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【小説】SNSの悪夢

自分はタバコは吸わないから、煙草を飲む人間は違う人種だと思っていた、身体に悪いのが解っていて、手放せないのだから。

だけど、ちょっと違う様だ、狭い場所で煙草を飲んでいるのを見ていると、あれは精神安定剤なんだと思った。

ライナスの毛布、いや子供のおしゃぶりの類なのかも知れない、自分には解らないが、物に頼る必要があるのだろう。

2人はタバコを吸い終わると、火をもみ消して自分たちのビルに入っていった。

『モラルってのは無いんだな。』これだからと言ってしまいそうになる、これだからは問題がある、自分があっちの淵に落ちてしまう。

仕事を始める時に思ったもんだった、人間には色々な人間が居て、その人間の生活の機微が有るから、自分達は仕事が出来ているのだと。

だからあちら側の罠に落ちて、あっちとこっちなんて考えるのは尊大だって思っていた。

その自分が簡単にこれだから奴らは何て考えるんだ、人間の変化は直ぐに有る、情けないかな自分で考えている以上に。

フェイクニュースで失ってしまったのは、妻や仕事だけではなく、自分以外に対する信頼感だったんだな。

何もすべきことが無いと、考え込んでしまう、SNSは便利な物だが、それは人間を分断するために作られたのかも知れない。

さっきの杉山某がビルに入っていったので、自分は近くのベンチで座っていることにした。

こんなことが無ければ、仕事をしたり、時間が空けば体作りにジムに行ったり、ぼんやりする時間は作らない生活だった。

今は座って復讐しか考えていない、人の環境は直ぐに変わってしまうんだ、運命を考えていた。



何時間かすると終業時刻なのか、ビルから少しづつ人間が吐き出されてくる。

アイツは出て来るのかな、目を凝らして出入り口を凝視して、他人の顔を眺めている。

仕事が終わった後の人間達は、疲れたような憂いを帯びた顔をしている人間が多い。

8時間働いて疲れていない人間は居ないんだろうな、顔を見ながら考えていた。

『アッ、あいつだ。』目の先にあのランチ二人組が出てきた。

なんだか嬉しそうな顔で歩いて居る、仕事が終わって嬉しいのかな、杉山某はニヤついた顔をしている。

手を上げて別々に帰っていく、コロナの問題が出てから、飲み会と言う嫌がらせは無くなったのだろう。

こっちは杉山某を付けている、若い奴は如何でも良いのだ、ゆっくり見つからない様につけてゆく。

自分で探偵になれるんじゃ無いかと考えながら、歩いてゆくと人が少なくなったところで、女性が彼の近くに行く。

『こいつ結婚していたよな。』もしかすると、同族嫌悪って奴なのかな、そのままついていく事にした。




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