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「正解がわかると、考えなくなるんです」という言葉に唸る

突如として、愛してやまない職場をさることになった。円満転職なのだが、私は代表と一対一で話す機会をいただき、そして泣いた。「この〇〇(子育て支援施設)が大好きなんです」と。

なんせコロナ禍から始まったいきなりの施設長。引き継ぎはあったものの、コロナ禍で中々増えない利用者獲得に奔走し、関係を作り、環境を整え(コロナでコロコロと変わる「普通」に対応し)、スタッフと切磋琢磨し、作り上げていった場所。

兄弟が生まれて、見せに来てくれる方、大きくなって顔見せてくれる子、お母さんたちがお互いに繋がり、キラキラ輝く姿。

大好きな場所を去るのだ。

そして、また同じような施設を引き継ぎ、新しいことを取り入れながら、1から作り上げなければいけない。

そんな中で、ある感情がむくむくと湧き上がってくるのを、感じていた。
新しい施設にも、今の施設の後任に対しても、ある考えが頭をよぎる。

「マニュアルを作りたい」

例えば、新規さん対応のとき、こういう言い方をすれば、また行きたくなる、とか、どのタイミングで他の母とつなげるか、そのためにどんな質問をしているか。常連の母達にいかに馴染めるようにするか。
単に施設紹介と雑談をしてるように見せて、どんなことを裏で考えているか。

わたしが数年かけて培ってきたノウハウを全て伝えたいっ!!
という願望。欲望。

〜〜〜〜〜〜〜

先日、あるシンポジウムに参加した。
学校がテーマのシンポジウムだったが、面白すぎて、書籍にしたら買ってしまうだろうという程だった。
その中で、井本陽久先生(NHKのプロフェッショナルにも出た数学教師の方)が、話していた中に、
「正解を教わると、考えなくなる」と聞いた。
正解のやり方を使って、答えを出そうとする。◯か✕かつけられる。そんな教育で子どもたちは、自分らしくあるほど、✕をつけられてしまうのだ。という話だったと思う。学べば学ぶほど、考えなくなる。

なるほど!!!たしかにー!!!
唸る。

だからこそ、考える授業をし、子どもたちが輝き出すことを語る井本先生に圧倒された。

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大人にとっても同じだ。
マニュアルができた途端、それに沿うか沿わないか、◯か☓か、そういう話になるしゃないか。
だめだ。
私が数年かけて、失敗を重ねながら培ってきたものは、そこに相手がいて、その時々で違ってて、その人のためになにができるか必死に考えてきた結果だ。
後任や、新人さんのそのプロセスを奪ってはいけないし、私と新しい仲間や後任は、私と違うのだから、同じプロセスをたどるとも限らない。
その方のやり方に、私が学ぶこともたくさんあるだろう。

一つ一つ、面倒だけど、考えながらまた作っていかなきゃならない。
私の自己顕示欲、欲望など、屁でもないのだ。

考え続ける。
なにが正解か、ではなくて、
なにがあのとき、その人にとって正解だったのか。
なにがもっとできたのか。

もっと考え続ける。
真摯に、子どもと保護者のために、なにができるか考え続ける姿勢こそ、
仲間に伝えるべきことで、一緒に何度も確認していくことなのかもしれない。


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