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日本人とは深い話ができない?

少し前に、サンチャゴ巡礼に行くという人の話を聞く機会があった。
知り合いがやっているサロンの常連さんで、
すでに6回サンチャゴ巡礼に行っている人がいて、
その人の話を聞いて「僕も」と言い出した人がいる。
その人の話を聞くサロン。
初めてのサンチャゴ巡礼、どんな準備をしてどんな旅を想定しているのか
実際に歩くとどんなの感じなのか、私の興味津々で参加した。

私のもう一つの興味は、普段「僕(私)は無宗教で」という人が圧倒的に
多い日本人にとって、
巡礼とかお遍路さんってなんなんだろう、という点にあった。
先日鎌倉に行ったときも、白装束のお遍路さん一行と出くわした。
子どもも白っぽい装束(まっ白ではなかったけれど)を着て杖を持って
お寺さんで一休みしていた。
この人達は、子どもも連れて、どんな巡礼をしているのかなぁ。
そう思った。
だから、ちょっとそんなことも聞いてみたいと思ったのだ。

2時間の話を煎じ詰めると、巡礼というのは、自分捜しの旅だそうだ。
サンチャゴの場合は30日近い間、毎日、休みなく歩き続ける。
そうすると、歩行瞑想のような状態になるのだという。
その状態で、現在だけに目を向けて、自分とは何かを考える30日。

それは、例えば、四国とか、熊野とかじゃなくて、やっぱりサンチャゴが
いいんだろうか?
歩行瞑想を一定期間続けるのに、海外に、しかも、全く馴染みのない宗教の
ところに出ていく理由はなんだろう。

たぶん、歩いている間に、知り合った人達と、
いろいろ深い話ができると思うんだよね。
自分捜しと精神性に及ぶ、いわゆる深い話は、
巡礼という「スピリチュアルなもの」を求めている人との方が
しやすいんだよ。
と、これから出かける彼が言う。

でも、国内でお遍路さんやっている人も同じでは?
私がそう食い下がると、彼はこう言ったのだ。
「日本人は、深い話しないでしょう? 
日本人と深い話はできないんだよ。」
間髪を入れずに、彼より年配の別の参加者が言った。
「わかる。日本人って表層的な話しかしないからね。」

ちなみに、今度、巡礼に行く彼は、英語が得意だそうで
だから、普段も、「深い話」はイベントなどで知り合った外国人と
するのだという。

初めて会った人と、お天気とか一般論的な話以外の話をするのは
私にはとても難しい。
というか、価値観の全くわからない人に、心を開くにはどうしたらいいのか見当もつかない。
心を開いて、いろいろな話をするには、時間がかかる。
相手も私も、母国語が英語でなく、なおかつ英語で会話をするときは
誤解がないように、という方に神経がいってしまうことも多い。
(いや、相手の英語が母国語ならいいって話ではもちろんないけど)
もちろん、自分を基準にすることはできない。
でも、普段英語を話さない例えばスペインの地元の人と英語で話す
「深い話」って一体なんだろう?

>余計な気を遣うことなく、話を切り出せるし、心を開きあえる。
>そして心を開いた深い話し合いを、巡礼路は守ってくれるはずです。
>そこには長い歴史の「場所の記憶」があるからです。

主催者はそうまとめていた。
いや、母語で話しているならまだしも……。と思う。
心を開いた深い話し合いを、「場所の記憶」に守られてできるのは、
なぜ、海外なのか?
なぜ、サンチャゴなのか?
なぜ、母国語で日本ではダメなのか???

なぜ、異教の地にわざわざ自分とは関係のない「場所の記憶」を
求めて出ていかなければならないのか。
それなら、ハイキングにいって、自然の美しさを母国語で話をした方が、
よほど心を開けるような気がしてしまうのは、私の偏見だろうか。

帰宅後も、なぜ、日本人とは深い話しができないんだろうと
いう疑問が頭から離れなかった。ら、最近こんな記事に出くわした。
東京ミドル期シングル
ふつーにいえば、東京在住中年独身
という人々。この層が増えているらしい。
東京区部、すなわち23区に居住する独身の男女を指している。
年齢は35歳から64歳、特にシングル男性は、孤立化しやすいという。
それは、「家族に代わる社会関係が豊かになっていないから」だという。

例え家族がいても、家族以外の豊かな社会関係、友達関係というのは
必要なんではないだろうか。
泣いたり笑ったりできる人が家族以外にも居て、
そういう人と、時に深く心を開いて話をし、
時にバカな話をしてケラケラ笑う。
そこが人生のベースなんではなかろうか。

日本人とは深い話ができない。
言い換えれば、日本人には心が開けない。
外国語でコミュニケーションをすると、
日本人と話すより、心が開けたような気持ちになるのはなぜだろう?
私がひっかかるのは、そういう人が増えているんじゃないかという
気がするからだ。

家族以外には心が開けないと感じる人が増えているのだろうか。
だとしたら、それは、ほんとに一大事……だよね?



得意技は家事の手抜きと手抜きのためのへりくつ。重曹や酢を使った掃除やエコな生活術のブログやコラムを書いたり、翻訳をしたりの日々です。近刊は長年愛用している椿油の本「椿油のすごい力」(PHP)、「家事のしすぎが日本を滅ぼす」(光文社新書)