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雪山でMVを撮影した話③〜奇跡の!?撮影現場

前回は、準備について長々と書き留めました。
今回はいよいよ撮影関連のお話に入ります。といっても、撮影の前準備からのお話です。
まさか、こんな映像が撮れたとは…自分でもびっくりしました。


カメラマン確保とビデオコンテ作成

2023年に差し掛かろうかという時期になっていました。下見の時に聞いた話から、4月上旬の撮影がベストだということがわかったため、早めにカメラマンを確保することにしました。
今回は雪山という特別な場所での撮影なので、アウトドア撮影に慣れている現地のカメラマン、という路線で調べました。調べている内に、株式会社GOATさんの個人向け撮影プランというものが目に止まりました。

こちらのページに、MV撮影が可能なことや、料金の目安も書かれていたのでお問い合わせしました。撮影内容を説明したところ、金額も想定内だったためお願いすることに決めました。

そこで担当いただくカメラマンさんを紹介いただきました。この先めちゃめちゃお世話になることになる、合同会社LODE Filmの竹節友樹さん。
テレビ番組やCM、プロモーション映像など多岐に渡る映像を制作されており、企画から撮影、編集まで担当されています。


まずは竹節さんと打ち合わせを行い、自分のやりたいことを伝えました。前回の『鏡の泉』と同様に、ディレクションシートを作成して、ビジュアル・文章・口頭にて、なるべくイメージが伝わるよう説明しました。

前回と異なることといえば、絵コンテ動画(ビデオコンテ)を作ったことです。
単なる絵コンテではなく、動画形式にして、より自分のイメージが相手に伝わるようにしました。作り方は以下のような手順です。

※iPadとApple Pencil使用前提です。
1、お絵描きアプリ「ibisPaint」で、カットごとに絵コンテを描き、画像保存。
2、映像編集アプリ「PowerDirector」にオーディオと画像取り込み、カットをつなげて編集する。
その際、クロスフェードやパン等のエフェクトもかける。(任意だがイメージが湧きやすい)
3、動画を書き出す。

※上記二つのアプリは必須というわけではないですが、個人的にめっちゃ使いやすくておすすめです!感覚で操作できるのですぐに慣れました。

もともと画像として作成したバラデータなので、後々分解して使いやすいです。

今回作成したビデオコンテと実際の完成品を比較できる動画を作ったので、興味がある方はぜひご覧ください。(撮影中のメイキング映像も含まれています)

ビデオコンテを作るメリットはズバリ、自分が見てイメージしやすいということです。バラの各画像データは、それぞれのカットをどのカメラで撮るのか決めたり、当日の撮影スケジュールを組んでいただく材料にもなりました。
これは今回作って良かったものの一つでした。

バラ画像を元に竹節さんが進行表を作ってくださり、当日はそれを参照しつつ撮影を進めました。

各所への許可申請

もう一つ、撮影前にやらなければならないことがありました。
行政への申請です。今回はアルプス観光さんから教えていただき、以下の三箇所にお問合せしました。

・南信森林管理署
・駒ヶ根市教育委員会 社会教育課
・上伊那地域振興局 環境課

行政ってちょっと怖そう…と思っていましたが、三箇所ともとても親切に対応いただきました。申請の際には企画内容、絵コンテ動画、使用機材など、わかっている内容は全て記載した書類を提出しました。(どこまで詳しく書くべきかわからなかったのですが、念のためできるだけ詳しく記載しました)
ドローン撮影の事前申請は竹節さんにお願いしました。

あとはギリギリまでアルプス観光課のご担当の方とずーっとやりとりさせていただきました。疑問に思ったことは全て質問し、自然環境や他の観光客の方にご迷惑にならないようご指導いただきました。

※撮影にかかわらず、山では火事の原因となるもの(可能性として照明道具など)、掘削行為などは禁止されているそうです。撮影中もそのルールは遵守する必要があります。※

今回は昼間のみの撮影で、照明道具や特別な機材なども使わなかったため、審査も問題なく通りました。

最大の心配要素の一つ、天気

さて、本番が近づくにつれて「本当にできるのだろうか」「これでいいんだろうか」という不安とストレスがじわじわとかかってきました。その時期は仕事も忙しかったりして準備が間に合うかどうかという焦りもありましたが、とにかくやるしかないと信じて、毎日できることを少しずつこなしていました。

ストレスの原因の一つだったのが天気。こればかりは自分でどうにもならないなので、徹底的に調べるしかない。
色々調べ、信頼できそうな3〜4つの登山者向け天気予報サイトを二週間前くらいから見張っていました。
実際に見ていたのは以下のサイトです。

・ヤマテン
一時的に有料会員になって見張りました。専門用語はよくわかりませんが、雲がかかっているか、風量はどのくらいかなどがわかりました。精度が高いのだと、どこかのブログに書いてありました。

・お天気ナビゲーター
こちらも一時的に有料会員になりました。これが一番見やすかったです。日が近くなると、時間ごとの細かい天気と風速なども見れます。ただ、今回は5日前くらいに晴れていたものが急に曇りや雨予報に変わったことがあり、少し振り回されました。

・YamaYama GPV
無料です。これすごい。時間ごとの天気はもちろん、雲量(下層、中層、上層に分かれている)がグラフになって出てきます。見ていて普通に面白かったです。

さて、上のサイトたちの精度ですが、4日前くらいになるとどのサイトも大体同じような予報を出していました。ただし、晴れていたとしても風が強すぎると困るし、曇りで体感温度が低くなっても困る。専門家でもないので山の天気のことは分からないし、予想に対してヤキモキする時間はストレスでした。
最終的に、連続する2日間の晴天予報日があって、その前後の日は荒れ模様と出ていました。どちらにするかは勘頼りでしたが、1日目の方がより安全な予報に見えたためその日に決定しました。(後は、マジでこのストレスを一日でも早く軽減したかったというのもある)

奇跡が起きた!?撮影現場

そして当日を迎えました。前々日は夜遅くまで準備していて、また前日も安いホテル泊だったためあまり寝付けず、おまけに長野県はちょうど桜満開。花粉症が盛大にぶり返してしまいましたw
そんな中、バスターミナルで無事に竹節さん、アシスタントカメラマンさんと合流することができました。
体調が心配でしたが、ロープウェイで頂上まで登ると、案の定、気圧で身体が上から押されているような感覚になりました。
が、ここまできたらもうやるしかない。どうにでもなれ。事前に予約していたホテルの一室をお借りし、メイクと衣装の準備を始めました。

しかし、ここでトラブル発生。前日の悪天候のせいで雪の表面が凍り、千畳敷カールはまともに歩けない状態だったのです。本来であれば、私が準備をしている間にドローンで雪山の風景の撮影をしてもらうことになっていました。しかし、風が強すぎてドローンも飛ばせない。ホテルスタッフさんたちが口を揃えて「今日はやめた方が…」と言っていたそうです。
雲行きが非常に怪しい。
とにかくアイゼンがないと危険だということで、お土産売り場で残り一つだったアイゼンを購入し、部屋に戻りました。

メイクを再開したところ、外で風がびゅうびゅう吹いている音が聞こえていました。部屋の中は一人孤独です。

…おおっと??ここまで時間とお金と労力かけて準備したのに??天気に恵まれず撮影できませんでした、チャンチャン♪ になってしまうのか??

という考えが一瞬よぎりましたが、心の底では「いやいや、そんなはずはない。今日は撮影できる」と思い込んでいました。なぜなら私には、ここで撮影すると決めた時から頭にはっきり浮かんでいた絵があったからです。

こんなにはっきりと頭に浮かぶことが現実に起きないないはずがない。という根拠のない思い込みで準備を進めました。その間に徐々に体調が回復していきました。
一通り準備が終わり、様子を見に戻ったところ、朗報が舞い込みました。なんと、無事にドローンで撮影できたというのです!さらに気温が上がり、表面の氷が溶けて何とか歩ける状態になっていました。風も許容範囲。撮影はそのまま続行することになりました!!

外に出ると、気温は約6度で寒いものの、雲一つない快晴。風がやむと太陽の熱で暖かいと感じるくらいでした。ただ、風はやっぱり寒い…。

今回の撮影は二名体制で、メインのカメラでの撮影に加え、固定カメラでも同時撮影いただきました。
撮影は事前に想定していた絵コンテのカットごとの撮影のほか、曲全体を流しながら口パクしたり自由に動いたりした画を色々なバリエーションで撮影しました。
「後でこういうカットも必要になると思うから」と、想定していたよりもめっちゃたくさん撮っていただきました。その場で確認した時点でも、選択肢が増えたな〜という印象だったのですが、後に編集する時に本当のありがたみがわかることになります。確かに!これ要るわ!って感じ。むしろ事前に考えてたカットだけだと曲のスピード感に合っていなかったりしたので、たくさん撮ってもらえて本当によかったです。

事前の打ち合わせでは、絵コンテ動画のカット数が多いため、全て撮り切るには時間がタイトになると聞いていました。なので現場はピリピリするかな…と想像していたんですが、全然そんなことなく。
撮影はめっちゃ楽しかったです。理由は二つあって、一つは竹節さんが撮影と進行ディレクションを両方やってくださったことです。前回、私は被写体と進行ディレクションを両方自分でやってしまったため、時間内に撮り終えられるかどうかの緊張感と、自分がまともに映れているかどうかの心配で、終わった後の疲労感が尋常じゃなかったです。でも今回は完全に被写体に専念できたので、被写体に専念するってこんなに楽なのか!と思いました(笑)

もう一つは、カメラマンのお二人がとっても楽しくにこやかに進めてくださったことです。観光地で一人やばい格好しているというだけで、ただでさえ不安でしたが、防寒着を毎回持ってくださったり、イスや軽食を用意してくださったり(雪山ピクニックみたいになった)、自分では手が回らないところをたくさんフォローしていただきました。

大体笑いながらの撮影でした。

撮影中にちょっと大変だったことといえば、風の寒さと、衣装ズレでした。
この日は思ったより風がありましたが、太陽のおかげでなんとか乗り切れました。ただ、風のせいでショールなどの小物が結構ずれたのは想定外でした。

あとは顔まわりのウィッグのズレも心配でしたが、そこはコスプレイヤーさんも御用達の水のり完備で乗り切りました。(1500円くらいの顔のり専用のものも買ったけど100均の水のりのほうが断然強力だった)衣装やメイクの崩れ直しは、別で客観的に見てくれるヘアメイクさんがいたらより安心でしたが、今回は日程決めがギリギリだったことや予算が限られていたこともあり、断念しました。結果的には、衣装に関して致命的なトラブルがなかったので良かったです。
後は、もともと一回限りの衣装とは思っていましたが、アイゼンがドレスやマントの裾に何度も引っかかってズタズタになりました(笑)絵的には支障が出ていなくてよかったです。

そんな感じで4時間ちょっとで一通り撮り終えました。被写体入りのドローンのカットは少し太陽が翳ってきた時間帯に撮影したため、かなり映える感じの光加減で撮れました。

夕方頃。左上のスモークのようなものは、凍った地面が太陽に温められて蒸発(?)したもの。

撮影前は、3カットくらい撮れたらOK、とハードルを低くしていたため、こんなにしっかりしたカットが大量に撮れているのを見て、もうこれ以上の満足はないw という気分でした。

今回は天気、人など、何か一つ欠けても実現できませんでした。
特に、やはりカメラマンさんです!
どこの馬の骨かもわからないコンポーザーのぶっ飛んだ企画を手伝ってくださっただけでなく、真剣に取り組んでくださったのが有り難かったです。打ち合わせの時から、これ無理かな…と思ったことでも否定せずに、どうやったらできるかという視点で色々と提案してくださいました。その度に「あ、そうか、これできるんだ」と勇気が出ました。
それから、本当にお気遣いが素晴らしく…たくさん助けていただきました。竹節さんがいなければここまで満足できる作品はできませんでした!本当にありがとうございましたm(_ _)m!!

余談ですが、この日私はホテル千畳敷にそのまま一泊しました。天気予報通り翌日も晴れ、東京ではまず拝めない満天の星空とご来光を見ることできました。夕飯と朝食もとても美味しかったです。
今回アルプス観光課さんとホテルのスタッフさんにはめちゃくちゃお世話になりました!
色々とご親切に教えてくださったり、たくさんご協力いただきまして
本当にありがとうございましたm(_ _)m!!

千畳敷カールは素晴らしい場所なので、皆さんぜひ遊びに遊びに行ってみてください。(私は次は雪がない季節に行ってみたいです)

普段朝日なんて見たことないのに雪山で贅沢に拝めてしまった。

最後にもう一つ余談。撮影した日、人生初の雪焼けを体験しました。顔が赤いし痛いし目も真っ赤。しかも、白いアイライナーで書いた線がくっきりわかるくらいに焼けてる。雲一つない快晴で、レフ板もライトも使わなくていいくらい雪の照り返しがすごい日でした。
…いやでもさ、私チャコットのSPF50の下地塗ってたんやで?50って真夏の海水浴で塗るレベルやん?それでもこれ??じゃあ塗ってなかったら私の顔どうなってたん??雪、マジで半端ねェ…って思いました。

こうして無事に撮影は終了したのでした。
次回は編集などについて書こうと思います。

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