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君が生きてたってことは消えない

ふと急に一生会えなくなってしまった。
なんの前触れもなく、一生会えなくなった。
皮肉なことに、会えなくても、毎日は過ぎていく。

ご飯も食べるし、ラジオも聞く、出かけるし、1日の終わりには寝る。
新しい音楽は毎日配信されていくし、廃刊になる雑誌もあった。
好きな番組は別番組に名前が変わったし、庭で元気にしてたサボテンはいつの間にか枯れた。好きなバンドにメンバーが増えたし、メンバーの半数が結婚もした。
三ツ矢サイダーの味も増えたし、限定のフラペチーノはチョコ物が多くなった気がする。


日々めまぐるしく変わっていく。

よくよく考えてみれば、自分のこともそうだ。
好きな色も変わった。昔は黒か白の服しか着なかったのに、最近は専ら襟元に可愛らしい刺繍がされてる赤いシャツばっかり着てる。
甘いものがあれほど嫌いだとほざいていたのに、最近1番食べるのはプリン。コンビニでも美味しいものが多くて助かる。焼きプリンが一番だよ。
メガネ生活にも幕を閉じた。コンタクトになって少し、自分の顔が好きになった。

こうやって自分や世界は変わっていくのに、君は変わらない。
いつまでもサラサラの髪で、23歳の姿なんだ。
泣いている姿も、笑っている姿も、いつまでも脳の中に刻まれてるよ。あんなに一緒に居たんだもの。声も、ビデオが残ってるから忘れない。

ただただ、自分だけが年をとっていくのが奇妙で、不安で、悲しいような、何も感じられないような、悔しいような、耐えられないような、そんな気持ちになる。

君が居なくなって2、3年はさ、君との写真を見返して、「本当は隠れてただけだよ。」「実はここに居ます〜。」って、出てこないかなってずっと思ってたし、出てくるような気がしてたんだ。

でも、10年経って、容姿にはっきりとした違いが出てきた頃から、君は居ないんだって現実を、ドンと突きつけられた気がする。
よく自分の顔を見たら、小さなシワが出てきたし、言われてみれば髪も少し薄くなった気がする。ブリーチ、何回もしたからかなあ。
でも写真や動画の中で笑っている君は、まだまだ肌にシワは見えないし、心なしか若い。

そりゃそうだ。君はもう死んでしまって、この世にいないんだもの。
容姿は23歳で止まってる。

未だに寂しくて寂しくて仕方ない。こんなこと言っても仕方ないんだけど。
君はどんな風に成長していったんだろう。もし、今も生きてたら、もともとあったほうれい線がもっと濃くなって、笑った時の愛嬌が増えてたんだろうな。
"もう君が居ないという現実を受け入れて前に進んでいる自分"と"まだまだ寂しくてぽっかりと穴が空いたような自分"の両方と向き合って生きているよ。

"君が生きてたってことは消えない"
これだけは心の支えです。


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