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おやじパンクス、恋をする。#206

 久々の愛車にまたがって、駅前を中心にあてもなく走った。

 普通なら日の照ってる時間だが、今日の空はびっしりと雲が覆っていて、町はひどく暗くて、そして当然といえば当然だが、雄大は見つからない。

 まあ、行方くらませといてこの辺をのん気にブラブラしてんなら、それこそアホだ。

 勝手知ったる町のはずなのに、いざこういう目的でキョロキョロしてると、意外と知らねえ場所が多くて驚く。

 俺がもう五年住んでる小せえアパートでも、一度も顔を合わせたことのない住人は大勢いるわけで、まあ、一人の人間が一生のうちに接することのできる範囲なんて、自分で思ってるよりもずーっと小せえってことなんだろう。

 駅前の大通りから駅裏、美容院や洋服屋の集まってる界隈、昭和の時代から続いてるっていう寂れた風俗街、パルコやら三越やらが集まってる商業地区、いろいろ回ってみたが、収穫はなかった。

 頭のどこかで、こんなことしてても仕方ねえって思いつつ、それでも立ち止まってるとモヤモヤしてくるんで、バイクを闇雲に走らせる。

 ちょっと外れまで飛ばして「トータル」にも行ってみたが、ボンも当然、見当つかねえということだった。

 それから俺は問屋町に向かった。

 そうさ、梶商事のビルがある場所だ。

 つうか、ボンの店に向かった時点で、ここに来るつもりではあったんだろう。でも、言ったろ、俺は事なかれ主義の人間、できれば揉め事は避けたいし、喧嘩が嫌いじゃねえったって、それに付随するゴタゴタはごめんなんだよ。

 そして俺は、どんよりと曇った空の下、梶商事に到着した。

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この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

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