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常識の違いを埋める

 こんにちは、本日はライトノベル作家の美鶴さんです。
 近頃は亀山くんの連載がメインになってきていますが、新作ライトノベルのプロットもようやくOKをもらえました。

 前回も書きましたが、ホントに先生と感性が合わないんですよ!

 ヒロインのキャラクターに注意しながらあらすじを直すことになった前半戦の再提出の後、一番大きな修正は「呪いが解けるタイミング」でした。
 いかんせん『眠り姫』が発想のもとになっているため、私は問答無用でキスで呪いが解けるものと思い込んでいたのです。が、先生は中盤のキスシーンで呪いが解けたとは露ほども思っていなかったため、赤入れだけでは全く意思の疎通ができませんでした。

「(クライマックスで彼がヒロイン助け出すところまではいいので)この後に呪いが解けるシーンを入れましょう」
「……はあ、その発想はありませんでした」

 発想がなかっただけでキスで呪いが解けることに特にこだわりはありませんから、直すのはいいのです。でも、人を愛せない呪いに掛かったままヒロインと急接近すると彼の「坂下徹化」が進んでしまう気がします。

 ……亀山くんが嬉々として伯爵様を暴走させそうだなあ。

 坂下徹を知らない先生に言っても仕方ありません。また、本作はヒロインとヒーローの視点を交互に切り替えていく予定ですが、先生の赤に従っていくと章割りが結構難しくなりました。

 ……私が男性視点を書きたくて仕方ないこと、たぶん忘れてるな。一応ネタ出しの時に話したんだけどなあ。

 伯爵様では男性でも一人称が「私」になりそうだとはたと気付き、物書き学校の修了作品として「僕」の短編を書き、過去作品をリライトして連載を始めてしまったくらい男性視点に飢えていることも、おそらく先生に伝わることはないのでしょう。
 文句を言ったところでライトノベル講座では「女性がときめく恋愛小説」しか書かせてもらえません。だからこそ別で亀山くんが書いているわけですし、自分の中で上手く折り合いをつける他ないでしょう。とにかく章割りは必死に考え直しました。

 あとはプロットにOKをもらってから「やっぱり伯爵じゃなくて侯爵にしましょう」とヒーローの爵位が上がることになりました。こちらも『黒伯爵は星を愛でる』から着想を得た結果伯爵になっただけなので、特にこだわりはありません。
 そんなことより冒頭数ページを書いてみて思ったのは、やはりヒロインのキャラクターが自分に向かないということです。

「いじめに黙って耐える子の気持ちって、私には理解できないんですよね」

 先生にぼやいたら理解できなくても書けというふうに言われましたが、プロットにした時点で書くことはもう決まっているのです。私としては自分が理解できない主人公が本当に読者から応援してもらえるキャラクターなのか半信半疑だったわけで、ここで欲しかったのは「結月さんには理解できなくてもそれが売れ筋です」のような需要があることを念押ししてくれる言葉だったんですよね。

 分かっています。私と先生の感性や常識はまるで違うので、基本的に先生は私の欲しい言葉をくれません。どちらかというと(必要なものも不要なものも含めて)私を戸惑わせる言葉の方が多く、それを呑み込むために母親に愚痴るまでがこの講義のお約束なのです。

 とはいえ、第1章を書ききって侯爵様の視点が入る頃にはきっと私も楽しくなってくることでしょう。冒頭さえ乗り切ってしまえば自分も本編はあまり心配しておりません。なんたって坂下徹みたいな男ですからね。ふふん。


 ところで亀山くんの連載『ツイテル僕と兄貴』では、亀山真一と野々村透がそれぞれ常識外れな男として登場します。俺の常識はお前の非常識、みたいな裏話を近いうちに書きたいなと思っています。

https://sutekibungei.com/novels/71f72f01-7c3e-4f4b-9243-4d22d76ef752

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