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バンクーバー留学記

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バンクーバーで出会った、ある人間達との物語。 Do something Amazing everyday(何かやれば、面白い毎日なる) その言葉から始まった留学生活は、それまでの… もっと読む
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バンクーバー留学記#5 〜別れ〜

バンクーバー留学記#5 〜別れ〜

「日本に帰る」なんて言うと、スタントマンと男は僕に何て言うだろうかと少し不安はあったが、二人は、
「そうか。お前がそう決めたならそれでいい。」
と笑顔で言ってくれた。

「それで、日本に帰って何をやるんだ?また日本で俳優やるのか?」

「何も決めてません。」

「そうか。」

「とりあえず最後にフリッツ行くか。」

フリッツとは、カナダの伝統料理である「プーティーン」のお店である。「プーティン」は

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バンクーバー留学紀#4 〜挫折〜

バンクーバー留学紀#4 〜挫折〜

僕は語学学校を卒業した後、仕事を探し始めた。仕事を探す方法は色々とあるが、「ネットで探し応募する」「履歴書を持って街にあるお店に飛び込みで入っていく」「人からの紹介」がもっとも代表的な仕事を探す方法だ。僕はバンクーバーに来て一ヶ月で、語学学校と部屋を借りるお金で、ほぼ全てのお金を使ってしまっていて、そのせいで、今すぐにでも仕事を見つける必要があった。スタントマンは僕に、「ワーホリで日本人ばかりが働

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バンクーバー留学記#3 〜壮絶な過去〜

バンクーバー留学記#3 〜壮絶な過去〜

男はタバコに火をつけ、ここから見えるバンクーバーの夜景を、何か意味ありげな表情で眺めていた。無駄なことは一言も言わず、ただ黙って遠くを見つめるその姿は、体と心を完全に分離させ、ここに帰って来るためだけに物理的なその身体を置いておき、身軽になった心だけで、目の前に広がる、夜のバンクーバーの街を散歩しているように、僕は見えた。
僕にとって、その男の姿はとても不思議だったが、スタントマンはそんな男のこと

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バンクーバー留学記#2 〜もう一人の男と出会い。そして全てが動き出す〜

バンクーバー留学記#2 〜もう一人の男と出会い。そして全てが動き出す〜

バンクーバーの中心からバスで約30分。ライオンズゲートブリッジを渡った先に、アクアバスという、電車やバスと同じ公共交通機関である、船の発着駅がある。その駅から山頂にかけて1本の道があり、その道に沿ってお店が立ち並ぶ、ゆったりとし、落ち着いた雰囲気が漂うこの街が、
ノースバンクーバーだ。
初めて海外留学をする人間のほとんどは、ホームステイという、現地に住んでいる人の家に住み、その家族とともに過ごす「

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バンクーバー留学記#1 〜彼との出会い〜

バンクーバー留学記#1 〜彼との出会い〜

僕が初めて日本以外の国に住んだのは、カナダのバンクーバーという街だ。
バンクーバーという街の名前は、たしか冬季オリンピックが開催されたときにテレビのニュースか何かで聞いたことがあった。
でもその街に興味を持ったわけでもなく、僕にとって、
カナダは、「アメリカの上にある国」くらいの感覚でしかなかった。
そんな国に住むことになるなんて、つい半年前までは思ってもいなかった。
しかもそれが、誰かに決められ

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