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対話型アート鑑賞との出逢い

 はじめまして。一般社団法人日本アート教育振興会に所属し、アートマインド®︎コーチとして活動している、金島魚月(かなしま・なつき)と申します。
 私は2023年1月より、主に「対話型アート鑑賞」とフラワーアレンジメントを組み合わせたワークショップを湘南地域、都内などで行っています。その様子をご紹介していきたいと思っていますが、まずはじめに、私がアートマインド®︎コーチングに興味を持ったきっかけをお話ししたいと思います。よろしければお付き合いください。

アートの世界は果てのない小宇宙だった。

 20代の中頃に出会った原田マハさんの小説「楽園のカンヴァス」が私をアートの世界へと誘うきっかけとなりました。

バーゼルへも連れ出してくれた私の大好きな一冊。

 幼い頃から美術館へ連れて行ってもらっていた記憶はありますが、思い返すと、そこは美術館というよりもトリックアートに近い場所だったと思います。学生時代には特段、美術に興味を持つことはなく社会人になりましたが、「楽園のカンヴァス」の中で描かれるルソーの純粋無垢な姿に惹かれ、まずは画家の人生という視点から美術に興味を持ちました。
もっと「知識」を増やしたい、という一心で美術検定を受験することにしました。「この絵誰の絵?」という名画が収められた書籍から入門し、簡単な美術史へと歩みを進めていきました。
 ページをめくるごとに絵画、画家に出会っていく日々は、まるで果てのない小宇宙を奥へ奥へ進んでいくかのようで興奮し、熱狂し、「知識」を吸収し続けました。しかし、それは、趣味の領域でのこと。楽しむために勉強しよう、ストレスにならない範囲で続けていこうという決まりをこっそりと設けていました。美術検定の4級と3級を取得すると、趣味としては十分だと一旦は冷却期間に入りました。その後は、ちょこちょこと時間を作っては話題の企画展に足を運び、原田マハさんの小説を楽しんでいました。

 30代になり、副業というものが一般的になってきますと、Instagramにも副業を促す広告が目につくようになりました。どれもこれも楽しそうで、私も何かはじめたい、といよりは、何かをはじめなくてはという焦りが生まれるようになりました。
 しかし、どれもこれも楽しそうだけど、貴重な自分のお金と時間を割くにはいまいちピンとこないものばかり。そんな時に「対話型絵画鑑賞」のコーチ養成講座の広告が目に止まりました。一体どのようなものなのだろう。無料の体験だけ受けてみよう、絶対に勧誘には乗らないぞ、という決心のもと、オンラインの無料体験を申し込みました。

180度変わる世界、180度変わる絵画の見え方にシビれる 

 そこで鑑賞した1枚の絵。私は初めて見る絵画でした。
白髪で同じ色のひげをたくわえた初老の男性が中央のベッドに座り、左手を天に向け突き刺し、右手では手前の若い男性から盃を受け取ろうとしています。男性の座るベッドの周りを9名程の屈強な男性が囲んでいて、天を仰いだり、目頭を押さえていたり、石壁に額をつけてしな垂れていたり、座って目を閉じていたりしています。みんな体に布のようなものを巻いているので、日本ではないし、時代も随分と昔のよう。部屋は堅牢な石壁に覆われていて、左奥には階段を上がっていく人の姿があるので、ここは地下なのかしら。
 私はこの絵を隅々まで鑑賞して、ものすごく権威ある男性が自ら毒を呑んでこの世を去ろうとしている、それを弟子たちが嘆き悲しんでいるとても崇光な場面の絵だと解釈しました。しかし、同じものを見ている男性が一言、「これは飲み会じゃないですか?ロックな感じの」と言ったのです。
 私は、「はあ?そんなわけ…」と思いつつPC画面の絵と発言した男性に目を向けました。
・・・そう見えなくも、ない。
 私はその瞬間に、良いとか悪いとか、合ってるとか間違っているとか、そういうことではない、感覚的に「そうも見える…!」という、まさに驚愕!!という感覚を味わったのです。それはドラマ「正直不動産」の山Pが嘘をつこうとした時、神風に煽られる様に、私の場合はPC画面からビューっと強風が吹いてきたような爽快感があり、額あたりの第三眼が開眼したかのような驚きでした。180度物事の見方が変わるということをこの時初めて体験したのです。

絵画鑑賞とは知識よりも、もっと大切なことがあると気づく。

 そして、これまで私が好んでいた絵画鑑賞は「知識」を得ることが主たる目的であったのに対して、この「対話型アート鑑賞」では作品を自由に鑑賞することを目的としていました。
 当然といえば当然のことなのに、例えるなら、それまでの私は目の前の木になっているりんごを味わいもせずにガツガツを食べて、「やっぱり採れたてはうまいな!」とわかったようなことを言っている人間だったのです。
 しかし、「対話型アート鑑賞」はりんごの形を掌で感じ、香りを楽しみ、半分に切った時の蜜の量を確認し、シャリっという音と口に広がる甘味を存分に味わうような、丁寧であって奥深い行為、それが私にとっての「対話型アート鑑賞」でした。
 この180度物事の見方が変わる感動と面白さを伝えたいと強く思った私は、そのまま受講を決めました。また、この「対話型アート鑑賞」を学ぶことは、一度隙間の空いてしまっていた趣味としての美術の勉強のモチベーション維持にも繋がると考えたのです。

いつか、学校教育の場でも役に立ちたいという夢

 アートマインド®︎コーチングとは、そもそもなんなのか、ということはこちらとは別にご紹介したいと思いますが、簡単に説明書きをするならば、一枚の絵画を複数人で観察し、自分の気づきや発見をシェアしながらじっくりと鑑賞していく「対話型アート鑑賞」を用いたコーチングの一種になります。  
 この「対話型アート鑑賞」を通して、観察力、思考力、創造意欲、自己受容力、コミュニケーション力、美意識などを高めていくことを目的としています。
 自己と他者の考え方や表現の違いを理解すること、論理的思考や複眼的思考を磨くことで、文章の記述能力を上げるトレーニングにもなること、自己肯定や自己受容が広がることなどを目指すこの「対話型アート鑑賞」は、日本の幼児教育、学校教育でももっと積極的に取り入れられた素晴らしいのになと思っています。(すでに取り入れている実例もあります)「対話型アート鑑賞」を行なってマイナスになることはほとんど見当たりません。
 しかし、今から私が教員を目指し、教育に革命を起こすことは全く現実的ではありませんので、「対話型アート鑑賞」のコーチとして、いつか外部からでも教育現場に携われる日を目指したいと思うようになりました。
 そして、その思いは自分でワークショップを開催するごとに参加された方の反応を見て、日に日に強くなっている今日この頃です。

 長くなってしまいましたが、このような経緯で私は「対話型アート鑑賞」のコーチの道をマイペースに歩んでいるところです。
 ワークショップの様子をマガジン「Lob(ロブ)」にてご紹介して参りますので、よろしければご覧ください。
 余談ですが、Lobはドイツ語で「讃える」「賞賛/称賛」という意味があります。
 私のWSでは「正解も間違いもないアートの世界で自由になる」こと、そして、誰しもの感じたままの発見や価値観が「讃えられる場所」であってほしいと思い、響が良く温かみのあるドイツ語の「Lob」と名付けました。
 また、Instagram(@sakanatsuk1)HP(準備中)でもWSの詳細や最新情報をご紹介していますので、ご覧ください!

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