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お金の流れで見る戦国時代

先日読了しました。

経済面から考察する戦国時代というだいぶ一般的な戦国時代に関する本とは系統の違う本です。結論から書くと本当に面白かったです。

この本の著者の大村大次郎という方は、元国税調査官の方らしく、税金やお金に関する本をたくさん書かれています。

ですが、専門家かと思うくらい、戦国時代の詳細を把握されていて非常に読みやすい文章とまた興味深いトピックで全く飽きることなく最後まで一気に読んでしまいました。

織田信長についての記載が主な印象でしたが、もちろん豊臣秀吉、徳川家康、武田信玄や上杉謙信、毛利元就、長宗我部元親、島津家についても経済やお金の観点からしっかり語られていて非常に勉強になりました。

桶狭間で織田信長が勝利したのは奇襲のせいではなかった。実は豊富な資金力で打ち勝った。や、武田信玄は実は非常に貧乏だったなど、一応自称戦国ファンの私が全く知らない内容が多く書かれていました。

また宗教と貿易、宗教とお金の問題。また歴史で語られる大事件や戰はほぼ網羅されていました。本能寺の変に至る明智光秀の謀反の理由を経済で読み解いていたり、朝鮮出兵や関ヶ原も私の認識が180度覆ってしまう一冊でした。

結局のところお金の使い方というのが国のいく末を決めるということ。これは現代においても全く変わらないところなのだと思います。この時代から皆お金に苦労し、お金に助けられ、お金をうまく使って成功したり、うまく使えず失敗したりしていたということがよくわかる一冊でした。

印象的だったフレーズは本当にたくさんあるのですが、中でも日本人が宗教に傾倒していない理由については本当に納得してしまいました。

本書にはこう書かれていました。

 「日本人は世界の人々に比べて、宗教に依存する度合いが非常に低い。世界の多くの地域で、宗教施設に日常的に通う文化があり、生活の中に宗教がしっかり根ざしている。だが、日本人には日常的に教会や寺社に通うような熱心な宗教徒は、あまりいない。  日本人の生活に、なぜ宗教が根ざしていないかというと、信長が仏教勢力を徹底的に弱め、秀吉、家康がキリスト教を禁教にしたことが最大の要因だといえる。」

織田信長の比叡山の焼き討ち、また豊臣秀吉と徳川家康のキリスト教の禁教が今の日本人の宗教観の根幹にあるということは私は認識していなかったので、ハッとしました。

今私はタイに住んでこれを書いていますが、タイの人々の中に仏教が完全に根付いています。ほぼ全員がお寺に行って祈りを捧げれば自分は救われると思っていますが、私は何度お寺に通ってもその感覚には至らないと感じてます。おそらく本能的に感じているという感覚です。

もちろん私は創業経営者で自分を強く信じすぎているようなところがある(精神的に宗教に頼りたいと思うことがまずない)ので余計にそういう傾向が強いところはあるとは思っていますが、それにしても海外生活を何度かしていて比べた時に宗教というものは全く身近にないと感じていました。タイでは特にそれを感じていました。

それは、この3人のおかげ(せい)なのだということを知って本当に興奮しました。

織田信長が仏教の力を弱め比叡山を焼き討ちしたこと、また豊臣秀吉、徳川家康がキリスト教を禁教にしたことにはしっかりとした理由があります。それについても本書にはしっかり書かれています。しかもまたそこにはお金が絡んでいるのです。

宗教とお金、宗教と権力という問題については最近でも話題になっていましたが、実は400年以上前から全く一緒なのだなと思いました。

比叡山の焼き討ちや、徳川家康の長男に切腹を命じたりと、冷酷なイメージが強くある織田信長ですが、経済政策の観点から見ると非常に優秀なリーダーでで、また領民に対する税制は非常に優遇していて、民を大切にしていました。

また楽市楽座を作って経済を活性化させたりと戦のみではなく、政治家としての器量はこの時代に群を抜いていたようです。

本書の著者が織田信長のファンということも読んでいてよく分かりましたが、私も信長についての印象はだいぶ変わって以前よりもかなり好印象を持たざるを得なくなりました。

また経営者の方には総合的にみて参考になることがたくさんあると思うので、非常におすすめの一冊です。

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