株式会社メルカリの経営戦略

卒業論文で書いたメルカリの経営戦略をnoteで全文公開します。
約2万字(卒論用紙40ページ)あるので、お忙しい方は第4章、第5章だけでも読んでいただけると大枠は理解できると思います!

第1章 はじめに

 1-1. この論文テーマを選んだ経緯

私は高校3年生の時に初めてメルカリを利用した。今から約4年前だが、自分の不用品を出品しただけで、それが国内のだれかの手に渡り、喜んでくれることがとても嬉しかった。さらに、わずかながらお小遣いにもなったことに感動した。
それから約4年、メルカリは急激にユーザー数を増やした。「ユニコーン企業」と言われるまでに成長し、一気にグローバルカンパニーとなった。2018年6月には、ついに上場を果たしたのだ。
私は、メルカリがここまで急成長できたのはどのような背景があるのか、とても気になった。人々は新品を買うのではなく、商品を少しでも安く見ず知らずの他人と取引することに抵抗を持たなくなったというのは、シェアリングエコノミー時代の表れだと思う。そして、メルカリはその風潮をより加速させたのではないか。
創業者の山田進太郎氏にもとても興味を持った。大学時代からインターン先でオークションサイトを立ち上げたり、ベンチャー企業を立ち上げて売却したり、ビジネス経験も豊富である。そんな彼が世界一周後に立ち上げたのがこの「メルカリ」である。メルカリという会社が成長しているのは彼の実力ともいえる。
ビジネスモデル、経営者ともに興味深く、経営学部で学んだ分析を生かし、メルカリの経営戦略を分析してみようと思い、論文テーマに選出した。メルカリは、将来AmazonやGoogleのような世界的な超大企業になるのではないかと見据えている。メルカリを分析し、今後どのように戦略を決定していくかについても考察したい。


 1-2. 論文の構成について

この論文の第1章では、論文テーマを選んだ経緯と、論文の構成について論じる。 

第2章では、メルカリの現状と経営戦略について論じる。2-1ではメルカリの社名の由来、創業5年の歴史を振り返る。2-2ではメルカリの登場によって百貨店などリアル店舗の市場はどうなったのかについて紹介する。2-3ではメルカリの取引の仕組みを図解し、理解する。2-4では、アメリカ進出の現状をデータから読み取る。2-5では過去5年間の財政データから営業利益などを算出する。また、保有株式数についても紹介する。
 
第3章では、分析に使用する経営理論について論じる。この論文では内部環境と外部環境を分析するためのSWOT分析と、マーケティングの4P分析を利用し、メルカリが成長し続けられる仕組みがどのように構成されているのかを分析する。
 
第4章では、第3章で紹介した分析手法をもとに、メルカリの経営戦略の分析を行う。4-1のSWOT分析は、強み、弱み、機会、脅威の4つの視点から分析する。4-2の4P分析では、Product(プロダクト:製品)Price(プライス:価格)Place(プレイス:流通)Promotion(プロモーション:販売促進)のマーケティングの4要素からメルカリを分析する。

 第5章では、論文全体のまとめと今後のメルカリについて論じる。メルカリ今現在も物品のやり取りだけでなく、様々な分野に新規事業を世の中に出してきているが、今後、現在持っているデータを元にさらに事業を拡大させていくであろう。


第2章 株式会社メルカリの現状と経営戦略

 2-1. 株式会社メルカリの創業から現在まで 

メルカリ(mercari)とは、日本およびアメリカ合衆国にてサービスを提供しているフリマアプリである。東京都港区に本社を置き、2013年に山田進太郎氏が株式会社コウゾウ(現・株式会社メルカリ)を設立、2016年に初めて黒字化した。2013年7月2日にAndroid版が、同年7月23日にiPhone版が配信開始となった。1日の出品数は2013年に1万点以上、2015年に10万点以上。6月19日に東京証券取引所マザーズに上場。

「メルカリ」の名称は、ラテン語で「商いする」との意味の「mercari」に由来しており、「マーケット」の語もこの語が起源である。
掲げられたミッションは「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る」。マーケットプレイスとは、売り手と買い手が自由に取引できる、インターネット上の市場のこと。誰かによって捨てる選択をされたものでも、誰かにとって価値のあるものかもしれない。その“売り手”と“買い手”を結びつける存在になること――これがメルカリの主な事業である。
メルカリの登場によって、人々の価値観は“捨てる”以外にも“譲る”“売る”という選択肢が増えたといえる。また、物品の売買以外にも金融事業やシェアビジネスといった新たな分野へと進出するなど、さらなるマーケットプレイスの創造と拡大に取り組み、ミッションの実現を目指している。
地域コミュニティアプリ「アッテ」、本・CD・DVD専用のフリマアプリ「カウル」、ブランド品専門の「メルカリ メゾンズ」、スキルシェアサービスの「teacha」(ティーチャ)などのサービスを運営している。(メルカリアッテは2018年5月にサービス終了。メルカリメゾンズとteachaは2018年8月にサービス終了。) また、メルカリのプラットフォームを活かし新たな金融サービスに挑むメルペイ、「次のメルカリ級事業を創る」をミッションに掲げるソウゾウ(メルカリ100%子会社)を持つ。

図表 1 会社設立からの沿革より、株式会社メルカリはサービス開始から5年で飛躍的成長を遂げ、新市場を切り開いてきた。リリースは2013年。代表リリースからの山田進太郎氏がメルカリの前身となる「コウゾウ」を立ち上げた。そして、同年7月にフリマアプリメルカリのサービスがスタートした。翌年の9月、アメリカでアプリをリリースした。米国での知名度はまるでなく、日本では急成長しているメルカリだがアメリカでは苦戦が続いている。日本発のインターネット企業において、米国市場の成功例はほとんど見当たらないのである。
2015年4月よりヤマト運輸と連携し、配送サービス「らくらくメルカリ便」を開始した。これによってよりユーザーがメルカリを利用しやすいようになった。同年9月には、新規事業開発を目的とした100%子会社のソウゾウを設立し、創業わずか2年しかたたずして積極的に新規事業を生みだすことに注力している。
2016年3月にはその子会社ソウゾウが人と人が実際に会ってモノやサービスを交換する地域コミュニティアプリ「メルカリアッテ」を提供開始しし、事業の拡大を狙っている。モノとサービスの売買を両方繰り広げることで「メルカリ経済圏」の構築を目指している。
2017年3月にはイギリスでメルカリを提供開始した。5月には子会社ソウゾウが本やCDなどのエンタメ領域フリマアプリ「メルカリカウル」を提供開始。7月にはCtoC周辺事業を行う企業に出資する「メルカリファンド」を開始しし、英語学習のマッチングサービスを提供するフラミンゴに出資した。さらには2018年内にシェアサイクル事業に参入することを発表するなど、矢継ぎ早に経済圏の拡大を進めている。
創業から5年後、メルカリは総取引数2.8億件超の”おばけアプリ”に成長し、中古売買の枠を超える影響力を持ち始めた。これまで商品の配送や匿名サービスの利便性を高め、積極的な広告宣伝で知名度を一気に向上させた。その結果、競合を出し抜いて日本のフリマアプリのトップを走ることができた。

図表 1 会社設立からの沿革

出所:週刊東洋経済2017年9月23日号p.36より著者作成。

図表 2 メルカリのアプリダウンロード数

出所:TechCrunch JapanHP(https://jp.techcrunch.com/2017/12/20/mercari-100million-download/) より。

図表 2 メルカリのアプリダウンロード数より、メルカリのダウンロード数は急激に成長しており、2017年には世界ダウンロード数1億を突破した。海外ではアメリカとイギリスの2カ国でアプリを提供しており、アメリカではアプリを2014年9月に提供開始し、2017年11月にはダウンロード数が3000万を超えた。一方イギリスでは2017年3月にアプリを提供開始し、正確なダウンロード数は公表していないものの、日本とアメリカのダウンロード数からイギリスでのダウンロード数はまだ1000万に達していないと言えそうだ。ただ、イギリスでもダウンロード数は順調に伸びているようで、Googleが市場別に発表している「2017年 ベストアプリ」のイギリス版で、メルカリは「New App With the Most Downloads」の1つに選ばれている。(TechCrunch JapanHP(https://jp.techcrunch.com/2017/12/20/mercari-100million-download/) より。


 2-2. リユース市場と店舗販売市場の現状

図表 3 2016年のリユース市場規模

出所:経済産業省「電子商取引に関する市場調査」より。

図表 4 ユーザー1人当たりの月間利用時間

出所:ニールセンデジタルコンテンツ視聴率より。

2016年のフリマアプリ市場は3000億円超(経済産業省調べ)となった。経産省の報告書では、ネットオークションに比べてフリマアプリで販売・購入が多いのは「レディスファッション」や「コスメ・香水・美容」などである。女性や主婦の利用が中心で、メルカリの売上金でまた買い物をするというお金の循環が生まれている。
 スマートフォンで写真を撮影して簡単に出品手続きができるという手軽さから、フリマアプリという市場の拡大は確実である。メルカリの山田進太郎会長は、「最近では、40代~50代の男性が利用し始めている。従来はオークションでの出品が多かった車のパーツや釣り具、自転車、楽器などをメルカリでも見かけるようになった」(東洋経済新報社「週刊東洋経済」2017年9月23日号p.33より。) と述べており、ユーザー層は着実に広まっている。
 図表 3より、フリマアプリの市場規模は2016年時点で16%だが、誕生から4年で3000億円超の市場に成長した。リアルとネットがほぼ拮抗しているが、消費の主役が店舗からネットに移り変わっているのは明らかである。

ユーザーが時間を忘れて没頭する実態は、図表 4からも読み取れる。メルカリの使用時間はフェイスブックやツイッター、などのSNSと同等である。SNSを見るようにユーザーは手軽にメルカリのアプリを利用していることがわかる。メルカリがユーザーの心をつかみリピートを促進できた要因は、売買の手軽さにある。出品したいモノの写真をスマホで数枚撮影しアップロード、商品説明や価格、配送方法など必要事項を記入するだけで、3分もあれば基本の出品作業が完了する。
 
図表5 百貨店売上高の推移

出所:日本百貨店協会HPより。

フリマアプリでの物品の交換の影響をもろにうけているのが百貨店である。
図表5より、百貨店の衣料品売り上げは10年前に比べて3割以上減少した。
これは、メルカリによって中古の衣料品が取引される件数が増えたため、百貨店での衣料販売の売上に影響があったからだと考えられる。2013年からリリースされ、2014年から衣料品の売上高がゆるやかに減少傾向にある。


 2-3. メルカリの取引の仕組みについて 

図表 6 メルカリの取引の流れ

週刊ダイヤモンド2018年9月22日号p.51より著者作成。

図表 6より、メルカリは消費者同士によって商品が取引される。まず売り手が売りたい商品の写真を撮ってアプリにアップする。買い手はほしいものを探し、マッチするものがあれば購入する。支払いは、コンビニ払いやクレジット払い、ケータイ料金と同時の支払い、メルカリでの売上金からの支払いなど様々な方法がある。支払ったお金は一度メルカリにプールされ、相手は売上金を持ち上げできない仕組みになっている。購入者が現れたら売り手は商品を梱包する。買い手は商品を受け取り、届いた商品に記載のない汚れや破損がないか確認し、売り手を評価する。アプリで売り手の評価をしないと取引が終了しない仕組みになっている。買い手の評価が終わると、売り手も買い手を評価する。この際、お金の振り込みが遅かったり、メルカリでのメッセージの対応が悪かったりすれば、評価はさがってしまう。両者の評価が終わって初めて、メルカリにプールされていた売上金が売り手に支払われる。

図表 7 配送・決済で大手企業と続々連携

出所:週刊東洋経済2017年9月23日号p.35より著者作成。

図表 7より、メルカリは、国内大手企業と提携しながら、配送や決済の利便性を高めてきた。
配送面ではヤマト運輸、日本郵便と提携して伝票記入の必要がなく、匿名で配送できるサービスを始めた。ヤマト運輸は、あて名書き不要で発送できる「らくらくメルカリ便」で提携。営業所への持ち込みや集荷にも対応した。日本郵便とは「ゆうゆうメルカリ便」で連携。郵便局への持ち込みにも対応できるようになった。
両サービスにはヤマト営業所や郵便局に加え、指定のコンビニエンスストアに持ち込むなどで、発送できるという利点もある。ファミリーマートとサークルKサンクスは「らくらくメルカリ便」の発送拠点として連携、ローソンは「ゆうゆうメルカリ便」の発想拠点として連携を果たした。
経済面では携帯電話3社と組み、通信料金と一括で支払える仕組みを構築した。ドコモは「ドコモケータイ払い」、KDDIは「auかんたん決済」、ソフトバンクは「ソフトバンクまとめ支払い」を提供している。フリマ業界で初めて、JCBクレジットカードの取り扱いも始めた。

 2-4. アメリカ市場の現状

メルカリは2014年9月にアメリカでアプリをリリースし、世界展開を視野に入れてきている。しかし、日本発のインターネット企業において、米国市場の成功例はほとんど見当たらないのが現状である。
 楽天は10年代に米アマゾンに対抗するべく海外買収を繰り返したが、16年に大半から撤退。この年に米ニューヨーク市場に上場したLINEも、米フェイスブックのアプリに太刀打ちできなかった。グリーとDeNAはゲーム開発の米国法人を開設したが、ヒットを生み出せずにやはり撤退した。彼らは米国でのニーズを捉えられず、IT巨大のスピードに負け、現地の米国人スタッフをマネジメントしきれなかった。米国市場は日本にとって鬼門になっている。
 そういった壁をぶち壊すため、山田CEOはアメリカのIT企業を知り尽くす米グーグルとフェイスブックの幹部を経験したジョン・ラーゲリン氏を熱烈に勧誘。17年6月、ジョン氏がメルカリ米国法人の最高経営責任者(CEO)に就任した。
 

図表 8 日本とアメリカのロゴの差異

出所:mercanより著者作成。

図表 8より、ジョン氏は、就任するや9か月で米国版のロゴマークを青いシンプルなものに刷新した。続いて、日本で成功した配送システムの整備に乗り出し、フェデックスとUPSの米物流大手2社と提携し、全米を一律価格で配送できるシステムを構築した。米国は不用品をガレージセールで販売するカルチャーがあり、フリマアプリを受け入れる土壌はある。問題は、熾烈な業界内でのポジション争いである。

図表 9 米国のショッピングアプリMAU ランキング

出所:APPannieHPより。

図表 9より、MAUトップ(MAU=月間ティブユーザー)は言わずと知れたアマゾンである。それに続くのがイーベイ、ウォルマートといったショッピングアプリで、メルカリは第48位に位置する(2018年7月時点)。
 米オークション大手のイーベイは米国内の流通総額が4兆円に上り、米国版メルカリの200倍の規模である。同じく米クレイグスリストが運営する巨大掲示板は毎月20億ページビューで、「売ります、買います」の情報を提供している。
 いずれもパソコンでのサービスが中心だが、スマホのフリマアプリには米オファーアップ、米レットゴーのベンチャーが居並ぶ。さらにフェイスブックまでもマーケットプレイス機能を追加して16年に参入した。人気のファッション分野では、米ボシュマークが専門性を発揮して存在感を放つ。
 強豪に知名度で劣るメルカリが勝つ手は何か。ジョン氏がしかけたロゴの刷新、配送システムの構築が意味するのは、既存のライバルたちとの徹底的な差別化である。

図表 10 米国のショッピングアプリの特徴

出所:週刊ダイヤモンド2018年9月22日号p.62より著者作成。

図表 10 米国のショッピングアプリの特徴より、イーベイは、日本のヤフオク!のように業者の出品が増えている。対してメルカリは一般消費者層を狙う故に、シンプルで年齢。性別に偏らず、人々に浸透しやすいロゴに改めた。
 クレイグスリスト、オファーアップ、レットゴー、フェイスブックの4社は、近隣の住民同士で直接会って取引する方式だ。これに対してメルカリは、売り手と買い手が会わずに全米で取引ができ、簡単に配送できることにこだわっている。
 ボシュマークは同じ取引方式だがファッション特化型である。メルカリはすべてのジャンルを対象にして、ユーザー基盤を広げていく。
 トータルすると各競合との差別化はなされているが、米調査会社アップアニーによると、メルカリのユーザー数は圧倒的に少なく、スタートに立つにすぎない。まだまだ戦略を練る必要がある。

 2-5. メルカリの会計データからみる財政状態

図表 11 メルカリの業績推移

出所:Stockclip(https://www.stockclip.net/companies/13243)より。

図表 11より、2015/6期の売上高は42億3700万円だったが、2018/6期には357億6500万円にまで増加。 営業利益率は2015/6期の-25.9%から、2018/6期には-12.4%にまで上昇している。
2018/6期の総資産は1177億5200万円、自己資本比率は46.2%、営業キャッシュフローは-34億3700万円、投資キャッシュフローは-19億4400万円となっている。

図表 12 メルカリの営業利益の推移(海外を含む)

出所:【最新・予測】メルカリ業績推移データをグラフ化(https://biz-arts.com/2018/05/21/mercari-data/)より。

図表 12より、メルカリ単体ベース(日本)の営業利益・営業利益率と単体以外(海外など)の営業利益を見ると、単体で得た利益+αを単体以外の事業へ積極的に投資していることが推察できる。

また、単体ベースの営業利益は、2016年に黒字化しており、営業利益率も20%を超えており、安定した収益基盤が確立されているのが分かる。

図表 13メルカリ2018年6月期 保有株式数

出所:Stockclip(https://www.stockclip.net/companies/13243)より。

図表 13より、保有株式数が最大なのは山田 進太郎で3719万2000株と全体の27.48%を占める。続いてユナイテッド株式会社が1050万株(7.76%)、富島 寛が910万株(6.72%)、株式会社suaddが656万7000株(4.85%)、グローバル・ブレイン5号投資事業有限責任組合が476万株(3.52%)、 WiL Fund I, L.P. (常任代理人 大和証券株式会社) が364万株(2.69%)、イーストベンチャーズ投資事業有限責任組合が354万2000株(2.62%)、グロービス4号ファンド投資事業有限責任組合が318万4000株(2.35%)、 STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY (常任代理人 香港上海銀行東京支店 カストディ業務部) が274万8000株(2.03%)、日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口)が231万株(1.71%)。

図表 14メルカリ上場前の資金調達一覧

出所:週刊ダイヤモンド2018年9月22日号より著者作成。

図表 14より、メルカリは数回に及ぶ資金調達に成功してきた。
2014年3月に約14億を調達。同時期にアメリカに子会社を設立し、アプリのリリースに向けた準備を開始した。この時点でダウンロード数は約150万、月間流通額は数億円に留まっている。
 メルカリにサービス開始は2013年の7月。当時すでにダウンロード数100万件を突破したが、フリマアプリの競争が激化していた。年末には「LINEモール」や「ミクシィマイ取引」が参入。メルカリももともとファッション系フリマ「フリル」より出遅れて参入しており、後発組だった。
 フリマアプリは勝者独占。どこか1社しか生き残れない厳しい戦いで共存はあり得ないと判断した山田CEOは勝負時と判断し、メルカリのテレビCMを打つことにした。
 通常、ネットサービスは情報感度の高い層が使い始めて徐々に口コミで一般層に広がっていく過程をとるが、最新のスマホやネット事情に詳しくない層まで普及させるには、やはりテレビCMが効く。
 メルカリも、それまでオンライン広告は展開してきた。しかし、全国区でテレビCMをやるとなれば数億円の世界で、桁が違う。何より当時のメルカリは現在10%とっている手数料を無料としていた時期で、投入する自己資金などなかった。
 13年の創業時には、山田CEOと旧知の関係であったVC2社から計3億5000万円を調達したが、オンライン広告費用や、社員や契約エンジニアの給料で消えてしまう。テレビCMで勝負するなら追加の資金を調達するしかない時期であった。

 山田CEOはメルカリの前にウノウという名のベンチャーを立ち上げて、米ゲーム大手のジンガに数十億で売却した経緯がある。山田の元には数億円の利益が残っていたとみられる。新たな資金調達が無理なら私財をCMの制作費に充てようと考えるほど、山田CEOは2013年を勝負時だと考えていた。
 この時に資金調達に奔走したのがメルカリに合流したばかりの小泉文明(現社長)だった。ミクシィでは最高財務責任者(CFO)を務め、それ以前は大和証券SMBCの証券マンだったため資金調達は専門だった。小泉は見切り発車で広告代理店と協議。CMの放送開始のタイミングを14年5月と決め、それに向けて資金調達とCM制作を同時に行った。結果、そこから3か月でグローバル・ブレインなどの複数のVCとの交渉をまとめ上げて、14.5億円の調達に成功した。入金されるやすぐに代理店にCMの制作費を支払い、何とか5月の放映に間に合わせた。
 また、この時期に小泉社長はもう1つ大きな仕事をしている。それがカスタマーサポートの設置だ。現在、社員の半数がカスタマーサポート要員の同社だが、当時は体制が整っていなかった。だが、個人間取引(CtoC)の場を提供するなら、ユーザー同士のトラブルや詐欺などにきちんと対処しなければならない。ユーザーに一度悪いイメージを持たれたら取り返せない怖さもある。3月には仙台にあるビルの一室にサポート拠点を開設。体制を充実させるため70人が入れる部屋を用意した。
2014年10月、既存株主のGMOベンチャーパートナーズやグローバル・ブレインから、第3者割当増資により約23億円を調達。10月は2回目のテレビCMの全国放映がスタートし、翌年には東京のお台場でリアルフリーマーケットも開催された。この時期は出店数10万件、流通学は月間数十億円に達している。調達した資金は、主に国内とアメリカにおけるプロモーションに使われた。
 2016年3月に約80億円を調達し、累計調達額は約120億円に達した。今回はグローバス・キャピタル・パートナーなどの既存株主に加え、日本政策投資銀行や三井物産などが新規に出資している。三井物産は同時に社外取締役として通信・インターネット事業部長の中條和秀氏を送り込んだ。この出資に携わった通信・インターネット事業部決済・インターネット事業室の最首仁志室長は、「今後メルカリが東南アジアなどにも展開する際、当社の既存事業との連帯を含め支援を検討したい」 と期待を寄せる。

 2018年6月には東証マザーズに上場し、IPOによる大規模な増資で、約500億円を調達した。2018年には、全世界で1億以上のダウンロードを突破し、海外のシェア獲得に向けた事業展開を本格的にスタートした。
 
強みと弱みを把握する方法の例として、人材・リーダーに関する強み弱み組織経営の関する強み弱み、顧客・サービスに関する強み弱み、資金・財務に関する強み・弱み、地域・評判に関する強み弱みなどがあり、それぞれの項目で組織の強み弱みを分析する。またその他の項目でも分析してみる。


第3章 分析に使用する経営理論

 3-1. SWOT分析とは

 SWOT分析とは、企業の現状を分析するツールである。直面する環境状況の分析である外部環境分析と、資源や組織能力の分析である内部環境分析を行う。図表 15より、自法人の強み(Strength)と弱み(Weakness)を認識し、環境にある機会(opportunities)と脅威(Threats)の4つの要因をクロス分析することで自社の成長戦略を創出し、明らかにする手法である。強みと弱みを以下の内部環境(内的要因)と外部環境(外的要因)、それぞれで導き出すことからはじまる。
 強み(Strenghs)と弱み(Weaknesses)は、内的要因に分類される要素のことで、自社でコントロールできる要因である。

強み(Strenghs)とは、法人が保有する諸資源のうち、経済的価値の創造や競争優位の確率を可能にする経営資源や組織能力のことで、目標達成に貢献する組織(個人)の要因であり、弱み(Weaknesses)とは、法人の経済的価値の創造を困難に市、その価値を減少させるような経営資源のことで、目標達成の傷害となる組織(個人)の要因である。

 強みと弱みを把握する方法の例として、人材・リーダーに関する強み弱み組織経営の関する強み弱み、顧客・サービスに関する強み弱み、資金・財務に関する強み・弱み、地域・評判に関する強み弱みなどがあり、それぞれの項目で組織の強み弱みを分析する。またその他の項目でも分析してみる。

機会(opportunities)と脅威(Threats)は、外的要因に分類される要素のことで、自社努力では変えることができない要因である。

機会(opportunities)とは、企業や組織の競争上の地位や業績を改善するような環境要因で、目標達成に貢献する外部の要因であり、脅威(Threats)とは、企業や組織の業績を減少させるような環境の要因で、目標達成の障害となる外部の要因である
 SWOTと分析では、以下のようなマトリックスのフォーマットが良く使われる。

図表 15 SWOT分析

出所:SWOT分析の基礎知識(https://drm.ricoh.jp/lab/glossary/g00016.html)より。

 3-2. 4P分析とは

4Pとは、マーケティング戦略の立案・実行プロセスの1つである、マーケティング・ミックスに関連する要素であり、
•Product(プロダクト:製品)
•Price(プライス:価格)
•Place(プレイス:流通)
•Promotion(プロモーション:販売促進)
の頭文字をとってまとめられるものである。

(1)Product(プロダクト:製品)
企業の利益の源泉となる製品を考える。品質・デザイン・ブランド名・パッケージ・サービス・保証までを含めて製品と考えるが、その根本には、「製品を通して顧客ニーズをどう満たすか」「製品を通して提供できるメリットは何か」という観点がある。そのうえで、自社の製品を既存の市場の中でどう位置付けるかも重要になり、これには次項の価格も大きく関わってくる。

(2)Price(プライス:価格)
 市場で販売するうえでの価格のこと。価格を設定することで必然的に決定されてしまうものが、ターゲット層である。価格を決定する過程では、「顧客が購入してくれる価格なのか」「製品価値との整合性はあるか」「適正な利益を得られる価格であるか」ということの慎重な検討が不可欠である。そして、価格によって定まったターゲット層に確実に製品を届けるためには、「どのような形で製品を市場に流通させるのか」ということが鍵を握る

(3)Place(プレイス:流通)
 製品を市場に流通させるための流通経路や販売する場所が含まれる。実存店舗であれば、自社店舗・コンビニ・百貨店など形態は多岐にわたり、立地や店舗数も勘案する必要がある。また、近年規模が拡大しているネット通販のように、受注から販売までをインターネット上で完結させる方法も存在する。いずれにせよ、「ターゲット層に確実に製品を届けることができる流通形態になっているのか」という観点でその妥当性を検証する必要がある。

(4)Promotion(プロモーション:販売促進)
 市場の顧客ニーズを満たす製品を製作し、ターゲット層を決め、そのターゲット層に購入機会を提供できる流通・販売経路を確保する。この後で、更に必要になることが、「いかに製品を認知してもらうか」ということ。代表的な例としては広告やCMがあるが、この他にイベントの実施やメルマガの送付などもプロモーションのひとつの手法となる。
第4章 株式会社メルカリの経営戦略の分析


第4章 株式会社メルカリの経営戦略の分析

 4-1. SWOT分析

図表 16 メルカリのSWOT分析

出所:著者作成。

図17 メルカリのバリュー

出所:4つのキーワードで読み解くメルカリの強みより(https://superceo.jp/tokusyu/manga/100472)。

  4-1-1. 強み

図表 16より、株式会社メルカリの強みは、バリューの浸透、正しい評価制度、優秀な人材獲得である。

図表 17より、強みの1つ目は、バリューの浸透である。
メルカリは、組織戦略として、3つのバリューを掲げている。それは、Go Bold(大胆にやろう)、All for one (すべては成功のために)、Be Professional(プロフェッショナルであれ)である。
Go Bold(大胆にやろう)は、ミッションが視野にいれている「世界」で成功するためには果敢にリスクテークして攻める姿勢が絶対条件であるという意味である。
All for one (すべては成功のために)は、チームワークを非常に重視し、最高のプロダクトを作るためにメンバーの力を結集し、困難なミッションを乗りこえようという意味である。
Be Professional(プロフェッショナルであれ)とは、社員一人ひとりがオーナーシップをもって自由闊達に働き、専門スキルを磨き続けてほしいという意味である。


メルカリにとって3つのバリューは“ミッションの達成”から逆算して決められた重要な価値観で、社員各々がメルカリの掲げるミッションを達成するためにの行動様式ともいえる。このバリューは、採用活動や社員評価にも用いられている。
会社の存在理由であるミッションは不変のものだが、バリューに関してはそのミッションを達成するために存在するため、定期的に再検討されている。結果的に同じ3つのバリューを3年以上掲げ続けているが、事業の状況次第でより良いものに進化させていくべきだと、経営陣は考えている。
ミーティングやビジネス向けチャットアプリ・Slackなどの発言では常に意識的にバリューが用いられ、社員に配布されるTシャツやステッカーなどのグッズにもプリント。自然と目に留まるようになっている。ここまで浸透が図られているため、バリューに共感した社員のみが会社にあつまり、統一がしやすくなった結果、メルカリが急成長できたのではないかと考えられる。

 メルカリの強み2つ目は、人事評価制度である。
 メルカリでは、OKRに基づいて人事評価がされている。OKRとは、「Objective and Key Rresults(目標と主な結果)」の略語のことである。メルカリの社員はこの評価シートを使って、具体的に何をすべきかを定めている。OKRが優れているのは、経営のトップが決めた目標が現場まで徹底される点だ。四半期に1回という短いサイクルで目標や実行すべきアクションを全社⇒各セクション⇒社員と一気通貫の縦ラインで定める。また、年に12回以上の面談の回数を重ねることで、社員の目標達成を丁寧にフォローアップしている。OKRを設定する期初面談のほか、期中、評価をフィードバックする四半期終了後の面談の3種がある。つまり、平均すれば最低でも、月に1回以上の高頻度で上司を面談をする仕組みができている。OKRを導入することで、PDCAを高速に回すことができているのである。PDCAを高速で回すことは、早い意思決定、軌道修正を行うことができる。メルカリの評価制度が優れているのは、優先順位を決めてなすべきことを明確にして上司がサポートする一方で、バリューの浸透も丁寧には図っていることだ。
 「目標に対する実績」を頻繁に確認して最終的に「会社の持続的な成長」につなげているのだ。

 メルカリの強み3つ目は、「優秀な人材の獲得」である。
図表 18より、メルカリの経営陣には、起業家を中心に経験豊富な人材が集っている。

図表 18 メルカリ経営陣の顔ぶれ

出所:週刊東洋経済2017年9月23日号p.47より著者作成。

インターネット業界の差別化は「人」でしかできない。これだけの顔ぶれが終結できたのは、CEOの山田が各界の優秀な人材を「一緒にやろう」と口説きにかかり、これに百戦錬磨のエリートたちが陥落した。メルカリに集まる多彩な人材が、各々の経験や強み、スキルを発揮し、メルカリ急成長の力となっているのである。
国内だけでなく、海外からも人材確保を進めている。優秀なエンジニアは
世界中の企業で争奪戦が繰り広げられているが、メルカリは、インド最高峰の名門、インド工科大学(IIT)の学生約30人の採用を確保した。インドでのメルカリの知名度はゼロだったが、会社を認知してもらうために、技術者がアイデアを競い合うイベント「ハッカソン」を開催するなど尽力し、インド特有の就活ルールに苦しめながらも、内定を出した学生は計30人に達し、目標を大きく上回った。

  4-1-2. 弱み

メルカリの弱み1つ目は、CtoCならではの「消費者トラブルへの対応の不十分さ」である。メルカリでは、現金やチャージした交通ICカード、領収書、読書感想文など出品禁止のものが出品されていたり、「商品を購入したのに届かない」「詐欺にあった」という報告があったりと、消費者間のトラブルが絶えない。「オークションサイトの米eBay(イーベイ)は、消費者間の紛争をイーベイ自身が主体的に動いて解決する仕組みを持っている。メルカリにもこういうものを1つの手段をして考えてほしい」(週刊東洋経済2017年9月23日号p.49より。) とECネットワークの沢田登志子理事は語る。メルカリは基本的に性善説でサービスを運営しているが、買い手と売り手、どちらの立場であってもトラブルにある可能性はつねにある。今後さらにカスタマーサポートの充実を図る必要がある。

メルカリの弱み2つ目は、メルカリに次ぐ新規サービスが生まれていないことである。2018年は、teacha、メルカリNOW、メルカリメゾンズの3つの新しいサービスから撤退するという発表された。特にteachaは始めて、わずか4ヶ月で撤退である。経営陣がトライアンドエラーを繰り返す。各サービスは、利用者は増えていても、期待するほど成長しなかったことが原因でサービスを終了している。経営陣はメルカリ級の新規事業を目指すことを掲げているので、基準はメルカリの初期のPL(損益計算書)と新規事業のPLを見比べながら事業を行っている。例えばサービスをローンチして3ヵ月だと、どのくらいの広告費を使い、どのくらい成長したといった、メルカリの数字を基準にする。様々な新規事業をローンチさせながらも、ヒットサービスが出ないのは企業の弱みである。
 メルカリの弱み3つ目は、売れなかった商品の取り扱いである。
メルカリは、2018年7月13日時点でフリマアプリ「メルカリ」の累計出品数が10億品(メルカリHPより)を突破した。 しかし、その中でも出品してもずっと売れていない商品のも残っているのが現状である。メルカリは、商品取引時の手数料をとって利益をあげているので、こういった売れなかった商品をいかに売りさばき、利益としていくのかが課題である。

  4-1-3. 機会

メルカリが急成長を遂げた外部環境には、スマートフォンの普及により、「出品」のインターフェースが革命的に変わったことが考えらえる。特に、「カメラ」の変化が大きい。図表 19より、スマートフォンですぐに撮影してアップできるので、パソコンがなくても簡単に出品できるようになった。メルカリでは「出品者」と「購入者」の割合がだいたい半々だが、それほど「購入者」の割合は増えている。また、日本では「フリマ」とう言葉に、ポップでカジュアルなイメージがあるので、女性が親しみを感じたと考えらえる。「オークション」だと女性への浸透が低かった可能性がある。

図表 19 フリマサービスの変化

出所:アプリマーケティング研究所より著者作成。

  4-1-4. 脅威

図表 20 3大フリマアプリの比較

出所:週刊ダイヤモンド2018年9月22日号より著者作成。

メルカリの脅威となっているのは他社のフリマアプリとオークションアプリである。ユーザー数が多いほど利便性が高まるフリマアプリは、メルカリの独走状態であるが、他社も追いすがろうと必死である。メッセンジャーアプリで国内首位のLINEは、13年末に開始したフリマサービス「LINE MALL」を16年5月に終了し、ZOZOROWNを運営するスタートトゥデイの「ZOZOフリマ」も、2017年6月に撤退した。メルカリの独走が続く中、2位以下のライバルたちは必至に対策を講じている。
図表 20より、メルカリの主なライバルは株式会社楽天が運営する「ラクマ」と、株式会社ヤフーが運営する「ヤフオク!」である。
「ラクマ」は16年9月に競合の「フリル」運営会社を買収。ラクマの売りは、販売手数料が3.5%とメルカリの10%よりも安いことである。
19年の歴史を誇るネットオークション「ヤフオク!」で個人間取引市場を開拓したヤフーも、フリマアプリでは追う側である。PCでの利用を含む年間流通総額では8800億円とメルカリを圧倒するヤフオクの利点は、希少品や趣味の商品など1万円超の価格帯に強いことである。ヤフオクは17年2月からフリマ機能を追加した。

メルカリの脅威となるのは、大手のゲオやブックオフなどのリユースショップである。安心・安全の点でメルカリはリユースショップに劣る。リユースショップは古物商としの営業許可を公安委員会から受ける必要があり、未成年を含め、買取依頼の身元確認などを徹底している。メルカリはユーザー同士のトラブルを防ぐべく、法令順守の姿勢でサービスを向上していかなければリユース業界との差は埋められないと考えられる。


 4-2. 4P分析

  4-2-1. Product(プロダクト:製品)

メルカリがリリースされた2013年7月、「フリマアプリ」という概念が日本であまり浸透しておらず、実際に会ってやり取りをする「フリーマーケット」は開催されていても、ネットを通じて商品を売買するというサービスはなかった。その点で、メルカリは世の中に新たな価値を生み出す製品を生み出したといえる。

  4-2-2. Price(プライス:価格)

メルカリのアプリ自体は無料でダウンロードできる。さらに、出品されている商品は中古品が多いため、ほぼ定価よりも安い価格で売られており、買い手のユーザーはお得にお買い物ができる。売り手は、売り出した商品が売れた際、手数料10%が引かれるが、「捨てるよりは売ってお金にしたい」というユーザーの需要に応えることができている。

  4-2-3. Place(プレイス:流通)

メルカリは、スマートフォンを持っている人であれば、誰でも利用することができる。商品の発送は、ヤマト運輸や日本郵便、ファミリーマートなどのコンビニエンスストア、などと提携し、発送場所が多いことにより利便性が高い。出品のハードルが下がる。

  4-2-4. Promotion(プロモーション:販売促進)

 メルカリのプロモーションは、テレビCMの効果が大きい。通常、ネットサービスは情報感度の高い層が使い始めて徐々に口コミで一般層に広がっていく過程を取るが、最新のスマホやネット事情に詳しくない層まで届けるにはテレビCMが効く。CMには人気芸能人を起用し、話題を呼んだ。2017年4月からはサッカーチームの鹿島アントラーズとスポンサー契約を結び、スタジアムでの広告展開や、選手からグッズを出品してもらうなどのスポーツ協賛を開始している。



第5章 まとめとメルカリの展望

メルカリは、リリースされて以来急速な成長を遂げ、人々の生活の一部に溶け込むことができた。メルカリの登場で実店舗は打撃をうけ、人々は「使い終わったものをシェアする」ということに違和感を持たなくなった。

図表 21 メルカリと競合の比較

出所:週刊ダイヤモンド2018年9月22日号p.64より。

アメリカ、イギリスと海外にも挑戦し、「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る」というミッションを体現している。しかし、メルカリの挑戦はここからであると考えられる。

図表 21より、米アマゾンや中国のアリババなど、メルカリの競合企業はメインとしている事業のほかにも様々な事業を有している。米アマゾンはリアル店舗の食品スーパー、米ホールフーズ・マーケットを買収したことで注目された。中国のアリババ集団も傘下の生鮮スーパー、フーマーフレッシュで、ネット販売と実店舗を融合し、O2O(オフライン・トゥ・オンライン)の施策を次々と打ち出している。そこから世界進出を狙うメルカリの進む方向を占うと、金融、小売り、ライドシェアがパズルを埋めるピースとして浮かび上がってくる。   
メルカリは2018年から金融子会社メルペイで決済事業に参入する。フリマアプリでためたポイントをコンビニエンスストアや飲食店で利用できるようにして、一大メルカリ経済圏を築くのだ。
メルカリの強みは、中古品を売って得た現金(メルカリポイント)をメルペイのウォレット(財布)にためられることにある。このポイントは再びアプリ内で使える仕組みだが、今後はアプリ外でも利用できるようにするのがメルカリ経済圏拡大の骨格だ。
メルカリがコンビニと連携すれば、アプリで貯めたポイントでコンビニの弁当やお茶が買える。図表 22より、レストランチェーンでの食事や、バスやタクシーでもポイントが使えれば、それだけ”メルカリマネー”の経済圏は広がっていく。
 銀行や証券会社も提携対象だ。銀行口座の預金をポイントに交換するとともに、融資や金融 商品が利用できるようになればウォレット機能は飛躍的に拡大する。拡大するのはポイントの使い道だけではない。ユーザーが利用した金融、飲食、小売り、交通などあらゆる場所の取引情報が続々とメルカリに集まってくる。これによって出品者や購入者を互いに評価しあうフリマアプリの機能をフリマ以外に応用できる。セルフサービス店舗での利用者のふるまいを評価して数値化すれば、顧客の信用情報に加工できる可能性も出てくる。メルカリは、過去5年で2.8億回に上る配送が行われている。その取引で蓄積されたデータは宝の山であり、モノ、場所、顧客のデータは今後のビジネスに大いに活用できるであろう。

図表 22 メルペイの目指す世界

出所:MORE MORE COIN(https://moremorecoin.com/2018/03/01/post-428/)より。

 メルカリの登場で、「モノを売るのは会社、買うのは消費者」という役割に分かれていたのが、誰でもモノを売れるようになり、人間のプリミティブな欲求がテクノロジーで復活してきている。大量生産大量消費の時代から、元のプリミティブな状態に戻りつつある。メルカリは、人々の売買体験を変えた。CtoCの可能性はこれからも広がっていくだろう。


参考文献

『週刊ダイヤモンド』2018年9月22日号,pp.30-67,株式会社ダイヤモンド社

『週刊東洋経済』2017年9月23日号,pp.32-49,東洋経済新報社

参考資料

・TechCrunch
https://jp.techcrunch.com/2017/12/20/mercari-100million-download/

・ログミーファイナンス
https://logmi.jp/305823

・Stockclip
https://www.stockclip.net/companies/13243 

・メルカリ IR情報
https://about.mercari.com/ir/library/ 

・【最新・予測】日米メルカリ業績推移データをグラフ化(MAU / CPAなど)
https://biz-arts.com/2018/05/21/mercari-data/ 

・アプリマーケティング研究所
https://appmarketinglabo.net/mercari/ 

・mercan
https://mercan.mercari.com/ 

・マーケティングの4P分析とは?基本と5分でできるケーススタディ3選
https://innova-jp.com/3713/


あとがき:卒論を書き終えて

おそらく、メルカリの経営戦略を卒業論文で書いた人は私が初めてではないでしょうか。最初テーマを選ぶときに、教授に「メルカリについて書きたいです」と言ったら「ほんとに書けるんか!?」と疑われました。しかし、昨年上場を果たしたのものあり、今こそメルカリのことをもっと知りたいと思いました。

高校3年生のときに初めてメルカリを使って依頼、「商売」の面白さに気づき、たくさんの物品を出してきました。価格設定や、商品説明の文章一つで購入されるスピードが変わるので、色々と試行錯誤して売るのがとても楽しかったです。何か欲しいものがあるときでも、まずはメルカリで検索するのが普通になりました。私にとって、メルカリは、本当になくてはならないアプリです。

設立6年ほどの会社なので、なかなかデータがなく、(書籍もつい最近出版されたばかりですが卒論の執筆には間に合わず・・・)資料集めには苦労しました。東洋経済さんと週刊ダイヤモンドさんに感謝しています。

改めて、私はメルカリが大好きです。調べていくにつれ、さらにメルカリの魅力に気づき、一度働いてみたいなとも思いました。(社員さんの話をもっと聞きたいので、社会人になったらごはん行きましょう笑)

かなり長い論文でしたが、ここまで読んでくれてありがとうございました!

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

読んでくださってありがとうございました! サポートしてくださったら執筆のモチベーションになります♡

ありがとう
336

なぎ

note編集部のお気に入り記事

様々なジャンルでnote編集部がお気に入りの記事をまとめていきます。
15つのマガジンに含まれています

コメント1件

卒論お疲れ様です(*'▽'*)全部読みました。
メルカリ愛が伝わってくる素敵な文。
知り合いの何人かがメルカリで働いているため、なんか私も嬉しいです。私もメルカリ文化大好きです。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。