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親子で話し合い

 今から10年ほど前、私たちがドイツに暮らしており子供が小学生だった時に、子供の同級生の家族(母親が日本人、父親がドイツ人)から聞いた話で「さすがだな」と思ったことがあります。そのご家族は4人家族で、小学校中学年の年子の二人の娘さんがいました。お小遣いや子供が寝る時間など、しつけに関する話をしていた時でした。

 ドイツ人の父親が、「ファミリーカンファレンスしてる?」と聞いてきたのです。え、なにそれ?と私たち夫婦は顔を見合わせましたが、よくよく聞くと家族会議とのことでした。「毎日してるよ」と答えましたが、話をしていくうちに食事中の単なる会話ではなく、本当に形式的な話し合いによって物事を解決する会議形式であることがわかりました。

 そのご家庭では月に何回か、家族4人で会議を開き、その月の家族の収入や支出を子供たちと共有し、毎日の食事に何を食べたらいいのか、何を買ったらいいのかというお金の使い方を決めます。子供たちのお小遣いについても必要な収支を計算して、話し合いよって決めているとのことでした。また、門限などの生活習慣についても話し合っているようでした。

 そのドイツ人の父親は典型的な旧ドイツ人の気質でした。「犬と子供はドイツ人にしつけさせろ」と言う言葉があるぐらい、二人の女の子は外交的でおてんばだったかかわらず、よくしつけられていました。遊びに行くと、子供たちがいつも怒鳴られていたのを覚えています。母親は日本人なので控えめで、父親の様子を見て「しょうがないね」と言うような感じにいつもにこにこしているタイプでした。そんなご家庭にも関わらず、大人が一方的に物事を決めるわけでもなく、子供を一人の人間として大人と同様に扱い、発言権を持たせているということに考えさせられたのです。

 大人と子供の関係は絶対です。大人には家庭を守る義務もありますし、そのために物事を優先的に決める権利もあります。しかし子育てのゴールが子供の自立にあるのであれば、早くから権利を委譲していくべきということを、ドイツ人は伝統的に気がついていたのだと思います。

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