みんぱく公開講演会「『目に見えないもの』と生きる――食からみたヒトと微生物のかかわり」
菌や微生物のはたらきに興味深々なこのごろ、大阪の国立民俗学博物館が人と微生物のかかわりのテーマで公開講演会をするとの情報を発見しオンラインで聴講させていただきました。
minpaku.ac.jp/ai1ec_event/39507
メインスピーカーとテーマはこちらでした。
梅﨑昌裕(東京大学教授)
「人類と微生物の共生:パプアニューギニア高地の事例」
小倉ヒラク(発酵デザイナー)
「発酵文化人類学:微生物から見た社会のカタチ」
最近の文化人類学は、人間中心の研究から、人間以外の者とのかかわりも活動の範囲に入ってきているとのこと。人新世に入り、地球温暖化の影響などの変化が大きくなってきていることが背景としてあるようです。
面白い!と思った内容を備忘録として記録したいと思います。
人の身体には微生物がいっぱい
人間の腸内細菌の数は40兆、1000種類以上で遺伝子も1000万以上と大量多種多様!細菌の重さだけで1kgくらいあるそうです。
菌のおかげで筋肉隆々?!
世界中には、私たちからすると栄養が足りているとは信じられないような食事でも元気に生活している人たちがいるそう。
・パプアニューギニアの人たちはサツマイモばかり毎日約2kg食べるような食生活
・アルコール飲料を主食とするエチオピア農耕民
・エネルギーの70%を乳製品から取る牧畜民
なんでそんなことが可能なのか?その答えは腸に住んでいる微生物にカギがあるとのこと。
人間と微生物の共生関係
食べ物は胃や小腸で消化され人にとって要らないもの大腸に送られる。
→腸にいる菌たちにとってはそれがごちそう。
→菌が人にとって要らないものを代謝する。
→菌の代謝によってまた人にとって有用な栄養が作られ、人の身体に吸収される。
という、人と菌の持ちつ持たれつの共生関係が成り立っている。
パプアニューギニアの人たちはサツマイモばかり食べていて、食事から接種できるタンパク質は普通の人の必要量より少ないはずなのに、筋肉隆々。
パプアニューギニアの人たちの腸内には、尿素をアンモニアに変え、アンモニアをアミノ酸に変える菌が住んでいるらしいとのこと。
菌のおかげで、人だけでは取り出せない栄養素を摂取できるなんて!菌ちゃんありがとうですね。
なお、梅崎教授が現地に行って同じ生活をすると、体調不良になったとのこと…。食べるものによって、腸に住む菌も変わってくるのがよくわかるご説明でした。
ニューギニアの人の腸内細菌のうち、40%はまだ未知の属の菌だそう。菌の多様性、無限大ですね!
こわい抗生物質、保存料
抗生物質や保存料は、腸に住んでいるそんな菌たちを殺してしまうそう…
細菌が代謝で生み出してくれる物質には、アミノ酸やビタミン、しあわせホルモンと呼ばれるセロトニンもあるとのこと。
食べるものに気をつけて、大事な腸内微生物を守りたいなと思いました。
多様な日本の発酵文化
ここからは小倉ヒラクさんのお話です。パプアニューギニアではサツマイモばかりを食べているのに対し(サツマイモの品種だけで20種類くらいあるそう)、日本の豊かな食事のバリエーションはカビによって生み出されているとのこと。
ごはん、味噌汁、納豆、醤油に豆腐。
全部田んぼからとれるものが(大豆は米の二毛作で育てられた)、菌による発酵のチカラでいろんな味を生み出しているのが特徴的でおもしろいと、言われてみればそうだな!と思いました。多彩な味を楽しめる食文化に生まれて幸せですね。
お二人のお話、どちらもすごく面白かったです。梅崎先生の研究は特に科学的な実験も絡んでいて、納得感がすごかった。分野横断的な研究、とてもわくわくしますね。
お話を聞いて、おなかに住んでいる微生物に対する愛着がさらに強まりました。みんぱくさん、また是非こんな講演会を開催してください!
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