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初めて「仕事やめよっかな」と思ったワケ。

先日、旦那が長期不在のとき、娘と息子が胃腸炎にかかった。
息子はマーライオンかのごとく、ぼえっと夜中に3回吐くものだから
こちらも戦々恐々、どうにか吐しゃ物を洗面器で受け止めたい、本人にはトイレまで我慢してほしい、でも6歳つらいよね、無理だよな~というのがないまぜになってほとんど眠れず、自分もなんだか胃がむかむかして、腸もかんばしくなく、メシなんてぜんっぜん作る気も食う気もおきねえ、しかし回復した娘に何か食べさせねばのう……という事態になった。

結果ふりかえれば人生39年、すべてオーライである。
いま私はしっかり生きていて、こんな文章を書けるくらいの元気さがあるのだから。

しかし、渦中にいると、ちびっ子病人らをかかえ、先の見えない地下ダンジョンの深きにはまっていくがごとく、こわくてつらい。
きっとじきにいつもの結果オーライがやってくるとわかっていても、やっぱり心はメゲるのである。

まずは自分がしっかり回復せねばならんと、近々の締め切りがないのをいいことに、極力パソコンを立ち上げず、病人の息子とゴロゴロしていた。
体力と気力の回復を待って、イッキにカタをつければよし、今は休むことが仕事だ!とか思いましてね。

しかし、1日たっても2日たっても、気力体力は充電できない。
アダプタどっか、壊れてるんじゃね?
 バッテリーいかれてるんじゃね?
というありさまだ。

しかし、追われている仕事、追われているやるべきことなどがないために、心には多少余裕がある。
だから、病気が快方にむかっていく子どもの様子を見ていてうれしくなったし、「ママ見て見て」の要請にもこたえられたし、彼が作る制作物に心からすげえと感嘆できたのであった。

すると、1年近く彼が何かにつけて変身していた「イライラ白目ギャング」が現れず、代わりにチャーミングでユーモラスで、かわいくてかっこいい愛らしい少年が現れた(親バカ目線多分にあり)。
そして私もそのステキな少年とたくさん関わりたくて、すなおに愛情を感じ、笑顔が増えたと実感したのである。

―――――

イライラ白目ギャングが現れるのはだいたいこうである。
息子:ママ、見て→「いま●●してるからちょっと待って」→ぜんぜんボクのことかまってくれない→「そんなことないよ、終わったから今見るよ」→どうせボクのこと嫌いなんだ→「そんなことないよ!」→そうだ!ママなんて大っ嫌いだ!すべてがいやだ→「じゃあスネてなさいよ!」→白目ギャング現れ、私に突進し、泣く→ほっておく→ママ、だっっこ~

こうやって書くと、ただただ単純なサイクルではないか。
しかし恐ろしいことに当人である私は、「なんでいつも息子は怒っているのだろう?」と本気で悩んでいたのである。

白目ギャングが現れる分岐点はいくつかありそうだが、まずは「見て見て、かまって」君からの要請が出た瞬間かまえばいいんである。

今までは、待てる子どもになってほしいし、実際四六時中かまってやることはできないと割り切って待たせていた。だが本件の場合、毎度同じ茶番になるのなら、上策ではなかったと結論づけた方がよいだろう。

んじゃなぜ、私はすぐ彼をかまえなかったのかといえば、四六時中、仕事っぽいことが頭を占めているからである。

私はフリーランスのコピーライターと書くと聞こえはいいのだが、はっきり言って仕事には2つのタイプがある。

アイディア重視のクリエイティブな仕事と、技能を持ってこなす作業である。
ここでは上記の2つを仕事と作業と呼び分けることにする。

私が好きなのは仕事であって、ワクワクと怖さを同時に味わいながら、「何かいい案ないかな~」だったり、「これってどういうことなんだろう?」と言語化のため、常に悶々としているのである。

これが育児との相性が非情に悪いのだ。
家事で手を動かしながら、モンモンとしていると、「ママ~見て見て!」要請が来る。
「……ん?」と心ここにあらず、気もそぞろで、相手は「僕のこと、全然みてない!」と怒り出すのだ。
私は切り替えがかなり下手、と自覚している。

これが作業だったら、さほど考えることはなく、PCに向かう時だけギアを入れればいいので、心は外界に開いている。だから息子からの要請にも対応できるんだけど。

胃腸炎を子どもと私で患って、回復を待っていた時ふと思ったのが、
「こんなに子どもがうれしそうなら、ああ、仕事やめよっかな」だった。

あんなに仕事が好きだと思っていたのに、「辛いから」やめるのではなく「子どもが楽しそうだから」やめたいのである。
おいおい、結局両立できねーのかよというツッコミと、なんだかお母さんだなあ~という納得を一緒に味わった。

今ならエネルギー不足により、握力がないのですべてを持っていることができず、ラクに親子が笑顔になれる道に価値を置いたのだと分かる。

さて、回復したいま、やはり仕事をしたいと思う。

作業と仕事がいいバランスで回れば、充実感を得ながら、子どもに対して心を向けることができると思うけど、この6年間、上手にバランスを取れたためしがないんですねえ。


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