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読んだ小説を褒めながら紹介するnote ~『君のせいで今日も死ねない。』篇~

 ひとりの死にたがりな少女と、ひとりの死なせたくない少年。

書影・著者情報など。

\どーん/

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 ロングヘアーを風に踊らせながら、手すりに凭れる美少女。
 ここからなら、すぐに逝けますね。
 ――と不謹慎なことを言えてしまうのが、本作のメインスタンス。
 イラスト担当はDSマイル先生

 著者は飴月あめつき先生
 本作でデビューとなっています。
 元々は短篇だったそうです。

https://fantasiabunko.jp/special/202108kiminosei/


 コラボMVもあるようなので貼っておきます。
 帯にコメントも付いてますが、音楽担当はボカロPの Omoi 氏。


『君のせいで今日も死ねない。』とは。

 諸事情あり、主人公の真名まなは最終局面まで明かさないので、こちらでの紹介もそのまま「Aくん」とさせていただきましょう。
 少年Aです。
 そんな呼ばれ方ではもはや犯罪者です。
 閑話休題。

 そんなモブキャラ然とした「Aくん」ですが、ある月曜日の昼前に授業をサボって学校の屋上に向かいます。
 こっそり鍵をくすねていた彼は日常的に屋上への侵入を果たせるのですが、そんな屋上に自分以外の人影――女子生徒を見つけます。

 彼女の前には、大した高さのない柵
 そして、彼女の足下には、綺麗に揃えられた靴

「いや、その、こんなところで何してるんだ?」
「何って、見たらわかるでしょ? 自殺するの

(『君のせいで今日も死ねない。』 p.5 より)

 そうだろうなぁと思えるような状況証拠はこれでもかと言わんばかりに揃っていました。

 少女は、三峰みつみね彩葉いろは
 所謂「神に万物を授かった」タイプの子。
 容姿端麗、頭脳明晰、運動神経も抜群と来るのみならず、人当たりが良いとまで来たもんだ。

 そんな彼女がなぜ自殺なんて、と思ってみれば、何故だかどこかに死への恐怖心を残しているような態度が薄らと見える。
※若きエリートの自殺だと、どうしても『巌頭之感』を書き残して華厳の滝に身を投げた藤村操を思い起こしますが。
 身体はどこか震えているようだし、自分のことを見て「同じ」「仲間」だとしたがっているようだし。

 ――そんな彼女をここで死なせるわけには行かない。

「あーー、そっかそっか。そうだよな、ごめん!」
「…………へ?」
「マジで申し訳ないんだけど、、俺はただここにサボりに来ただけなんだよな。ここ、めっちゃ良くないか? 人は来ないし、静かだし。実は俺のお気に入りの昼寝場所でさー?」

   ~中略~

「な、なんでそのまま寝ようとしてるの!? ここに死のうとしてる人がいるのに、他にかける言葉とかないの!?」

(『君のせいで今日も死ねない。』 p.7 より)

 彼が選んだ手法は「バカをる」ことだった。
 鈍感なクソKY野郎を演じてみたところ、見立て通りに三峰は釣られて会話を交わし始める。

 ――初対面の男に「死ぬな!」なんて言われても鬱陶しいだろう。
 ――――まぁ、それはたしかに……ってなんですぐに寝ようとするの!?

 こんな調子。
 これではさしもの自殺志願者も調子が狂ってくるというもの。

 そこで彼のダメ押し。
 彼女には絶対に死んで欲しくない彼の、渾身のお願い。

 ――だったら、海に行こうぜ。
 ――どうせ死ぬにしても、徳を積んでからでも遅くはないだろ。

 ちょっとだけ脅し文句も混ぜながら土下座をした彼に、少女は半ばやけくそ気味にそれを承諾して――。



 少年Aによる、完璧美少女の自殺を止めるための「日常の旅」。

 これは要するに、そんなお話。


推しポイント。

 Aくんの道化っぷり、かな。

 居るよねえ、こういう主人公。
 何度も書いているとおり、これは「或る少女の自殺を止める物語」ではあるのだけれど、Aくんのこの道化っぷりのおかげでそこまでヘビーにはならずに済んでます。
 ――いや、ヘビーにならずにギリギリ踏みとどまってます、と言った方が正しいかも知れない。

 だって、ともすれば、彼女はいつだってそのまま命を投げ捨ててもいいと思っているから。
 常に片足をあの世の地面につけるか否かというところには置いているわけで、もちろんAくんはそれが気が気じゃない。
 結構な危うさを伴った物語ではあります。

 だからこそ彼は当初、少し先にあるモノにターゲットを合わせます。
 たとえば、海に行った先にあった真珠取り出し体験をしたときも、その真珠をアクセサリーに加工してもらったり(受け取りは1週間後)。
 何故か三峰が勝てない「黒髭危機一髪ゲーム」を恒例イベントに仕立て上げてみたり。
 水族館のイベントスケジュールを見せてみたり。

 そうして、この世に1日でも縛り付けようと努力をするわけですよ。
 もちろん、ピエロめいた言動を添えて、それとはイマイチ彼女が察してしまわぬように。

 ――涙ぐましいじゃないですか。

 迎えたくない未来を少しでも遠ざけて、最終的にはそんな未来なんか無かったようにするために奮闘してる姿。
 これを推さずに居られますか、という話ですよ。


 もちろん、ヒロイン・三峰ちゃんの、意外とチャカチャカした性格が暴かれていくあたりもとってもカワイイので推せます。
 イイですよねえ、人当たりが良いとされる子が何かかんか突っかかってくる感じ。
 俺にだけしか見せない顔、的なアレですよ。
 めんこいですね。


 あ。
 最後の最後、「Aくん」の名前が白日の下に曝されるところまで必見なので、ぜひ最後まで。


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