カスタマイズ・ライス

「みそ汁の葱の量はどうしましょう?」
 そうそう。みんな同じじゃつまらない。
 ここは何でも事細かに注文できる素敵な店だ。

「それではご注文を繰り返させていただきます。
 サラダのドレッシングはマヨネーズ。
 豚肉の焼き加減、しっかり。
 みそ汁の味の濃さ、濃いめ。
 みそ汁の具の多さ、やや多め。
 みそ汁のスープの量、やや少なめ。
 みそ汁の葱の量、たっぷり。
 ご飯の炊き方、かため。
 以上でお間違えなかったでしょうか」
「はい」
 あとは待つこと1時間。

 何かを待つことをこれほど幸福に感じる時間はない。
 炊き立てのご飯以上に望む「ごちそう」なんてないのだ。
 すぐ先に約束された未来を楽しみにしながら、私は借りていた本を開く。今ならばどのような物語でも、広い心で受け入れることができる。優しく強い読者となって、私はページをめくる。淀んだ空気の中に停滞しても、葛藤が満ちていても、行間から不条理な闇があふれ出たとしても、テーブルの上には、理想のオーダーが通っているのだから。憂いなし。
 しばし本を伏せて窓の外を眺める。モンスター級の鴉がストレッチしているようだ。
 昼休みはまだ3時間ある。
 


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