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【エッセイ】味噌汁#7


前回

捲る

 前回の投稿までですでに8000文字超。
 小説より長ぇじゃねぇか。
 ぱっぱと捲って行こうと思っている。

キノコ嫌い

 さて、キノコそのものの説明は終了するとしてここで非常に大きな問題が発生した。

 娘はキノコが嫌いなのである。

 うわぁ、これは困った。
 妻もそれほどキノコが好きというわけでもないのだが、健康という二文字を突きつければなんとか攻略できるレベルと私は見ている。

 しかし、娘の方はというと。

わいはキノコが嫌いである。断じて食べない。

 無口な人なので特に言葉に出しはしないがその表情、口をへの字に結び、顔面の圧でアピールしてくる。

 さてどうするか。
 現在の問題点を明確にすると。
①一度に消費するには多すぎる分量の問題。
②娘のキノコ嫌い。
 言うまでもなくこの2点である。

キノコの分量

 近所にスーパーがなく、妻は自動車免許を持っていないということから、当家では週末に私が運転してスーパーまで買い出しに行っている。
 その際にキノコ類を買ってきて主に酒肴として利用するのだが、この時にしいたけエリンギ舞茸ぶなしめじヒラタケえのきをそれぞれ1袋ずつ購入してくるわけでこれ、けっこうな分量である。

種類を絞れ。

 そう言われればそのとおりなのだが、キノコにもそれぞれ得意分野があって、それをもれなく摂取したい強突く張りの私にその選択肢はなく、一度ヤケクソで全量を四川風回鍋肉の元(クックドゥ)にぶっこんでみたところ、あまりのカサの多さにフライパンから具材が溢れ出す始末、四川風をチョイスしたことで「辛くて無理」と妻の援軍は得られず、当然ながら娘は顔面の圧で抵抗、しかもこのキノコの野郎がクックドゥの味を全面的に良く吸収しやがるので味が強力に濃く、飲酒の影響もあって腹はパンパン、濃厚すぎて血圧が上昇する不安等に押しつぶされそうになりながら必死で消費したという苦い思い出があり、全量消費というのは命がけ、健康に悪いということを私は実体験として知っている。
 せっかく栄養の豊富なキノコを摂取するのに、高血圧からの脳卒中や心筋梗塞で命を落とすことになってしまっては元も子もない。
 そこで諸々思案、諸々調査を重ね、到達した結論が。

冷凍保存

 とりあえず酒肴の種としてぶなしめじ椎茸エリンギえのきこのあたりを少量ずつ株から毟り取り、ビニール袋とか保存袋とかに入れて冷蔵庫にいれる。調理法は後から考えれば良い。
 ここで私は敢えてヒラタケ舞茸を除外したのだが、これは好みの問題でなんとなくちょっとクセが強いので例えば単純に塩コショーで炒めたりした場合にキノコ臭が強すぎて私的には好みではないので酒肴にはしていないというだけのことである。
 そして残ったキノコ類をとにかく片っ端から、全集中で顔面を赤鬼のごとく真っ赤に染め鼻息荒くこめかみに極太の血管を浮かせながら猛烈な勢いで切り刻んでいく。なんていうのかな、みじん切り?というか自分の主に技術的な問題から木っ端微塵という程には細かく刻めないので、粗みじん?いやそれよりも更に粗くて細切れと粗々みじんの中間程度に刻み狂う。
 そして刻み狂ったその憎たらしいキノコ類を百均で購入した冷凍保存袋(特大)にガンガン放り込み、全量が入ったところで一旦口を閉じ、バーテンダーがシェイカーを振るイメージで踊るように舞うように全身をくねくね捻りながらシェイクする。
 その後保存袋のチャックをわずかに開き、こんだ先ほどと真逆、あくまで静かに無我の境地、心と身体を落ち着けて呼吸を5分に一回程度に減らし血流と心拍数を極限まで低下させ顔面蒼白をキープしたまま、袋内の空気を少しずつ丁寧に抜き、よしこれでほぼ完全に空気は抜けたという閃きが電流のように脳天を撃ったその瞬間、必ず0.5秒以内の時間でチャックを閉じ、これを素早く冷凍室にぶち込む。

 冷凍キノコミックスを業スーで買ってこいよ、アホくさい

 これは完全に的はずれな意見である。浅はかである。

 業スーのキノコミックスにはヒラタケが入ってないんじゃよ。
 こういう部分を軽々しく諦める精神では将来歴史に名を残す偉人にはなれない。

顔面の圧を回避する

 味噌汁の作り方自体は後述するとして、完成したキノコ抜きの味噌汁をまず娘の椀に注ぐ。
 そうした後、できる限り優雅な動きで冷凍庫から凍結キノコミックスをひと掴み取り出し、汁にぶち込むのだがこの時、冷凍されたキノコによって一旦汁の温度が低下するので、更にしばらく加熱を続け、見た目でなんとなくキノコがふにゃふにゃしてきたのを見定めて自分と妻の椀に注ぐ。
 こうすることでキノコの効能を余すことなく摂取しなおかつ、キノコ嫌いの娘による顔面の圧を回避しながら私は朗らかな人生を歩んでいる。

 ちなみに私は味噌汁をやや多めに作っておいて、翌朝にもこれを食するようにしているのだが実際、キノコによく熱が通っていて、翌朝のほうが美味しく感じて朗らかなのだ。

 ということでキノコの項はこれにて終了。

(メインテーマはあくまでも味噌汁であってキノコではない)

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