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読書感想文 『書店主フィクリーのものがたり』

【書店主フィクリーのものがたり】


・2016年本屋大賞翻訳小説部門第1位



島に一軒だけある書店の偏屈店主フィクリーのものがたり。



フィクリーはある夜、蔵書の稀覯本を何者かに盗まれてしまう。悲しみに暮れながら日々を過ごすフィクリーであったが、ある日書店に小さな女の子が捨てられているのを見つける。この女の子「マヤ」との出会いにより、偏屈で定評のあったフィクリーの性格に変化がおこる。


この主人公フィクリーであるが、偏屈と言われるだけあり偏った考え方を表す一方で、時々魅力的な言葉やユーモアを披露する。そこがフィクリーが偏屈で有名でありながらも人々から孤立した存在でなかった一因であったと思う。要するに、偏屈であったかもしれないが、つまらない人ではなかったのだ。
そのフィクリーに女の子を掛け合わせると化学反応が起こるのは想像に難くない。それは読書体験についてであり、人生観であり、愛情や愛について。本への愛を感じたし、フィクリーたちの愛おしさにも満ちていた。



概ねフィクリーが女の子と出会い性格が軟化していくと予想は出来たが、この本はそのプロットに充分過ぎるほどの著者の本への愛が詰め込まれていたのは予想以上であった。
無学な私には『白鯨』に登場する「ピーコッド」や「クイークェグ」のくだりが楽しめたぐらいだが、本の(海外文学の)知識があればあるほどこの小説への理解度というか、楽しめる箇所が多くあるだろう。
いつになるのかは分からないが、この小説に出てきた数々の作品たちを読んできてから再度、この小説もとい、この島の住人たちのもとへ訪れ、文学について共有することが出来たら素敵だと思うのであった。



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