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第33節 FC東京戦 レビュー

『あと残り2つというところで自分たちのサッカーを見せられる。』

試合後の会見で鬼木監督が発した言葉だ。

前節、敗戦での優勝を経験したチームは、残りの試合を勝って終わるという目標を明確に持って多摩川クラシコに望んだ。

結果は2−0。ホームでの借りをきちんと返し、次節、ホーム等々力に帰還する。

この試合は小林と大島を負傷で欠く中で、知念や長谷川、田中が先発。ベンチを温めてきた選手たちがピッチで躍動した。

残り1試合。来シーズンへの”期待”を繋ぐために今シーズンを気持ちよく締めくくりたいところだ。

さて、今回のラインナップはこちら。

①『自分が結果を出せたのは不思議ではないし、出さないといけない場面だった。』(知念慶)”今までの”フロンターレと”今の”フロンターレを表した2点。そこにある今の強さ。

②『このチームのボランチは日本を代表する選手たちがいる。そういう選手たちを越えていきたいという思いもある。』(田中碧)。大島負傷によって生まれた守田・田中コンビ。進化していく川崎ボランチ。

以上の2つです。

では。

①『自分が結果を出せたのは不思議ではないし、出さないといけない場面だった。』(知念慶)”今までの”フロンターレと”今の”フロンターレを表した2点。そこにある今の強さ。

小林が左眼窩底骨折の症状改善のため手術をし、大島は左ヒラメ筋肉離れのため欠場を余儀なくされた。「主力がいない」という外野の声はあったが、前節優勝を決めたからこそ、この2試合はメンバーにどうテコ入れしてくるのかという部分が注目だった。

個人的な予想としては知念が小林の位置に入り、下田が大島の位置に入るという予想を立てていた。だが、鬼木監督は知念と田中、そして阿部の位置に長谷川を起用してきた。

このことからラインナップは普段見慣れないメンバーであったが、このメンバーだからといって戦力が下がることはない。それが今のフロンターレの強さであり、そういう風にして今シーズン戦ってきた。

だからこそ、知念はこう続ける。『普段の練習から競争しているし、こういうときに出番が巡ってきた選手が結果を残せるチームが強いチーム。自分が結果を出せたのは不思議ではないし、出さないといけない場面だった。』

このチームは結果を出すことに対して”期待”するのではなく、それが”当たり前”という風になった。その緊張感が常にあるからこそ、選手たちには定位置争いという概念が生まれ、それがチームの循環に変わっていく。

これらの選手が試合に出てる理由を鬼木監督は『自信』と言う。自信が無ければ結果を出すことができない。それはアマチュアもプロも関係ない。”当たり前”なことを”当たり前”にこなせるのもこのチームの選手たちの良さである。

先制点の場面はあっという間だったが、あのシーンは”今の”フロンターレの良さが凝縮したものだった。

味方からパスを受けた橋本がトラップをしたため、こちらとしてはコースを限定することができた。あの状態から打開するためには前に大きく蹴るのか、ドリブルを選択するのか、バックパスを選択するのかの3択になるだろう。

ただ、バックパスを選択した場合には中村がプレスのスイッチを入れることができるため、そちらには出すことができない。

結果的には中村と田中で挟む形になり、ボールは中間地点へと転がった。そこを知念が拾い、見事にゴール左下へと突き刺した。

2点目に関しては、単純明快かつ攻撃のベクトルがゴールに一直線に向かっていた。

チョンソンリョンからパスを受けた守田はダイレクトで家長に付けた。このプレーが仮にワンクッション置いていたとしたら状況は全く違うものになっていたに違いない。

ただ、それでも『ボールを受ける前の動きやステップ、首を振るタイミングとかは普段の練習で感覚的にすり合わせているところ』(守田英正)だからこそ、あの場面で躊躇いなく縦パスを付けることができた。

そして、その後の中村とエウシーニョのプレーは”今までの”フロンターレのサッカーである【人とボールが動くサッカー】を体現していた。

家長が中央にボールを受けに行った際に太田が家長に付いていたため、エウシーニョは比較的楽にプレーできていたはずだ。

エウシーニョは家長からパスを受けた後、中村に預け長いワンツーをした。中村のスルーパスは誰しもが知る中村の代名詞の様なものであって、あれだけのスペースがあればこちらのものだ。

突くべき場所を突いたからこそあの得点は生まれた。だが、『欲を言えば、3点目を欲しかった』と中村が言うように、相手の勢いの芽を摘むためには”3点目”を奪いたかった。

浮かび上がった課題をホームで克服し、今シーズンを締めくくりたい。

②『このチームのボランチは日本を代表する選手たちがいる。そういう選手たちを越えていきたいという思いもある。』(田中碧)。大島負傷によって生まれた守田・田中コンビ。進化していく川崎ボランチ。

大島の負傷の知らせを聞いた際には、第31節柏戦レビューでも書いたように守田・下田ペアがスターティングメンバーに名を連ねると予想していた。しかし、実際に名を連ねたのは田中だった。

出場3試合目にしてスタメンに抜擢。そんな田中のこの試合の出来について鬼木監督は『1年間を通していつチャンスが来てもおかしくないぐらいのトレーニングを積んでいました。彼が普段やっていることをそのままピッチに出してくれましたし、自信を持ってプレーしていた。』と絶賛していた。

この試合の田中はとても効いていた。止める・蹴るのクオリティーであったり、ディフェンス時の位置どり。そして、一番評価できる点は守田との関係性である。

当の守田は『アオ(田中碧)とコンビを組んだときはアオが下にいる方がチームにとってスムーズなので、自分が前に出る意識を持ってプレーした。』と振り返った。

大島と組む際には2人でやり取りをしながら位置関係を調整しているが、今回はそんな大島が欠場の為、『いつもはリョウタくん(大島僚太)にカバーしてもらっているぶん、今回はアオのことも気にしつつというのは考えていた。』と試合中の出来事について明かしていた。

そんな守田だったが、『個人的にゲームメイクの部分では物足りなかったし、終盤は守備に回る時間が多かった』と満足していなかった。

2人とも共に高い技術を有するので、このサッカーに対してのネガティブな要素はない。だからこそ、自信を持ってプレーできる。

それはこの2人以外だとしても言えることであって、誰が出ても一定水準のフロンターレサッカーを体現することができる。そういう意味で言えば、今のフロンターレボランチ陣は抜け目がない。

ただ、それでも田中は『自分の出来ではまだまだ足りない。』と言う。

そして、これには谷口も『技術的にはもっとやっていかなければいけないところがあると思う』と振り返りつつも『戦う部分に関してはきちんと僕たちと一緒にやってくれていた。』と絶対にやらなければならないことを田中は90分間を通して出来ていた。

今シーズンは昨シーズンと比較すれば多くの試合に絡めた田中だが、完璧な出来かといえばおそらく本人は全くそう思わないだろう。課題があるから次に進める。

そして、この川崎フロンターレというチームには大島や守田をはじめとした優秀なボランチが数多くいる。

『そういう選手たちを越えていきたい』という彼の強い想いが彼を成長させ、さらに強くさせる。川崎の心臓が川崎アカデミーから生まれる日はそう遠くない。

(RYUJI.I)

参照:

・川崎フロンターレ公式HP

・Football LAB

・DAZN

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