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「スペイン料理って何?」という話があったので、自治州図解版を作ってみた。


#先日の余談

最近だと、モダンスパニッシュ(ヌエバ・コシーナ)とか言われる分類がある。分子ガストロノミーとも言われ、食材に亜酸化窒素を加えてムース状にしたり、液体窒素(マイナス196℃以下)を用いて瞬間凍結することで、食材の旨味を残したまま新たなアイデアで調理する料理として知られている。

モダンがあれば、トラディショナルとかクラシックという表現があるように、その土地に根付いた郷土料理(デル・プエブロ)もあるんだけど、広大(日本の1.3倍ほど)なスペインを一括りに説明することはできず、広さだけでなく歴史が根深く関係しており、地域ごとで異なる食文化が形成されている。近年、日本と同じように物流技術の発展もあって、少しその地域の特色は薄れつつあるとも聞く。

スペインは現在17の自治州が集まって形成されている立憲君主制国家。つまり国王がいるんだけど、日本の天皇の立場とも似ており象徴君主という位置づけ。主権は国民にあって、それぞれの自治州は歴史と深く関連しており、それぞれ独自の文化(言語・食文化含む)を持っており、その力は今も強く、2017年にカタルーニャ州が「独立宣言」を行いカタルーニャ共和国と名乗ったのだけれど、スペイン政府はその自治権を剥奪して直轄統治の州になっている。

少し遡って、フェリペ2世(在位:1556-1598年)の存在は欠かせないようで「太陽の沈まない国」とか言い表しがすごい。その100年前にもアメリカ大陸を発見した最初のヨーロピアンと言われるコロンブスの航海(後半)を支援したのはスペイン王国(1479年-)が誕生したカトリック両王統治の時代。そして2010年、無敵艦隊の愛称で呼ばれるスペインサッカー代表がワールドカップで優勝したのは、久しぶりにスペイン国民が一致団結(皮肉交じりに)した出来事として知られている。


スペインの自治州

(北部から中央、そして南部の並び順)

1) ガリシア州 (Galicia)

スペイン北西に位置し、南は隣国ポルトガル。州都サンティアゴ・デ・コンポステーラはローマ、エルサレムと並んでキリスト教の三大巡礼地の一つとして、フランス側からピレネー山脈を越えてスペイン北部を横断する終着地。「タルタ・デ・サンティアゴ」というアーモンドケーキはそれにあやかってだろう。大西洋に面しており、日本だと三陸海岸にある「リアス式海岸(語源はスペイン語)」がある。欧米でも珍しくタコを食べる文化があって「プルポ・ア・ラ・ガジェガ」は茹でたタコのぶつ切りを塩・パプリカ・オリーブオイルでシンプルに仕上げる。豚肉をコンフィして焼き上げる「ソルサ」も郷土料理。柔らかい食感のチーズ「テティージャ」の産地。


2) アストゥリアス州 (Asturias)

スペイン北部の大西洋に面する。インゲン豆(アストゥリアス語:faba)を使った煮込み料理「ファバダ」が発祥。アーモンドと卵黄を使ったスープ「ペピトリア」も美味い。アストゥリアス州も含まれるカンタブリア山脈一帯(カンタブリア州、バスク州など)はりんごを発酵させて作った「シードラ」の産地。


3) カンタブリア州 (Cantabria)

カンタブリア海とカンタブリア山脈に挟まれた地域は、ガリシア州、アストゥリアス州、バスク州も含まれる「エスパーニャ・ベルデ」と呼ばれて年間通して雨量も多く豊かな牧草地や森林がある。牛が描かれた洞窟壁画「アルタミラ洞窟」もあってか、牛の飼育も盛んな土地。微発砲で辛口なワイン「チャコリ」は、「シードラ」と同様にカンタブリア州を含めたスペイン北部で生産されている。


4) バスク州 (El País Vasco)

フランスとの国境ピレネー山脈の西側、大西洋に面している。チョコ(Txoko)と呼ばれる美食倶楽部が生まれた風土、チキテオ (Txikiteo) とはバルをはしごする慣習もあって、食に対して非常に関心が高い地域。バスク風のピンチョス、タパスやバルが世界に広まっていったされ、世界でもっとも美味しいレストランが集まっている州とも言える。すでに説明はいらない。


5) ナバラ州 (Navarra)

北側にはピレネー山脈、南側にはエブロ川に挟まれており、ナバラの語源は「森」とも言われる。そのため川魚の腹を割って、生ハムを挟んで一緒に焼く「マスのナバラ風」が郷土料理にある。生ハムの塩分が絶妙な味わいを生んでいる。


6) アラゴン州 (Aragón)

スペイン北東部に位置しており、その州都はサラゴサ。骨付き鶏肉とタマネギ、トマト、ピーマンなどの野菜を煮込んだ「チリンドロンソース」を使った郷土料理がある。


7) カタルーニャ州 (Cataluña)

スペインの中でも経済的にも発展しており、州都バルセロナにある「サグラダ・ファミリア」は1883年から未だに建設中なのは誰もが知る教会。冒頭でも伝えたように2017年に独立宣言した州。ニンニク、卵黄、オリーブオイルをベースとした「アリオリソース」がもっとも使われる地域で、クレーム・ド・ブリュレに似た「クレマ・カタラーナ」、米の変わりにショートパスタを使った「フィデウア」や、イカ墨を使ったパエリア「アロス・ネグロ」、焼き野菜料理「エスカリバダ」や「カルソッツ」、カタルーニャ風ピザ「コカ」など、、、日本でも食べる機会の多い料理が多い。また、ペネデスという土地で造られるスパーリングワイン「カバ」も美味い。


8) カスティーリャ・イ・レオン州 (Castilla y León)

スペイン内陸部、中世あったレオン王国とカスティーリャ王国に位置する地域(カスティーリャ地方と呼ばれた)。州都セゴビアには紀元1世紀ごろに造られた全長728mの水道橋がある。スペイン内陸部の冬は非常に厳しく「コシード」と呼ばれるシチューが郷土料理の一つ。青カビチーズの「バルデオン」の産地。


9) ラ・リオハ州 (La Rioja)

カスティーリャ・イ・レオン州と同じく内陸部に位置するが、リオハ地方は上質なワインの産地(テロワール)として、バスク州、ナバラ州にも跨っており、赤ワインの品種である「テンプラニーリョ」は多くのリオハワインを生み出している。


10) マドリード (La Comunidad de Madrid)

スペインの首都。自治州制度設立(1978年)の際、カスティーリャ地方に属していたマドリードは経済格差のため分離されたが、風土や歴史を踏まえると、他のカスティーリャ地方と同じような特色がある。仔豚の丸焼き「コチニージョ・アサード」などの肉料理が多く、牛などの胃(ハチノス)を煮込んだ「カジョス(スペイン風トリッパ)」はマドリード独特の料理。


11) カスティーリャ=ラ・マンチャ州 (Castilla-La Mancha)

カスティーリャ地方の南部に位置する。そのためレオン州と共通する点も多く、シチューの「コシード」や、野菜の煮込みである「ピスト・マンチェゴ」、ニンニクスープの「ソパ・デ・アホ」など。また、純粋なスペイン国産サフランを「ラ・マンチャ」と呼び、EUの原産地呼称制度にも登録されている。リオハ同様、ラ・マンチャもワインの生産地として盛んで、ブドウを使った蒸留酒「オルホ」も生産するワイナリーもある。羊のチーズ「マンチェゴ」や「イベリコ」の産地。


12) エストレマドゥーラ州 (Extremadura)

北東はカスティーリャ地方、西は隣国ポルトガル、南はアンダルシア、スペイン内陸部の地域。古くから豚の飼育が盛んで、エストレマドゥーラの生ハムは「ハモン・デ・ラ・デエサ(牧草地の生ハム)」とも呼ばれ、ハモン・イベリコと並ぶ上質な生ハムの産地である。


13) アンダルシア州 (Andalucía)

スペインの代名詞でもある「フラメンコ」や「闘牛」はアンダルシア州で育まれた文化。ジブラルタル海峡を挟んでアフリカ大陸のモロッコとも近いだけでなく、そもそもイスラム帝国によるイベリア半島の統治時代長く、718年から1492年の間、「レコンキスタ」と呼ばれるキリスト教国家による復権活動が行われており、数百年の中で宗教を軸とした文化の変化は凄まじく、様々な食文化の土台が生まれた。香辛料を使った少しアラビア文化が残るエスニックな料理が多く。「ガスパチョ」と呼ばれる冷製スープの発祥とされ、「ハモン・イベリコ」や「ハモン・セラーノ」を代表とする生ハムや、酒精強化ワインである「シェリー酒」の産地。


14) ムルシア州 (La Region de Murcia)

スペインの南東部、地中海に面しており、温暖な気候から米、果物、野菜の栽培が盛んな地域。米を使った料理「パエリア」はバレンシア州が発祥とされているが、スペイン南部はイスラムの影響もあって、鶏肉のパエリア、魚介のパエリア、豚肉と魚介を混ぜ合わせたパエリアなど独自の発展がある。ムルシアにあるイエクラという土地にはブドウ品種「モナストレル」を使ったワインの生産地。チーズの製造工程で赤ワインを用いる「ムルシア・アル・ビーノ」の産地。


15) バレンシア州 (Valencia)

スペイン中東部、地中海に面する温暖な気候。ムルシア州と同様に様々な穀物が育ち、米を用いた「パエリア」の発祥地とされる。もともとパエリアはオレンジの果樹園で働く農民たちの日常食として、屋外でフライパン(:バレンシア語:パエリア)を使って、猟で取った獲物と米を果樹園の薪で焼いて作った料理とも言われており、鶏肉や兎肉のパエリアを「バレンシア風パエリア」と呼ぶ。


16) バレアレス諸島州 (Las Islas Baleares)

スペイン東部の地中海に連なるスペイン領の群島。一番大きな島であるマヨルカ島(マジョルカ島)では、イベリア半島と比べると島文化としての特色もある。オリーブオイルはスペイン全土で生産されているが、マヨルカ島はその歴史も古く、その音から「マヨネーズ」の発祥とも言われている(諸説ある感じだけど...)。

バレアレス諸島に属する「イビサ島」は今でも野外フェスのメッカだろうか... 行きたい♪


17) カナリアス諸島州 (Las Islas Canarias)

アフリカ大陸の北西沿岸、7つの島からなるスペイン領の群島ということもあって、ここでは割愛しておきますが、一つ「モホ」と呼ばれるソースはカナリアス諸島原産。


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スペインの地勢

航空写真(Google Map)を見てみると、その地勢からそれぞれの自治体の風土や気候が感じ取れます。

北部湾岸は緑が多く、中央部に広がる台地は「メセタ」と呼ばれており乾燥した環境。エストレマドゥーラ州が「カスティーリャ」を名乗らないのは地形が異なることで、生き方も異なるからかと推測できます。また、アンダルシア州に流れる「グアダルキビール川」の南北では気候が異なるようですね。

スペインの地勢図(Wikiより)


もう一つ。

イベリア半島の歴史」の変化を地図で表したアニメーションがあったので貼っておきます。参考までに♪


冒頭写真は、手前からトルティージャ(スペイン風オムレツ)、つぶ貝?、、、白身魚のフリートかな? だめだ思い出せないです。。。
他にも食べたことがあった料理「エンパナーダ」「ピルピル」「ウエボロト」とかあるけど、どの地方の郷土料理だったか....、また加筆するかもね。。。

僕とご縁のあるスペイン料理店をまとめておいた。ほとんど京都です。

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僕のnoteは自分自身の備忘録としての側面が強いですが、もしも誰かの役にたって、そのアクションの一つとしてサポートがあるなら、ただただ感謝です。