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読書感想文 『残月記』

【残月記】


・2022年本屋大賞ノミネート
・吉川英治文学新人賞
・日本SF大賞


「そして月がふりかえる」
「月景石」
「残月記」
の3遍



3編とも、月が絡む2つの世界をダークな世界観と圧倒的な描写量で表現しており、終始溺れ続けている様な生々しい息苦しさを感じた。


地球から月を見上げると必ず裏側があるものだが、本作は月の裏側の様なダークな世界観と、その中でこそ夢見ずにはいられない、生きることへの希望を見事に表現している。


「そして月がふりかえる」
「月景石」
の2編については、ダークな面もあるけれど、どちらかと言うと不気味な感じや、ファンタジー感は比較的読みやすい。

一方で表題作の「残月記」だが、こちらは前2編と比較するとページ数も多いだけでなく、その殆どがセリフがなく、情景、心理描写、比喩表現で構成されている。これは、どれだけ読者がその世界観をイメージする事が出来るかが重要になるとも言える。
読んでいて、一瞬でも他のことを頭に思い浮かべればあっという間に物語に置いていかれる。逆に言うと、この物語の世界観に一度没入できてしまえば、どこまででも深くこの物語にのめり込むことができる。そして、没入した読者を主人公と同じだけの過酷な体験を感じさせ、最後には一縷の希望を与える。



本屋大賞ノミネート作をこれまで何作も読んできたけれど、ここまで読書玄人向きなものは初めてだった。強いて言うなら、読書好きにこそ向いている作品だった。



これからは、月を見上げた時の感情に、「綺麗」「明るい」といったポジティブなイメージだけでなく、「不気味」「恐ろしい」の様なネガティブなイメージも同時に思い浮かぶことは避けられそうにない。。。



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