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自然に学ぶ。子どもたちに生きるということを感じてほしい。 みんなの家みんか(Minka)の主、師岡 知弘さん

将来の夢は、子どもたちが自立する力を身につけられるよう、食と水と環境が整った場を創ること。現在、福岡県朝倉市の山間地域でみんなの家づくりをされている、師岡 知弘さんにお話を伺って来ました。

師岡 知弘さんプロフィール
出身地:福岡県朝倉市
活動地域:福岡県朝倉市
経歴:みんなの家みんか(Minka)主(あるじ)
25年のサラリーマン生活の中で、人が健康に在りたいように生きるためには、食と水、環境が何よりも大事だと気付き、脱サラ。各地で昔ながらの農業を行う人に会いに行き、次の半生の場所を探す。たまたま帰省した故郷で、黒川地区を初めて訪れ、直感的に気に入り、移住を決定。地域のボランティア活動などを行いながら生活をする中で、平成29年7月九州北部豪雨により被災。過疎化・高齢化が10年以上早まってしまった地域の復旧・復興に向けて、みんなが気軽に集える場所「みんなの家みんか(Minka)」づくりを開始。
座右の銘:みんな誰かの力になれる 人のチカラになれる生き方ができる

「子どもたちが生活を通して自立できる力を身につける為の場所をつくりたい」

記者:師岡さんはどんな夢やVisionをお持ちでしょうか?

師岡さん(以下、師岡):居場所づくりをしたいですね。特に、5年前に出会った子どもたちの力になりたいと。その子は児童養護施設出身の子だったんです。彼女の話を聞いていて、何かの役に立てればと思いました。施設の子たちは、18歳になるとそのまま社会に出ていかなくてはならないので、とにかく生きるために働いているんです。何かがしたいよりも、とにかく働く。望んだわけではなく、ある意味、特殊な環境で育った子供たちは、18歳という若さで、この難しい社会の中で、たった一人で生きているのだと。
それがきっかけだったんですが、今は、施設の子どもたちかどうかは関係なく、大人でも自分らしく生きることが難しくなってしまっている社会だと思います。そんな社会だからこそ、みんなが誰でも気軽に立ち寄ったり、宿泊したり、一緒に生活したりできる場所として「みんなの家みんか(Minka)」づくりを始めました。

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 私は、生きる原点は自然の中にあると思うんです。自然が教えてくれることはたくさんある。そこで、自然豊かな場所で、生活を通した学びの場を創りたいと思ったんです。便利になった現代社会の生活を見てみると、電気、ガス、水道のインフラが止まってしまったらパニックになる人が多いのではないでしょうか?コンビニに行けば何でもあるという錯覚を持ってしまっていますが、そこにあるものは、使ってしまえば無くなってしまいます。日本でも、毎年あちこちで災害が発生しています。与えられた生活インフラは、崩壊すれば機能しません。人は自然の恵みを得て、創意工夫をしながら生きてきたのです。便利だからに頼るだけでなく、有事の際に命をつなぐサバイバルスキルや自分で生き抜く力がより重要になってきていると思います。そんな生活の智慧を感じることができる場をつくりたいと考えています。
 まずは、児童養護施設を退所した子どもたちが、自分で何をしたいのかを見つけるための時間を提供できる家を作りたいと思っています。
それは、朝倉市の山間地に、彼らが生きる目的を見つけるまでの間、一緒に暮らせる家です。その中で、現地にずっと住んでいる方々と一緒に山の生活が抱える課題を一緒に解決しながら、朝倉市の農村地域のコミュニティを維持・活性化したいと思っています。そうすれば、過疎化している山も持続できるし、子どもたちも山にあるたくさんの生きるための智慧を学べると思います。自然に向き合い、創意工夫する思考と、道具を使うスキル、食べるものを育てることを身につけることができれば、どこでも生きていけると思うのです。
 さらに、高齢者との生活は、お手伝いできることがいっぱいです。ちょっとしたお手伝いでも、喜んでいただき、「ありがとう」と言ってもらえる環境です。すると、子どもたちには「ありがとう」の貯金がたまります。ちょっとしたお手伝いの積み重ねが、いつの間にか彼ら自身の自己肯定感の向上につながるのではないかと思います。特殊な環境で親や家族に恵まれなかった彼らにとって、自分が生きている意味に気づける機会になればいいな、そんな生活の中から、自分はこうしたいという夢や目標が見つかるといいなと、思っています。山の中の生活を通して、彼らがどういう仕事・生き方をしたいのかに気づくきっかけになれば、彼らも目の前の困難にも立ち向かうことができると思うし、簡単にあきらめるようなことはしないと思います。そうでなくても、山での生活で得たスキルはどこでも必ず活きると思うのです。

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「2020年、いよいよ家づくりが始める」

記者:師岡さんの夢や理想の実現の為に、どんな目標・計画を立てていますか?

師岡:2020年から1〜2年かけて、朝倉市の山の中にそんな子どもたちと一緒に住める家、「みんなの家みんか(Minka)」づくりを始めます。そこが拠点になります。その拠点は、平成29年7月九州北部豪雨の被災地でもあります。もともと高齢者が農業を営み住んでいるところですが、復旧工事が終わっても担い手がいないのです。その山間地に、約200ヘクタールの山林田畑があるんです。農地だけでなく山があるので、キャンプや自然探索できる場所や、自分たちで食べるための安心・安全な米や野菜も作れるんです。山間地だから、作れば絶対に美味しいんですよ。本当にいいもの、自分が、納得がいくものを食べたいというニーズは時代的に来ると思うので、この土地は活かせます。計画としてはまずそこからはじめます。
 それだけでは無く、その場所に子ども達が遊びに来たり、農業体験したり。キャンプ場や企業の保養所ができてもいいですね。さらには、田畑をみんなで使えるように貸したり、森の間伐しながらその間伐材でモノ作りや、山菜を育てたりと、色んなことができると思うのですよね。
 まずは、その200ヘクタールの山林田畑の入り口に、使える土地を確保したので、まずはその拠点として「みんなの家みんか(Minka)」づくりから始めます。
 それと、この地域は、かつてホタルがいっぱいいました。そのホタルを呼び戻そうと、子どもたちと一緒にホタルが生息できる環境は何だろうと勉強しながら、ホタルが住みやすいような環境作りを始めています。ここは、いろんな可能性を秘めた場所だと思っています。今は、こんな話をご縁のあった方々にお話ししながら、共感者、協力者を探しているところです。

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「信頼関係を創り、お互いにとって何がいいのかを一緒に感じ、見つけていく」

記者:子どもと一緒に住めるお家を作る、その目標・計画に対して、何を大切にしているのでしょうか?

師岡:やっぱり「信頼」ですね。どんな人でも、こちらが信頼しない限りは相手も信頼してくれません。信頼は短期間で構築できるものではなく、その人を信頼できるかどうかは、よほどお互いの背景が分かっていないと出来ないことです。そこには覚悟がいります。そして、信頼ができたら次にお互いや周りの地域にとって何が良いのかを、子どもたちと、経験を持っている人たちが話し合ってお互いで見つけていく作業をしていかないといけないと考えています。信頼がないと地域の人たちも受け入れてはくれません。やっぱり、思いをかたちにする為には、これ以外に道はないですね。

「これからは食と水が最重要な時代、過疎化・高齢化が進む山間地の生活を子どもたちが支えるモデル」

記者:師岡さんの夢やVisionを持つきっかけとして、何があったのでしょうか?

師岡:東京にいるときに製薬会社の仕事をしていました。人の健康に関わる仕事をしていた中で、薬など対処的なものだけでは限界だと感じていました。元々、人間には自己治癒能力があるし、そのスイッチをきちんと入れてあげれば、病気の多くは治せると思うのです。だから、製薬会社で働くというイメージができず、残りの半生をどう生きていくかを考えていました。残りの半生をかけて、自分らしく生きるためには、どういう仕事をするかを考えた結果、食と水に行き着いたのです。そこで、それを実現できる場所を探していた時に直感的に感じて、朝倉に決めました。食と水に関わる仕事を探していた時に「農業」だと思いつきました。そして、私はかつて養護施設の子どもたちのボランティアもやっていて、彼らの厳しい境遇も聞いていました。彼らに安心して生活できる場所を作りたい。
一方で、過疎地・山間地に行ったら空き山や土地がある。それがつながったんですね。
彼らと山間地で自給しながら一緒に生活し、農業を通じていろんなことができるのではないかと思ったのがきっかけです。

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人との繋がり、困っている人たちを何とかしたい思いが原点

記者:師岡さんの夢の発見や出会いの背景には何があったのでしょうか?

師岡:両親の影響は大きいです。父は40年近く農業高校の教師を務めていたこともあり、地域で3世代を通じて生徒やその家族と繋がり、その広い人的ネットワークを持っていました。だから何かをしてもらったり、お礼するのが日常的にありました。純粋にすごいなぁと。また、母親は看護師から県の職員になって、自治労という組織で仕事をしていました。職場で困っている人たちの話を聴いて、それを改善していくのを見てきました。だから私も困っている人を見た時に何とかしたいというのがあるのだと思います。放っておけないという感じですかね。これが現在の困っている人たちや地域の課題や身近なところが抱える問題に対して、何とかしたいなという思いになり、現在の朝倉市での活動に大きな影響を与えていると思います。

記者:最後にこれからのAI時代にどんな美しい時代をつくりたいのでしょうか?

師岡:私はAIの映画を観た時、どこまで心が表現できるのか?や、会話の中で相手への気遣いは学べるけど、手を握った時の感覚、体温、震えなどはどこまでAIの中で処理できるのだろうか?と思いました。また、人間は人との関わりの中で学び、遺伝子の中にしみ込んできた感覚があり、これが感性の世界、直感力ではないかと思うのです。だからこそ、人は人である理由を追求していかないといけないと思います。それと同時に、地球上には人だけが生きているのではありません。自然には命の繋がりがあり、その繋がりの中で生きていることを再認識することがこれからの人間にとって、とても大切だと思います。

記者:師岡さんのお話を聴くことで、人と人、人と自然は切り離されたものではなく、密接に繋がり関係し合っているものだということを深く感じることができました。本日は貴重なお時間、本当に有難うございました。

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編集後記:
インタビューをした、目黒、森です。
師岡さんの話を聴き、日本人が本来、潜在的に持っている、人同士の共生能力、人と自然との共生能力を活かしていくことがこれからは大切だと感じました。師岡さんがこれから朝倉市で何を仕掛けていき、そしてコミュニティをどう持続的に発展させていくのかが、とても楽しみですね。

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この記事は、リライズ・ニュースマガジン “美しい時代を創る人達” にも掲載されています。


高校美術教師、CM大道具を経て映像ディレクターやカメラマン、記者をしています。人間の認識を変化させる教育技術・nTechのコンテンツ開発に携わり、日本から新しい時代を創るリーダー育成、組織開発をしています。