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【短編小説】うまくいけば届くはず


ある日頭からアンテナが生えてきた。


貴重な貴重なアンテナが折れないように、大事に大事に育てた。


これはきっとテレパシーが送れるものなんだ。


そう思って一生懸命念じてみた。



「僕が言いたいこと伝わった?」

「ちっとも」


お母さんには届かなかった。



「えい、届いた?」


「全然」



友達にも届かなかった。


孤立した。言いたいことを言わずに察しろと言ってくるなんて陰口を言われていたが、テレパシーを本当に使えない彼にそれが届くわけがなかった。



そもそもこのアンテナは届けるものなのか受け取るものなのかもわからない。



もう一度念じてみた。


「届いた?」

「わからないけど、必死なあなたを愛おしく思ったよ」


恋人はそう言った。

そして驚いた。


テレパシーを使わずに直接伝えることがこんなにも心に響くものなのかと感動した。


「僕も君が愛おしいよ」


彼は自分の言葉で伝えることにした。


テレパシーほど思ってることがちゃんと伝わるか分からないけど。



ちゃんと言葉で伝えよう、そう思えた。

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