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これは騙された...!?映画好きにこそ見てほしいサスペンス作品【映画『マスター・マギー』】


映画『マスター・マギー』は天才演技コーチと無名俳優が織りなすシリアスショート作品です。

無名俳優の大胆な行動に違和感を抱きつつも、ラストにはあれ?と思わずもう一度はじめから観たくなる展開に、あなたも心を奪われてしまうはず…。

今回は作品の至る所に散りばめられた細かな伏線、そして演技コーチ・マギーのモデルとなった人物についてご紹介します!

ここから先はネタバレを含みますので、作品をご覧になってからお読みいただけると嬉しいです!

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〈タイトル〉『マスター・マギー』(原題: Master Maggie)
〈監督〉Matthew Bonifacio
〈作品時間〉21分32秒
〈製作国〉アメリカ
〈あらすじ〉
ハリウッド俳優達を指導する伝説の演技コーチ、マギーの元に、無名の俳優がやってくる。大胆にも彼女の仕事場に乗り込み、演技指導をお願いするも、マギーが予想しないまさかの展開が待ち構えていた

SAMANSA


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◎ 散りばめられた伏線…あなたは全てわかる?

ハリウッドきっての演技コーチ、マギーの元に突然訪れた無名の俳優、グラハム。

『法と秩序』というドラマ作品のオーディションのために演技レッスンを行なってほしいと懇願し、拙い実力ながらにレッスンを受ける彼。

そんな彼は本作のラストで、実は妻を殺害した罪で公訴された被告人であったことがわかりました。

ラストに至るまでの様々な伏線、あなたは気づきましたか?

清掃員の言葉

作品冒頭で、清掃員がグラハムを見た際に放った、
「どこかで見たことがある」という言葉。

一見彼が無名ながらに俳優としてのキャリアがあるように示されていますが、それは殺人事件の容疑者としてニュースや新聞で報道されていたから、というものでした。

グラハムが無罪となったことを表す記事


『法と秩序』

『法と秩序』のオーディション準備としてマギーを訪れたグラハム。

『ロー&オーダー(法と秩序)』は実際にアメリカで1990年から放送されていた刑事・法廷ドラマです。

“Law & Order”

警察と検察によって犯人の逮捕から裁判における陪審員の判決までを描いたドラマで、世界中で多くの人気を博している作品です。

ちなみにこのドラマでは、明らかに殺人を犯している被告人でも無罪となってしまう回がいくつかあるようで、この作品を知っている方は『マスター・マギー』の展開も予測できたかも…!?

本人役で登場する俳優たち

上:ケナン・トンプソン
下:ブライアン・デネヒー

本作では、ブライアン・デネヒー、ケナン・トンプソンという実際の有名俳優を本人役として登場させています。

本来であれば演技コーチ、オーディションなど、なかなか表舞台では触れられないプライベートな世界を描くにあたって、
よく知られている俳優たちを登場させることで、むしろグラハムの無名俳優としての肩書きとその怪しさを際立たせているように感じられます。

これらの点から、
「オーディション」→「裁判」
「演じる役」→「被告人」
「役を勝ち取ること」→「無罪となること」

として描かれていたのです。

◎ マギーのモデルとは

本作を製作する10年前から、実際に演技のプライベートレッスンでコーチを務めていたというボニファシオ監督。

実は登場人物「マギー」にもモデルとなる人物がいると公言しています。

彼女の名前はステラ・アドラー

Wikipediaより


1901年にニューヨークで生まれ、幼少期から舞台に出演。
ロシアの名演出家、スタニスラフスキーの元で教えを受け、
1930年代以降、アメリカで演技コーチとして活動し、20世紀における最も偉大な演技指導者として有名になった彼女。

『欲望という電車』や『ゴッド・ファーザー』で主演を務め、20世紀最も影響力のある俳優の1人として挙げられるマーロン・ブランドもまた、彼女から演技指導を受けた俳優であり、彼女をアメリカ映画界に旋風を巻き起こした人物だと語っています。

マギーは劇中でスタニスラフスキーの『俳優修行』についても語っており、
「“感情の記憶”や“感覚の記憶”演技に必要なものが全て書いてある
として、「状況を想像することの大切さ」を唱えたアドラーの考え方をそのまま引き継いでいます。


◎ 突然の激昂はこういうことだった!

演技レッスンの終盤、亡くなった妻テッサへの思いをグラハムは突然違う!と激昂します。

この場面、彼女はなぜ満足げな表情を浮かべたのでしょうか?
そしてなぜ彼は叫ぶこととなったのでしょうか?

実はここには2人の噛み合わない思いが存在します。



マギーは、グラハムが役として、殺された妻を未だに愛していることを観客に知らせる必要があると指導します。


一方のグラハムは、殺した妻をまるで愛しているかのように陪審員に伝える必要があるのです。


一見似ているようで全く違うこの目的、

そして「イメージや人物、場所といったあなたの感情的な記憶は、あなたを過去の感情に導いてくれる」とマギーが言ったように、

グラハムは妻を殺した感情と感覚を思い出したことで、爆発したかのように怒鳴ってしまったのでした。

マギーは演技に没頭したグラハムにご満悦の様子。


演技は人に感動やを衝動を与えるだけでなく、時に人を騙す手段として有効です。

マギーはグラハムに人を騙す手段を与え、そして自分自身までも騙されてしまったのでした。

そしてまたこれを見ている私たちも、全ては彼らの演技によって騙されていることを自覚せざるを得ません。


映画『マスター・マギー』はSAMANSAにて公開中です!
是非もう一度ご覧ください!

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