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【まさかのジャムセッション】クリスチャン・ディオール 夢のクチュリエ 東京都現代美術館

展覧会を見るまで、ネタバレを踏みたくないので、極力各メディアの展覧会レポートなどは見ないで過ごしてきた。
見終わった後から美術手帖など見て、なるほどー!と思うこともしばしば。
よし!もう一度行くぞ!
ということで、ネタバレをまだ控えている方は『夢のクチュリエ展を楽しむ見学のコツ』だけ読んでいただけるとお役に立てるかもしれません。
(1月19日訪問)

展示品について

【展示品のドレスについて】

ニュールックのbarジャケット。

ドレスについては、出来れば写真を撮る前にじっくりと目で見て欲しい。
刺繍ワークなんて特に。
とにかく細かく、チクチクと布を走る針と糸の音が聞こえて来そうである。
オーガンジーやチュール生地への縫い付けなんて自分が不器用だから良くつれないで縫えるな、と思ってしまう。

【トワルの縫い目がかわいい】


トワルと言うのは建築でいうと模型の様な絵画だと下書きというか。
自分が学生の頃は生成りのシーチングを使用していたので、いつもクリーム色のトワルだった。真っ白な生地を使うんだなーという感動。いや、シーチングといえど品質が桁近いなんだと思いますが。

トワルの部屋

トワル…手縫いなんですよね。
下書きみたいなものなので。
だからしつけ糸のチクチクした縫い目になんか感情がある様な、そんな運針の表情を感じてしまう。
どんな気持ちで縫い進めたのだろうか。

そしてbarジャケットを下からのアングルで眺められるのは良いなぁと。
腰骨の所には小さなクッションが入っていたり、デザインによってはチュールで膨らませていたり。
コルセットから解放された女性にコルセットを再び着用させるという考えは無かったのだな…

『空間演出の覇者、東京都現代美術館』

【展示空間の素晴らしさ】


ふと、展示室の装飾を担当した日本人名記載があり、あれ?と思い監視員の方へ質問をした。「世界を巡回した展示と聞いたがどこまで同じのか?」と。そしたら、全く同じ部屋もあれば、日本用に作ったものも多数あるそうだ。
空間デザインもさることながら動線が素晴らしいのだ。

障子の仕組みかな?和紙的な柔らかな台座。
あの吹き抜けの大活用
地下の展示室はとにかくすごい。
そんなに広い空間ではないはずなのだが
無限の広がりを感じることのできる空間。
素晴らしい。

建築家・重松象平氏がデザインし、今回の展覧会のキュレーター・フロランス・ミュラー氏が日本用に再構築した、と。

そんな話をしていたら、その場を通りかかった女性が声をかけてくれた。
ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(Victoria & Albert Museum)で同じ展覧会を見たというのだ(というか、博物館なのか、DIOR側なのかの関係者と言っていた)
彼女曰く、
「こちらの方が空間の使い方が素晴らしい!展示の仕方がよっぽど良いわ。イギリスのスタッフに伝えたい」
・まず展示室が広い
・空間演出が凝っている
・イギリスの展示もきっとSNSに上がってるだろうからハッシュタグでVictoria & Albert Museumと入れて見て
との事。
参考になりそうな動画を発見したので見てみた。


これはこれでもちろん素敵である。

イギリス開催時は日本展の「皇室との関わり関連展示」の部分がイギリス王室との関わり展示へ変更されていたり、その土地、国に合わせたキュレーションを行い世界を巡回して来たらしい。
思わぬ情報が聞けて監視員さんと私、ちょっとホクホクしてしまった。
こういう交流って鑑賞体験をさらに特別な事にしてくれる。
サクッと声をかけてくれた女性には感謝である。

【東京都現代美術館で開催する意義】


地下の展示空間はどの部屋も「わ!」と驚き心が震える体験だった。
ディオール氏の庭、植物への想いに乗せた展示空間ではなんと東京都現代美術館の所蔵作品とのコラボレーション。

ジャムセッションだーー!!!

これがまた…初めて見る油彩だったのでそっちに気が取られてしまった。現美のコレクション展示室で見たことなかった…

でもドレスの色やテーマと絵画がぴったり合っていて、よくぞこの場にこの絵画を提案してくれたな、と。

現代美術館にしては古い油絵なんですよ。1920年〜40年代ぐらいの作品中心で。国立近代美術館が所蔵してそうな。(後で検索かけてみよう)恐らく、東京都美術館時代からのコレクションであろう。

このタイミングで初めて見る所蔵作品
ぴったりだ。
鏡ばりなので、スカートのパニエまで見えるが、白い装飾と合っている。
1925年の作品。牧野虎雄氏。初耳でした。
圧巻。
フランスならばモネと並べたら、色がピッタリ合いそう。


この所蔵絵画をこの展示室にを飾ろう、となった経緯が物凄く知りたい。
ここに、ディオール側だけの一方通行の展示では無い、現代美術館のアイデンティティがしっかり組み込まれていることに、この美術館で展示した意味が物凄くあると思う。単なる場所を提供しただけではないのだ。

(まぁ実際びっくりして、ドレスと絵画どっち見れば良いかと右往左往してしまい、その部屋を見終わるのに物凄く時間がかかったが)

【その所蔵品もセッションさせますか】


スターの部屋には…
コレクション展示室では絶対撮影禁止のはずの現美のマリリンが…撮影OKになっていましたよ。
そっちにびっくりしてしまった。でもモンローはシャネルのイメージ強いけどな。5番の香水のおかげでね。

現代美術館の最強カード、ウォーホルのマリリン
コレクション展示室で見るのとは違う趣きがある


『夢のクチュリエ展を楽しむ見学のコツ』


【素材論少し頭にいれておくと面白い】


たくさんあるドレスを見ているとやはり素材が気になったり、タイトルがついている服もあります。

どれが、どのタイトルのドレスなのかが気になりました。
が、キャプションと展示物が今回遠いのです。

なのでキャプションに書かれた説明から、展示物の素材に検討をつけると、「あ、あのドレスはこの説明なんだな」というのがぱっとわかります。
(しかしキャプションは文章で記載されてたので、できれば箇条書きの方がわかりやすかったのですが。。。)

「ラスコーモチーフのプリント入りシルクツイルのアフタヌーンドレス」。「の」が二つ続くと違和感が発生する。

【ファッション関連展示見慣れない方は素材論だけ予習がおすすめ】


全部覚えるのは無理なので

生地には

素材名→この辺は馴染み深い。原材料的な話。
種類名→加工の種類といいますか。


2種があることを簡単に頭に入れておくと良いです。
特に今回の展示だとドレス系レディス系の服飾展示なので、
例:
素材名→綿やシルク、ウール、ポリエステル 
種類名→オーガンジー、グログラン、ベロア、ビロード、ウールギャバジン、サテン、タフタ

この辺の特徴を覚えておくと楽しめますよ。

参考:このサイト↓生地問屋さんの素材辞典サイトが非常にわかりやすいです。



【撮影バブル凄いから第1室は飛ばして人がある程度捌けたら戻ると良い】


別に「絶対順路順守しないと内容が理解出来ない」展示では無いので、入場時間すぐの第1室は飛ばして第二室から見るとじっくり見れる。(戻るのを忘れずに)
でもね、最高峰のドレスとあの素晴らしい空間見るとテンション上がっちゃうのは仕方ない。
後から見返したくなってシャッター切ってしまう気持ちもわかる。

とはいえ、写真パシパシ撮って展示物の前でスマホ眺めレタッチしたりデジカメの設定見直す時間が増えるんなら、はっきり言って邪魔だし、目の前のドレスの本物あるなら、肉眼で繊細な素材見ようよ…縫い目にとか袖付のライン面白いから見て…とも思う。
いや…流石にレタッチは脇に避けてからやってくれ…

【図録買いました】


内容は高木由利子氏の撮影するDiorの写真集だ、と認識してます。
ミュージアムショップにはサンプルもあるので、紙の質感とかぜひ確認してみて下さい。
展示空間の写真などはなし。
(そりゃ初日に図録納品されてたら会場写真は間に合わんよね…)
展示空間を手元に残したい方は、やはり自分で写真を残すことが大事。

モノクロームの写真が素敵なんだ。
展示空間のバックにある大きなプリント、見どころです。マネキンではなく、動きのある服の様子が伝わる。



今回、図録にも展示室にも出品目録はないので、気に入ったものや後から調べたいことなどは見学中に写真を撮ったりメモで残すなりを自分でする必要がありそうです。
そういった意味では写真撮影OKなのはありがたいな、と思う。
(SNSの拡散戦略、広報狙いかなーとも思いますが)
撮影禁止の作品はキャプションの撮影も禁止なのでお気をつけて!

エピローグ・東京都現代美術館とファッション展示の歴史


図録の序文に東京都現代美術館の館長、岡氏の文章がありまして帰宅後、何気なく読んでいたらじんわり涙が溢れてきた。

興奮して帰宅して一通り夫に話を聞いてもらい、昨今の服飾展示のモヤモヤ(22年のM1号の○ャネル展やら、ファッションインジャパン展がイマイチだったので)も含め、今回がいかに快挙かを熱弁してたんですよ。
過去の現代美術館でのファッション展示の図録やら引っ張り出して、あの時あの展示があってこその今回だ!とか。

そしたら、ちゃんと1999年「身体の夢」展の話が序文に記載されてて。
そこがスタートだと、言うんですね。

1999年、身体の夢展のフライヤー
京都服飾研究財団が主催。これも圧巻の展示だった。



知ってる。

知ってるよ。そこがスタートだと。
私、見たもの。私の人生変わったもの。
アパレル業界で働けたもの。デザインの仕事就けたもの。

今にもちゃんと地続きで繋がっているし、人1人の人生を彩る出会いの場になっていたよ!と。

と思ったら、涙が溢れてきました。


今回、ちゃんと東京都現代美術館のアイデンティティを感じるし、Dior側だけに頼らない展示を作り上げた、存在感をちゃんと出したということが本当に嬉しかった。
この美術館の意義や底力、20年以上積み上げた歴史、いろんな人との関わり、監視員の方など感謝したい。


コレクション展もちゃんと見た。合計6時間いました。

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