金島魚月(カナシマナツキ)

海辺の街に住みながらアートマインド®︎コーチとして「#対話型アート鑑賞」のワークショップ…

金島魚月(カナシマナツキ)

海辺の街に住みながらアートマインド®︎コーチとして「#対話型アート鑑賞」のワークショップを開催しています。WSの様子をマガジン「Lob」でご紹介しています。また、iriさんの楽曲「はじまりの日」をイメージした短編小説を全13話公開しました。ラストシーンが気に入っています。

マガジン

  • Lob ー正解も間違いもないアートの世界で自由になるー

    対話型アート鑑賞の開催記録とそれに関連する出来事、感じたこと、自身の気づきをまとめています。ぜひ、ご覧ください。 ご興味を持っていただけた方は Instagram @sakanatsuk1 mail newsign1989@gmail.com へご連絡くださいませ!

  • はじまりの日

    iriさんの楽曲「はじまりの日」をモチーフにした短篇小説です。 海辺の街でともに過ごしてきた菜月と匠。間もなく旅立ちの春を迎え、街を去っていく匠を菜月は見送ります。二人の間に絶えずあったのは「いってきます」と言ったきり戻らなかった大切な人。マッチ箱を開けるとき、時間が再び、動き出す。

最近の記事

【Session7】 対話型アート鑑賞と花瓶生けをつくるワークショップ

開催日時:2024年4月 場所:SNAP(奥浅草) 参加者:5名  北欧の絵画の世界に飛び込もう!  奥浅草の交流起点SNAPさんで2回目となるワークショップを開催し、今回もお花屋さんReeFlowのリエさんとご一緒させていただきました。  春らしい陽気(暑いくらい)で、浅草の町も大賑わいだった当日は、5名のお客様にご参加いただきました!  前回(2024年1月)の開催に続き2回目のご参加の方、そして今回初めてご参加くださった方も。  今回は、新宿のSOMPO美術館さんで

    • 【Session6】 対話型アート鑑賞と静物画をつくるワークショップ

      開催日時:2024年2月 場所:花やチセ(神奈川県藤沢市) 参加者:4名   静物画を逆再生でつくるってどうかしら?  辻堂の花やチセさんで3回目のWSの開催となりました。  今回は、チセさん店内の素敵なブルーグレーな壁を生かして「静物画」を創るイメージワークができないかな、という思いつきを店主の小笠原さんにご相談したところ、「それ、面白そうですね」と掬い上げて下ったのです。  静物画を“創る”にはどんなアイテム(モチーフ)が必要か、花はどのような形で準備いただくかなど

      • 【Session5】奥浅草で開催!対話型アート鑑賞と花束をつくるワークショップ

        開催日時:2024年1月 場所:奥浅草SNAP(東京都台東区) 参加者:6名 WSがもたらした再会と新たな出逢い  このWSを初めて良かったと感じることはたくさんあるのですが、その一つが懐かしい友人との再会です。  大学を卒業してから疎遠になっていた友人がSNSの告知ポストを見つけてWSに参加してくれたのです。  WS後にお礼も兼ねて食事をしていると、友人が勤めている先にもWSができるスペースがあるということで、早速お写真を拝見しながらお話を聞かせてもらいました。  見せ

        • 【Session4】逗子市民向けのワークショップ!「見えなかったものが見えてくる⁉︎」

          開催日時:2023年12月 場所:市民交流センター(神奈川県逗子市) 参加者:4名 行政が提供してくれる活躍の場を活用しよう!  私が住んでいる逗子市では、「市民講師」という制度がありまして、ヨガやラッピング技術、歴史など様々なジャンルの方が講座を開催され、ご活躍されています。  私も市民として少しても地域に還元できることがあればと思い、市民講師の登録をすることにしました。  まだまだ「対話型アート鑑賞」は知名度が低く、個人で活動を行なっていくには、このような行政の制度を

        【Session7】 対話型アート鑑賞と花瓶生けをつくるワークショップ

        マガジン

        • Lob ー正解も間違いもないアートの世界で自由になるー
          9本
        • はじまりの日
          13本

        記事

          【Session3】企業研修でのアートマインド®︎コーチングについてご紹介

          開催日時:2023年8月 場所:LITALICOワークス(神奈川) 対象者:就労移行支援を行うLITALICOワークス神奈川エリアの職員様14名  WSにご参加くださった方より、ご自身のお勤め先でもぜひ対話型鑑賞を開催してみたいという有り難いお声掛けをいただきまして、企業研修へ挑戦させていただくことになりました。  当日は、14名の参加者が2つのチームに別れ、絵画を使用した「対話型アート鑑賞」を2回行ったあと、ある“音”を聴いてそこからイメージした情景を描くアートワークを

          【Session3】企業研修でのアートマインド®︎コーチングについてご紹介

          【Sesstion2】対話型アート鑑賞と鏑木清方の描いた美人に贈る花束のワークショップ

          開催日時:2023年6月 場所:花やチセ(辻堂) 参加者:8名 2回目のWSは地域の美術館とタイアップを  なんと、大変有難いことに辻堂の花やチセさんにて2回目のワークショップの開催が叶いました。  1回目の開催を終えた時に、参加されたお客様が「このまま美術館へ行きたい!」とおっしゃっていたことが印象深く残っていたので、近い場所にある美術館とのタイアップを考えました。  そこで、鎌倉にある「鎌倉市鏑木清方記念美術館」さんにご相談をして清方作品を扱わせていただくことになりま

          【Sesstion2】対話型アート鑑賞と鏑木清方の描いた美人に贈る花束のワークショップ

          【Prologue】花やチセさんとの出逢い

           私にはアートマインド®︎コーチの養成講座を受講している頃から実現してみたいワークショップのアイディアがありました。  それは、対話型アート鑑賞とフラワーアレンジメントのイメージワークを組み合わせたワークショップ(以下WS)の開催です。  対話型アート鑑賞で研ぎ澄まされた感覚をもとに、実践としてフラワーアレンジメントで五感をフルに働かせたら面白いのではないだろうか?という思いつきに近い閃きでした。  一番初めに思いついたのは、花束の描かれている絵画を選び、花束が描かれている部

          【Prologue】花やチセさんとの出逢い

          【Session1】対話型アート鑑賞と花束をつくるワークショップ

          開催日時:2023年1月 場所:花やチセ(辻堂) 参加者:6名 ◎私の決めたWSルール  全てのWSに共通して行うこと、つまり、私のWSのルールを決めました。    それは名札作りです。  はじめに名札をつくっていただくことから始めてもらいます。(早く到着された方には待ち時間を使って名札を制作していただきます)  名札はハガキ大の画用紙を山折りにしたシンプルな作りです。そこに名前を書いてもらうのですが、条件は2つ。 1、本名じゃなくてもOK。WS中に「その日、私に呼ばれた

          【Session1】対話型アート鑑賞と花束をつくるワークショップ

          対話型アート鑑賞との出逢い

           はじめまして。一般社団法人日本アート教育振興会に所属し、アートマインド®︎コーチとして活動している、金島魚月(かなしま・なつき)と申します。  私は2023年1月より、主に「対話型アート鑑賞」とフラワーアレンジメントを組み合わせたワークショップを湘南地域、都内などで行っています。その様子をご紹介していきたいと思っていますが、まずはじめに、私がアートマインド®︎コーチングに興味を持ったきっかけをお話ししたいと思います。よろしければお付き合いください。 アートの世界は果てのな

          対話型アート鑑賞との出逢い

          はじまりの日(最終話)

           翌朝は六時半に目を覚ますと、朝食の準備をした。  ちょうど食卓に全ての皿が並んだ頃、ギンガムチェックのシャツに黒いスキニージーンズをはいた匠が部屋から出てきた。片手には黒いジャケットを携えている。 「おはよう、なっちゃん」 「おはよう、タク」 「おっ、アジじゃん、うまそー」 「沖縄でもちゃんと朝ごはん食べるんだよ。三食しっかりとね」 「米送って」 「生憎、農家じゃないんでね」  軽口を叩きながら食事を終えると、匠が家を出る時刻が迫った。 「愛由美ちゃんと紗都美に挨拶した?」

          はじまりの日(12)

           あの夜と同じような月が空に浮かんでいる。  そして、今初めて、菜月は、幼い匠と過ごした時間がずいぶんと前のことのように感じた。 「最近やけに昔のことばっかり思い出すんだ。俺となっちゃんが一緒に暮らし始めた頃のこと。なっちゃんはいつも俺が満足するまで付き合ってくれた」 「『ママのおむかえ』のこと?」 「そう。もうお終いにしようとか、ママは一生帰ってこないとか、そういうことを言わずに、俺の気持ちが満足するまで一緒に玄関で過ごしてくれた。仕事で疲れて帰ってきて、家事もやらなきゃい

          はじまりの日(11)

          「え?」 「お迎えいきたい」 言うが速いか、玄関走って向かった。 「ちょっと、タク、待って」 「はやく、なっちゃん」 「どこまでお迎え行くの?」 「うみ!」  匠は青いビーチサンダルを履くと、引き戸を思い切り右に引いた。  夏の湿った風が潮の香りを運び、玄関から家屋に舞い込んできた。  海まで手を繋いで歩いていくと、匠は砂浜を駆け、波打ち際で足を海水に浸しながら 「ママーっ」 と、叫んだ。  菜月が波打ち際に追いつき、黙って海面にたゆたう月を見つめていると、 「なっちゃんも探

          はじまりの日(10)

          春の夜風が菜月の切りそろえた前髪を揺らした。 「なっちゃん、覚えてる?」 「なにを?」 隣を歩く匠はパーカーのフードを被り、スウェットのポケットに両手を突っ込んで歩いている。 「俺が子供頃、あの家のどこが一番好きだったか」 「覚えてるよ、玄関」 匠は声を出さずに口元だけで照れくさそうに笑った。  仕事の帰り道に匠を保育園へ迎えに行き、家に駆け込むと、匠を着替えさせ、自分も同時に着替え、風呂を沸かし、台所で夕飯の支度をする。  それまで会社で百パーセント出していた力をバレない

          はじまりの日(9)

          「なっちゃんのご両親も同意してくださったの?本当に、なっちゃんはそれで後悔しない?」 ベッドに背を預けて座る佳寿美は困ったような、驚いたような顔を菜月に向けている。 「はい、両親にはなんとか理解してもらえました。時間がかかりましたけど。紗都美のことはうちの両親もよく知っていますし、結婚する気配のない娘ですから、孫のような匠くんのことは本当に可愛いと言ってました」 「でも匠は愛由美の子よ。紗都美の子じゃない。なっちゃんからしたら他人も他人じゃない」 「それでも、匠くんが傍にいて

          はじまりの日(8)

          重い頭で目覚めた翌日は、匠を連れて佳寿美のもとを訪れた。 病室を覗くと、ただでさえ動くことが困難になった身体の佳寿美が、まるで死の淵をなぞるかのような目をして横になっていた。一瞬菜月は及び腰になったが、腹にぐっと力を入れて声を掛けた。 すると、佳寿美は最後の力を振り絞るように目に力を宿し、菜月が持ちかけた娘二人の葬儀の相談へ気丈に応じてくれた。 菜月が他人だったことが幸いしたのかもしれなかった。 その横で匠は飛び出す絵本を黙って何往復も読んでいた。 梅雨が明けて、ジリジリと

          はじまりの日(7)

          匠を抱え、電話で告げられた警察署へ向かった。 誰にどうやって声をかけたら良いのかもわからずに、通りかかった婦警に電話で聞いた内容を伝えたが、口から出る言葉の数々はまるでうわ言のように現実味がなかった。 受付を通り過ぎた人気のない廊下の先にある、黒いソファで待つように言われ、菜月と匠は黙って言われた通りにした。 匠はただ黙って宙を見ていた。ぐずったり、泣いたりしなかった匠の態度をこの時はそれが当然だと思っていた菜月は、ずっと後になってから、どれだけその胸の内が不安で孤独でいっぱ