとうございます。
(実は、弊社からも書籍を出している。そして売れている。多謝。)

***

もしかしたらこのnoteを読んでくれたかもしれない先輩へ。
たしかにめちゃくちゃ驚きましたが、本のタイトルと違って傷ついてはいないので、安心してくださいね......!
またぜひ飲みましょう。

でもわたしがお酒をたくさん飲めるというのは、昔のイメージが残っているだけなのです。
だから大量のジンジャーエールと梅干しサワー1杯しか飲まなくても、驚かないでくださいね。

はしもとより。

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