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【読書ノート】『失われた時代の海』

『失われた時代の海』(『エレンデイラ』より)
ガルシア・マルケス著


海岸沿いの村で、海の方から薔薇の匂いがするという不思議な現象が起こる。ちょうど、ハーバートというアメリカ人の資本家が、村に現れて、村人たちにお金をばら撒くのだという。

キーワードをあげてみた。

①睡眠
1. 現実と夢の境界: 睡眠は現実と夢の間の境界をはっきりさせる。この境界を模索することは、現実の本質や認識の仕方を考察する機会を提供する。

2. 意識の一時的な喪失:これは「我なるもの」や意識の本質についての哲学的な問いを提起する。

3. 再生とリニューアル: 睡眠は身体と心の再生、リニューアルの時間になる。これは変化、再生、死と再生の永遠のサイクルという哲学的な主題を象徴する。

4. 自己との孤独: 睡眠は一人で過ごす時間であり、自己と向き合う時間。

5. 時間の経過: 睡眠は一日の終わりを象徴し、時間の一部としてのその役割は、時間の経過と永遠性についての哲学的な探求を促す。

②薔薇の匂い
美、愛、一過性、そして再生の象徴。

③音楽
感情、存在、美、真理、人間の経験の表現と解釈の手段。

④蓄音機
時間と空間を超えた音楽の保存と再生、文化的記憶と経験の象徴。

⑤失われた時代の海とは?
時間、記憶、生と死についての深い哲学的問題を象徴する。時間が過ぎ去ることで"失われた時代"となり、それが"海"のように広大で深い意味を持つ。これは人生の経験や過去の記憶、そして時の流れと死に対する態度を反映している。


ハーバートの行動は「功利主義」の考え方に基づいている。彼は人々に幸福をもたらすために行動しようとしているように見えるが、その方法にはリスクや不確実性がある。報酬を得るために努力することができる人々には成功の機会が与えられるが、努力や選択の結果によっては、逆に困難や失敗を招くこともある。

この場合、個人の選択に責任がかかってくる。ハーバートは金を与えることで人々の可能性を広げる一方で、個人自身が自己責任を持ち、慎重に判断することが、求められる。人々は自分の得意なことに集中し、報酬を得ることで自己成長や満足感を得ることができるが、自分の能力や限界を理解し、無謀な選択には注意する必要がある。

物語は、ハーバートが保有する大金の分配は、村の公正や平等といった倫理的問題を提起し、成功の機会が一部の人々に偏り、他の人々が不利な状況に置かれる可能性を示唆する。貧富の差が生まれるということ。

物語は「現実主義」と「驚異への欲求」の二つの観点を探求します。ハーバートは驚異的な経験をし、現実を直視する現実主義者として描かれます。一方、トビーアスは奇跡への欲求を表現します。物語は人間の現実認識と奇跡への欲求の両面を描き出し、両者が個人の内面的な満足と感動を追求する中で交錯します。

海の底には、大量の死体が、集積されているのだけど、そのすぐそばに、豊かさ・富を象徴があり、薔薇の匂いを漂わせている。この辺りが、魔法リアリズムなのだろうなあ。

自由民主主義・資本主義経済の限界を予見しているのかとか思った。

物語の主題は何か?
ハーバートという、所謂、村にとっては、黒船の来航によって、自由民主主義経済・資本主義が、この村人たちを襲う。

そして、アメリカン・ドリームは、貧富の差と大量の死と隣り合わせに存在しているということなのだと理解した。

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