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カニとか鴨南蛮とか



カニとか鴨南蛮とかですが、とうとう肺結核の第7話になってしまいました。


第7話と言ったらあれじゃないですか、創世記だったら天地作った神様が疲れて休んじゃう日じゃないですか。

そろそろ私だって疲れてくるじゃないですか、そろそろ次の入院に進みたいじゃないですか、次は美女満載でウハウハじゃないですか。


そんな隔離病棟のお話が続きます。


息子の誘導で進めていたポケモンもギラティナをゲットして大詰めを迎えておりました。

ギラティナのゲットが終わったらポケモンリーグ四天王でチャンピオンがエンディングじゃないですか、私も燃えるじゃないですか、完全にロンリー炎上商法じゃないですか。

気合い入れてプレイしたんです、早々に四天王を倒してチャンピオン戦ですよ、もうクリアしたようなもんですよ。


という事を息子にテレビ電話で報告しました。

そしたら泣いて抗議されました。

なんでクリアしてんだと。


なんか私の意図が息子に伝わっていなかったみたいなんですよ、なんか別ファイルに保存されてると思ってたみたいなんですよ、お父さん悲しい。

家に帰った時は土下座して謝りました。


それでですね、2009年10月というと神奈川で参院選の補欠選挙があったんです。

投票日は25日でしたが、こちとら隔離の身じゃないですか、外に出れないじゃないですか。

でも投票は国民の権利であり義務みたいなもんじゃないですか。


どうすんだこれ?と思いましたが、隔離病棟の中に臨時の投票所が設置されたんですよ。

という事で病院の中で国政選挙の投票をするというレアな体験が青い体験だったんです。


普通あります?病院で投票した事ってあります?

私なんか隔離された上で投票してるんですよ。

これも普通に生活していて無くありません?レア過ぎません?


そしていよいよ3回目の蛍光塗抹試験です。

さあ、2度ある事は3度あるが勝つか、3度目の正直が勝つか世紀の一瞬でございます。

看護師さんに痰を提出して1日間待つのだぞ、の大五郎ですが焼酎の方ではありません、流石に隔離病棟内で酒は飲めません。


そうではなくて子連れ狼、拝一刀の子供になります。

拝一刀を斃した柳生列堂に一矢報いた大五郎なんです。

いや、燃えましたよね、子連れ狼の最終回。


そんな私も闘病生活で床擦れ狼でしたが、これを最後としたい検査でした。

そして検査結果の出る朝を迎えたのでございます。


朝飯を食い終えて煙草を吸って病室に戻ると、看護師さん達が私のベッドに勢揃いしてるんです、なんか私のベッドを囲んでるんです。

看護師の人にベッドを囲まれると何かヤバいみたいじゃないですか、普通はドン引きするじゃないですか、脈とか取られてるみたいじゃないですか。


そしたら看護師さん達が私に振り向いて万歳三唱ですよ。

なんだこれ?と思っていたら看護師さん曰く「おめでとうございます!3週勝ち抜きです!!」


いやもう試験はストレートで勝ち抜けですよ、パーフェクトゲームですよ。

という訳で見事、退院の運びとなりました。

これで翌日から隔離生活とサバラですよ、グワシですよ。


そしたら明日は手続きとか色々とあって時間がかかるんで、昼飯をどうするのかと聞かれたんです。

メニューを見たら昼飯は鰻丼じゃないですか。

もう午後に帰るしか選択肢はありませんでした。


しかし、これで隔離生活からは解放です。


まだ陽も出ていない早朝、屋上に行きホットな缶コーヒーを飲みます。

私は徐々に明けていく夜空を見上げ、紫煙を燻らせておりました。

長かった、とても長かった4週間の隔離も、これで最後です。


煙草を吸い終え階段を降りようとすると、例の可愛い女の子から声をかけられました。


「前から聞こうと思ってたんですけど、結核に悲観して人生を諦めてませんか?」

「は?」


なんかですね、あまり私が喋らないもんだから絶望してると勘違いしてたみたいなんです。

いやいやいやいや、喋らないのは単なる性格ですから、入院は人生で2度目ですから、前の入院では薬どころか毎日注射されてましたから。


そんな事を少し女の子と談笑していましたが、今日で退院だと言うのを忘れました。

忘れなかったら女の子と恋が始まったかもしれません。


そしたらですよ、嫁様から電話が掛かってきたんです。

曰く「息子がインフルエンザになったらしい」


どーすんですか、これどーすりゃいいんですか、結核が治った直後にインフルになったらどーなるんですか。

とりあえず看護師さんに相談したんです。

そしたらですよ「警告する、家族にインフルエンザ患者が出たのなら退院するのは止めておけ、繰り返す、止めておけ」


いやもう冗談じゃないですよ、勘弁して下さいよ、強制じゃなきゃ帰りますよ。

とりあえず鰻丼食べて退院の準備をしましたよ。



全ての手続きを終え、あの厳重な二重扉を開けます。

そこには何事にも束縛されない世界が広がっておりました。

私は駅までの道のりを辿り始め、そして二度と振り返らなかったのでございます。


〜 終冬 〜



という事で、陳念ハゲましておめでとうございます。








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