さとうマドカ

親父の仕事

彼の仕事は私にとって実に興味深い物だった。
彼は
どこの町にも必ず有る仕事をし
どこの町でも大抵は一人で過ごし
どこの町でも必要とされていた。

始めて行くと必ず寄る町の仕事。
私も例に漏れず彼の仕事の世話になった。

そんな彼に別れの挨拶をする際に仕事について聞いてみた。

「私は今日も、いつもと変わらない朝を迎える。

いつもと変わらない朝
いつもと変わらない準備。

今日も沢山の客がウチに来

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小さな背中

「あたしは、この町が嫌いだった・・・」
小さな鞄とトランクケースを引きずりながら、ナオはぶつぶつと独り言を言いながら駅からの道を歩いていた。

歩きながら、ふと目に映る小学校に懐かしさを感じた。
「ヨッコ元気かな・・・そういえば、あの子、結婚したんだっけ・・・」

幼馴染だったヨッコ。
いつも自分を、からかってばかりだったヨウジ。
泣いてばかりだったヒロ。

次々と幼かった頃の思い出が

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こっちからみた「王様の耳はロバの耳」

これは昔々のお話

町から随分と離れ、馬車がごく稀に通る道の脇、草むらの中に“ソレはあった”

「どうも、皆さんこんにちは。
いきなりですが自己紹介をさせて頂きます。
いやぁ別に、しなくても良いんですけどね。
しばらく私の愚痴を聞いて頂く事になるかと思いましてね。
自己紹介ぐらいは、した方が良いんじゃないかと考えまして…。

いや、でもやっぱり無くて良いかな?

先ず最初に語るべき

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こっちからみた「赤ずきん」

これは昔々のお話。

「たまげたねぇ!俺は自分の目を疑ったよ」

少々おお振りな動きを交えて彼は語る。

彼の後ろには大きめの暖炉。
見るからに新しく建て直した家の中には、昔から使っていたであろう古い木製のテーブルと料理の皿。
これでもかと壁に掛けられた写真には彼と"彼の獲った獲物"が飾られている。

「アンタもほどほどにしといておくれよ」
「うるせぇ!テメぇは黙ってろ!」
彼の奥

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こっちからみた「シンデレラ」

これは昔々のお話

彼女は機会を待っていた。

魔女として生き、魔女として暮らす。
それは、普通に暮らす人々の何倍もの苦役を強いる物だった。

魔女として生きる為に彼女がした最初の事。
それは契約。

悪魔と呼ばれる物達との契約を結ぶ為に彼女は若さと家族との縁を差し出した。

見た目には八十を超える老婆に見える彼女。
だが実際には三十にも届かない女性である。

そうまでして

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こっちからみた「アリとキリギリス」

これは昔々のお話。

「僕はバイオリンを弾くのが好きだった」
静かに降る雪の中、耳の側でエリーゼの為にが響く。

憶えている事は少ない。
でも、短くても幸せな人生だったと思っている。

一番小さな頃の記憶は、日の光を浴びた瞬間。
「なんて明るいんだ…」

兄弟は自分以外には居ない。
いや、正確には居たのかもしれない。
ただ、自分と良く似た姿に、何故か怒りとも言える感情が溢れてくる。

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