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文学フリマへの道 『追い込まれないと出来ない、説』

4月12日、金曜日、朝、6時。

目覚めると、あの感覚が「キタ」。
正直言って、昨晩も飲んだ睡眠導入剤のせいで眠くて
平日の朝は毎日、自分の思い通りに起きれないけれど
あの感覚がキタから、考えるのをやめてすぐに着替えて
思考に入る前に身体を外に追い出す。

そうして、6時49分。
いつものファストフード店にいる。

「書ける」感覚が、やってきたからだった。


おはようございます、やまざき想太です。
コーヒー片手に、この文章を書いています。

このくだり、前にも同じように書いた気がする。
いや、読み続けている人なんてほぼいないんだから気にしない。
前回の「文学フリマへの道」から3週間が経ったけれど
僕はとうとう、やりました。

入稿することが、できました。

それまでの葛藤や近況をまとめたかったんだけれど
大きく環境が変化したり、タイミングがこなかったり
書くことがずっとできなかったんだけれど
今日は、朝から「書けそう」な感覚をとらえたので
なんとかしてこの1時間くらいで、文章にしたいなと思います。

では、誰にも読まれていない連載「文学フリマへの道」
今回も、始まります。


① 書けない日は続いた

3月20日に改めて決意したのに、僕には本当に余裕がなかった。
なぜならそのタイミングでも、仕事が見つからずに転職と並行しての本づくり。

どうしても仕事探しへの焦りが募るばかりで、メンタル的にも文章を書けるような状態ではなかった。けれど、書かなければ。週末は少しでも時間を取ろうとするのだけれど、やっぱりある程度の精神的な穏やかさであったり、それこそ「余白」は必要なんだということを、改めて痛感する。

こういう経験も、こんな状況にならなければ出来ないこと。
どこか言い聞かせている部分もあったし、正直言って余裕はまったくなかったけれど、僕は「いま、自分に出来ることは?」と、自らに問い続けて、ただひたすら目の前の出来ることから手当たり次第に手を動かして、行動し続けていた。

とにかく、書けない日は続いた。
文学フリマまで、日にちは少しずつ迫っていく。
僕は弱い人間だ。焦りばかりが募ったし、誰かのように軽やかに本を仕上げて、鮮やかに宣伝を始めて、たくさんの集客が見込めて、イベント前から売り上げが立って…ゼロだ。ゼロだったけれど、僕は旗を振り続ける。誰のためじゃなく、僕自身のために。ただ、旗を振り続ける。


② 絶対的な締め切りを決めて走り出す

当初予定していた締め切りが破綻してから放置し続けていたので、諦めてスケジュールを切り直した。「最悪の場合、どうなるのか」というスケジュール感。
念頭に置いたのは印刷所への入稿が早ければコストが下がるということ。いくつかの印刷所で見積もっていたけれど、僕は文フリ参加者の多くが利用されていた「ちょ古っ都製本工房」さんを利用した。コストが素晴らしかったのと、評価も軒並み高く、友人を通じて口コミも良かったので、最初に利用させていただく印刷所は、ちょ古っ都さんに決めた。

最大で10営業日前に入稿するとコストを一番抑えられたので、10営業日前に入稿することをスケジュール感に入れて、さらに当然イベント前に入稿するのは他の出展者さんも同様になるため、絶対に印刷所は混雑し、スケジュールコントロールが効かなくなる。
これは商業誌も同じで、商業誌の場合は繁忙期が3月末(前期決算期)、4月末(ゴールデンウイーク進行)、8月中旬(お盆進行)、9月末(後期決算期)、12月末(年末進行)となっており、だいたいの場合この辺りの進行にバッティングする時は印刷所の担当者さんから相談が入ることがほとんど。(どうでもいい話)

なので、できるだけ前倒しで進行して、4月7日前後には最初の入稿をすることを決める。このタイミングでの入稿はいわゆる「見本誌」として1冊だけ印刷してもらい、見本出来を確認し、問題なければイベント出展時の想定ロットで改めてまとまった冊数を刷ることにした(文フリに出られている方でこの方法を取られている方がいたので、参考にさせて頂きました)。

締め切り、4月7日。決めたのが3月末で、そのタイミングで1週間半くらいしか猶予がなくて、はっきり言って「無理ゲーじゃん」と思った。
でも、いわゆる締め切り効果みたいなものはあって、今の自分には決めることが大事だと思い込み、僕はまたそこからギアを入れて走り出した。

3月末、奇跡的に、無事仕事は決まりました。


③ タイトルはこんな身近にあった

タイトルだけが決まらないまま、宙ぶらりんになっていた1冊目の本。
文学フリマには絶対にこの本を持っていきたいと思っていたけれど、いっさいピンとこない。タイトルが見えてこない。困っていた。半ば諦めてもいた。「そのうち降りてくるだろ」と言ってから1か月半くらいが経っていて、熱量への不安もあった。
そうして2冊目を爆速で進める。こちらは火がついてから日が浅かったのもあって、タイトル→構成→台割→カバー案→本文レイアウト→本文原稿と、どんどん埋まっていく。目を背けている1冊目に申し訳なかったけれど、ずっと信じていた。

「タイミングがくれば、必ずタイトルは決まる」と。

こういう待ち方をする人って、いるんだろうか。
僕は直感をとても大切にするタイプで、曖昧な気持ちで物事を決めることを嫌う。
だからこそ自分の感覚を丸め込んで本づくりをすることは、したくなかった。

いつか、いつか、いつか、いつだ、いつなんだ。

それは2冊目がほぼ出来たタイミングだった。
もう逃れられないと、1冊目の本文を改めて眺めていたとき。
ふと、本文の最後の方に入っていた言葉が目に飛び込んでくる。

「え、タイトル、これなんじゃないか」

せっかく自分にとっての1冊目なんだから、良いタイトルを。イカすタイトルを。絶対に良いものにしたい……とにかく意気込んでいた。何かすごいモノをと思い込んでいた。けれど、そういえば自分が文学フリマに飛び込もうとした時に、いったいどんな言葉を軸にしていたのか。僕は、そのことをすっかり忘れていたようだった。その言葉は、いつも心にあったハズなのに。

「余白」

これが、1冊目のタイトルになりました。

本の内容としても、このタイトルである理由はちゃんとあるのだけれど、改めて自分が「余白者」という出版チームを名乗って動き出して、ずっと寄り添っていたはずの言葉を、僕は自分で手がける最初の本のタイトルにしようと、思った。

僕に必要な言葉。
僕が大切にしてる言葉。
僕と共に在る言葉。
タイトルは、こんな身近にあった。


④ 誰にも知られることなくできた2冊目

1冊目ができないでウズウズしていた時に、2冊目のアイデアが浮かんできた。
「いまの自分にとって、何が大切か」を重要視していた僕は、いまこの瞬間だから書きたい内容の本に、タイトルにしたいと思っていた。

そんな矢先、とある映画を見て僕は「コレしかない」と直感が叫んで。
自分の人生で、いま書かなければ、一生書けないと感じたからこそ、2冊目はこのテーマで、このタイトルで書こうと。キッカケはまた、改めて本を紹介する時に書こうと思うんだけれど、2冊目の内容が決まると、僕はブレーキを忘れて一気にアクセルだけを踏み込む。書きたいことが明確な場合、本当に驚くほど文章は浮かんでくるのだな、と。

1冊目に関しては、今回の文フリ出展を手伝ってくれる友人に見せていた。本文、タイトル、デザイン案、すべて共有していたんだけれど、良くも悪くも「見せる相手の評価に引っ張られる」ことを再認識して。その友人がどうとかではなくて、自分以外の誰かに内容を事前に見せることで、その人の評価が本づくりの軸に差し変わってしまう弱さが、僕にはあったから。

だから2冊目は、出来上がるまで誰にも見せることなく、すべて自分で選んで、決めて、言葉にし、カタチにした。

もちろん評価を気にはしてしまうし、見向きもされなかったらという不安は一生消えないだろうけれど、自分にとって後悔のない出発ができる本であることが、何よりも大切だから。静かに、静かに、したためた2冊目は、カタチになった。


⑤ そして入稿は瞬く間に

4月7日、お昼頃。
終わった。いろんな意味で。終わった。
締め切りを敷いてから1週間半。実質、週末の2日間で、残っていた本文とタイトル案、カバーデザインをすべて終えて、僕は自分なりにやり切った。

その日の夜に、残りの細かい部分を突き詰め、カバーの入稿データを作成した。
その作業が翌日8日と9日にまでずれ込んだけれど、4月9日のお昼頃。作成した入稿データを印刷所に入れて、すぐに入金も済ませる。

印刷所からの丁寧なメールで、1点修正があったけれど、そこもすぐに解決させて、2冊とも無事に入稿が完了した。

そして、印刷へ。
いよいよ本が出来上がる。。。

2024年1月1日に「文学フリマ東京へ出る」とnoteで宣言して、誰にも知られることなくスタートしたこの文学フリマへの道。

「イベントに持っていけるものが何一つない」という状況は、どうやら避けられそうな予感がしてきた。もちろん、仕上がった見本に大きな欠陥があればまたスタートラインに逆戻りなのだけれど、とにかく見えなかった着地点「入稿」が出来たこと。それも2冊同時に出来たことは、自分にとって大きな財産というか、貴重な体験・経験になったと思う。

少しホッとしてる。
でも、少し。
まだ全然、震えてる。
イベント当日まで。
いや、イベント当日がいちばん震えているかも。



平日の朝っぱらから約1時間で4000字くらい書いて
頭がすでに空っぽになっている。
やっと書けた、入稿までの怒涛の日々を。
ちゃんと書けたかどうかわからないけれど、とにかく文字にできた。

ゼロから始まった「文学フリマへの道」は、とりあえず入稿編まで終了。
ここからイベントまでに、自分の出版チーム「余白者」の紹介だったり、イベントで並べる本の紹介まで、できたら。
それにアイデアはまだまだあって、3冊目も目論んでいるけれど、もう無理はしない。でも、手は止めない。動き続けようと思う。

自分の本づくりだけでなく、誰かの本づくりをお手伝いしてみたい。
その気持ちが日に日に高まっていて、イベント出展した際には、出展者の人たちとの出逢いがあれば、とても楽しみだな、と。

そういえば印刷所から印刷が早く終わって、まさかの今日には見本誌が届く予定。
正直、出来に怖さを感じるけれど、早く手に取ってみたい。
そうしたらまた、ここで紹介できたら、幸いです。

さて、9時から仕事も頑張らなければ。
ではまた、次の「文学フリマへの道」でお逢いしましょう。

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