書籍:100分de名著「社会契約論」

こんにちは。
3人娘を育てている、ベンチャー企業のCTOです。


100分de名著 社会契約論

100分de名著シリーズの社会契約論の解説書を読みました。
哲学者の苫野一徳さんが書かれています。

私は、自分が生きている日本が取っている政治体制「民主主義」が、そもそも何なのか、しっかりと説明できる自信がありません。
日本の主権者である以上、多少は民主主義について学ぶ必要があると感じていました。

民主主義の考え方に多大な影響を与えたのが、ジャン=ジャック・ルソーが書いた「社会契約論」です。
民主主義を学ぶには、社会契約論について知ることが重要そうです。

しかし、いきなり社会契約論そのものを読むのはハードルが高そうです。
まずは、100分de名著シリーズの解説書から入門することとしました。

こちらの書籍を読んで得た学びを記載いたします。
誤った箇所があるかもしれませんが、個人の学びメモであるとして、ご容赦ください。

ジャン=ジャック・ルソー

社会契約論は、思想家ジャン=ジャック・ルソーによって書かれました。

現代の民主主義の考えは、この社会契約論から多大な影響を受けています。
人民主権、社会契約、一般意思、個人の自由などについてルソーは社会契約論の中で語っています。

ルソーの書いた社会契約論は、フランス革命に大きな影響を与えたとされます。
社会契約論はフランス絶対王政の時代に発表され、それまで不平等を感じていた民衆に対して、人民主権や民主主義の政治思想をもたらしました。

ルソーまでの流れ

「社会契約」という考えは、ルソーの前から存在していました。
その代表は「リヴァイアサン」の著者トマス・ホッブスと、「統治二論」の著者のジョン・ロックです。

ホッブスは、自己保存のために何でもしてもよいという「自然権」を、統治者に譲り渡すことで平和が実現できるといった旨のことを述べました。
そして、その政治権力に従う必要があると述べました。

ロックは、君主からの暴力に対して、人民は抵抗権を持つと述べました。
人間は神から生命、健康、自由、財産の所有権を与えられていると主張し、それを「自然権」と呼びました。
それらの所有権を守るために、相互の利益のために一部の「自然権」を政府に委ねるとしています。

ルソーは、人民主権について述べました。
これは「自分たちのことは自分たちで決める自由」と考えられます。
誰かに一方的に支配されるのではなく、すべての人の自由が対等に認められるために「社会契約」を結ぶ必要があるとしました。

どうすれば共同の力のすべてをもって、それぞれの成員の人格と財産を守り、保護できる結合の形式をみいだすことができるだろうか。
この結合において、各人はすべての人々と結びつきながら、しかも自分にしか服従せず、それ以前と同じように自由でありつづけることができなれけばならない。

社会契約論

社会契約論の中での重要な要素

社会契約論の中で、語られている重要な要素について記載いたします。

社会契約

ルソーは合意によって国家権威が成立しているといいます。
力が強いものによる支配があったとき、その支配に従っているのは義務ではなく、致し方なく服従するという合意であると。

国家は合意で成り立っているのであれば、どのような合意の仕方であれば、よりよい社会だと言えるでしょうか。

ルソーは「みんながみんなの中でより自由になるための合意」が成立する「社会契約」によって国家がつくられるべきである主張しました。

社会的自由

ルソーは自由を、「自然的自由」と「社会的自由」にわけて説明しています。

自己保存のために何でもしていいという自由を「自然的自由」と呼びます。
外部からの制約がない状態であり、他者からの侵害を受ける可能性が高い状態とも言えます。

か弱い人間が自分一人だけで自由な状態にあることは難しいです。
それゆえ人は、社会契約によって共同体を作り上げ、そこで保護をうけるようになりました。

その社会の中で享受できる自由を「社会的自由」と呼びます。
例えば法律によって財産が守られることは、社会的自由と言えます。

所有権

生命、身体、財産を守る権利を所有権と呼びます。

ロックは、所有権を神から与えられたものと言いました。
ルソーは、社会契約によって人は初めて所有権を手にしたと言います。

人間が社会契約によって獲得したもの、それは社会的な自由であり、彼が所有しているすべてのものにたいする所有権である。

社会契約論

自然的自由の状態であれば、所有物を守るのは自分自身でしかありません。

しかし、社会的自由の状態では、共同体によって所有物が守られます。
もし誰かが人の所有権を奪った場合、それは共同体によって罰せられます。

一般意思

ルソーは、自分の権利を共同体に譲渡する必要性を述べました。
この共同体は、統治者ではなく、「一般意思」を指しています。

「一般意思」とは、「みんなの意思を持ち寄って見出された、みんなの利益になる合意」といえるものです。

個人の利益を求める意思は「個別意思」と呼ばれます。
この個別意思をテーブルに出し合って、みんなの利益になる合意を見つけ出します。

単純に個別意思をすべて足し合わせたものは「全体意思」といいます。
この全体意思の中には、衝突する個別意思があります。
誰かの利益は誰かの不利益となります。

このような衝突する個別意思を全体意思から差引いて、みんなの利益になる合意を見つけ出す必要があります。
そのような合意を「一般意思」といいます。

一般意思は多数決とは根本的には異なります。
お互いの対話を重ね、合意を作り上げていく必要があります。

一般意思を具体的に実行することで、社会的自由が達成され、所有権が守られます。

一般意思は法によって実行されます。
法は一般意思を具現化したものだとルソーは言います。

その法をつくる権利を立法権といい、法をつくるものを立法者といいます。

立法者は、社会について多くのことを知っていないと、一般意思に沿った法律を作ることはできません。
立法者には一般意思を見出す高い能力が求められ、それと同時に、人々を支配しようと思わないような人でなければなりません。

そのような立法者を育成する教育が、民主主義社会において重要視されます。

政府

政府は、法を執行する機関です。

主権は政府にはありません。
政府はあくまでも、主権者の一般意思である法を執行するための機関であって、人民の公僕です。

政府には伝統的に以下の類型に分類されます。

  • 民主政(直接民主制と間接民主制がある)

  • 貴族政

  • 君主政

これらはあくまでも政府の形態です。

ルソーは人民主権を唱えています。
君主制において人民主権を実現するのは困難なため、ルソーは君主制を批判していますが、主権のありかと政治体制はわけて考える必要があります。

純粋な民主制といえる直接民主制を実現するには、国家のサイズや習慣などに対して様々な条件があります。
政府の体制は様々ありますが、国の状況に応じて、一般意思を最も忠実に実現できる政府の形を見つける必要があると言います。

参考情報

苫野さんは哲学入門書も書かれている他、voicyで哲学的な考え方についての解説もされています。
民主主義についての説明もされており、ルソーについても触れながら、わかりやすく解説してくださっています。

社会契約論はKindle Unlimitedで読むことができます。

また、コテンラジオにて民主主義シリーズ(全12回)が始まりました。
ルソーの部分については、コテンの方々が苫野さんと直接質疑応答をされながら理解を深めていたそうです。
(voicy fesにてそのような話がありました)

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