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ロシアのお正月料理3/3

3回目は「毛皮を着たニシン(Салат "Селёдка под шубой"=サラート「セリョートカ・パド・シューバイ」)」という名のサラダ。
ロシアで最も有名で人気のあるサラダのひとつ。通常、新年のお祝いに前菜として食卓に上がる。もちろん、他の祝祭日にも登場する。
サラダのレシピに厳密なルールはないが、ほぼ同じ材料が使われる。若干のバリエーションがあり、珍しい食材や他の盛り付け方をする人もいる。
伝統的なやり方では、サラダは層状(レイヤー状)のケーキのように盛り付ける。最近では、ロールケーキ型も広く普及している。
見た目の特徴としては、赤またはピンクの表面で覆われているが、これはビーツを使っているためである。

基本の材料:
・塩漬けのニシン
・茹でたビーツ
・茹でたじゃがいも
・茹でた人参
・マヨネーズ

追加の材料(あればなお良い)
・玉ねぎ
・ゆで卵
・りんご
・塩こしょう(お好みで)

調理時のポイント
・このサラダは「基本の材料」があれば十分である。ただ、変わり種を試してみたい場合は、塩漬けのマッシュルーム、チーズ、ザクロの粒、きゅうりのピクルスなどを加えても良い。下ごしらえした材料はほぼすべて粗みじん切りか、細かいみじん切りにする。ただし、魚だけは角切りにするか、店で小口切りのものを購入する(この場合はそのまま使う)。
・具材は材料ごとに層状にする。層の順序はどのレシピでもほぼ同じで、一番上の層には必ずビーツを敷く。各層ごとにマヨネーズを塗るレシピもあれば、特定の層だけにマヨネーズを塗るレシピもある。このサラダは、塩味、甘味、中性的な味の食材を組み合わせる。
・魚は、塩漬けのニシンを使うことが多いが、サーモンを使うこともある。魚の成分がサラダに塩味を加える。
・玉ねぎを使う場合は、サイコロ状に切るか、おろし金ですりおろす。魚の層の上に乗せるか混ぜ合わせる。
・ビーツは必ず最上層に置き、華やかさを演出する。上にマヨネーズを塗ることも多く、おしゃれなピンク色になる。ビーツはサラダに甘味を加える。
・ビーツと人参の甘味を中和させるため、りんごを使って少し酸味を足しても良い。

「毛皮を着たニシン」誕生の背景
このサラダがソ連で広まったのは、マヨネーズが大量生産されるようになった1960~1970年頃である。
あまり知られていないが、1918年、ロシア帝国からソビエト連邦へと変わる革命的な感情を背景に、旅館や食堂を経営するあるオーナーによって発案されたという伝説がある(ただし、この起源説に確たる証拠はない)。この伝説によると、サラダの名前はもともと「Ш.У.Б.А(シューバ)」という略語で、「Шовинизму и Упадку — Бойкот и Анафема(排外主義と退廃主義—ボイコットと嫌悪感、の意)」という典型的な社会主義のスローガンとして解釈された。
さらに、使う食材には以下のような意味を持たせていると言われる;
ニシンはプロレタリア(=資本主義社会における「賃金労働者」)階級の象徴、
じゃがいもは小作農民の象徴、
ビーツの赤色は血とボリシェヴィキ(=ロシア社会民主労働党の多数派思想、つまり労働者や兵士の集団、広義ではプロレタリアート)の旗の赤を象徴していた。
また他に、ロシアや東欧でマヨネーズを使わない似た食材のサラダがあり、それが変化したという説や、脂肪の多いニシンとマヨネーズを組み合わせることで摂取カロリーを上げ、毛皮のコートのように体を温め(上記の略語、Шубо(シューバ)にはロシア語で「毛皮のコート」の意味がある)、ロシアの厳しい冬を乗り切るのに最適な冬サラダという説もある。
 
<レシピ>
実演レシピは以下を参照ください。
https://www.youtube.com/watch?v=vMDCV2MpS38
 
ロシアの料理サイトにもレシピ紹介ページがある。
https://gotovim-doma.ru/recipe/37-seld-pod-shuboi

※このサイトのレシピ複製版は以下をご参照ください。
材料
・塩漬けニシン(フィレ)、200g
・ビーツ、2個
・じゃがいも、2~3個
・人参、1~2本
・玉ねぎ、1/2個
・ゆで卵、2~3個
・調味用の塩こしょう、マヨネーズ

🍳下ごしらえ
・じゃがいも、ビーツ、人参を柔らかくなるまで茹で、冷まして皮をむく。
※野菜は茹でる代わりに、オーブンで1~1時間半ほど焼いても良い。
・野菜は粗めにすり下ろして、別々のボウルに入れておく。
・ゆで卵は別のボウルにすりおろす。
・生のニシンを使う場合は、魚の内臓を取り除くなど下処理をし、小骨は取り除いてフィレ(切り身)にする。その後、フィレはサイコロ状に切る。
※減塩のニシンの切り身を店で買うと便利。
・玉ねぎはみじん切りにする(ミキサーを使っても良いが、細かくなり過ぎないよう注意する)。
 
🍳作り方
下ごしらえした材料を深皿(または平皿)に焼き型を使って層状に重ねていく。各層に塩こしょうを振って味を調え、マヨネーズを塗る。
🥗1層目:じゃがいも(塩こしょう、マヨネーズ)
🥗2層目:ニシン
🥗3層目:玉ねぎ(こしょう)
🥗4層目:人参(塩こしょう、マヨネーズ)
🥗5層目:ゆで卵(塩こしょう、マヨネーズ)
🥗6層目:ビーツ(塩、マヨネーズ)
 
・ビーツの上にマヨネーズを塗る。飾りにすりおろしたゆで卵を散らしても良い。
・完成したらラップをかけ、冷蔵庫で一晩寝かせる。
 
🍳味のバリエーション
・りんごを加えて酸味を足すと、よりおいしくなる(その場合、りんごを皮付きのまま粗めにすりおろし、玉ねぎ層の上もしくはビーツ層の下に敷く。軽くマヨネーズを塗る)。
・このサラダを美味しくするために、味の決め手であるマヨネーズは絶対に欠かせない。マヨネーズを購入する際は値段やカロリーではなく、自分の好みに合った味のものを選ぶ。最終手段としては、ジューシーさを出すために、各層に(マヨネーズと一緒に、またはマヨネーズの代わりに)植物油をたらしても良い。
 
出来上がり!

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