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寅さんになりたい。

8
過去の恋愛遍歴を綴った、短編エッセイ集。
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記事一覧

寅さんになりたい。その8

運命という言葉を好きか嫌いか?
今の僕は嫌いである。

多分、どんな事も偶然起こる。意味付けするのは人間だ。だって、どんな出来事も最初から決まってるなんて嫌なのだ。
だけど、昔の僕は運命という言葉が大好きだった。どんな出来事も、運命に結びつけるのが得意だった。

初恋の女の子Yさんを好きになったのも、運命なんだ、と思っていた。
僕が幼少の頃、本当のお姉さんのように慕っていた女性とYさんは、実は下の

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寅さんになりたい。その7

生まれて初めてコンサートに行った夜。
その夜は不思議な夜だった。
あれは幻だったのだろうか?
今でも時々そう思う。

あれは働き始めた頃、まだ、18、9才ぐらいのときだった。

初めてのコンサートに行こうと決めたのは、コンサート当日のお昼だった。
友達から今日の夜、RCサクセションのコンサートがあると聞いた時だった。
何故その時、初めてのコンサートにそれも1人で行こうと思ったのか、今でも分からない

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寅さんになりたい。その6

雨が小降りになった帰り道、初恋の彼女とすれ違う。
駅前のロータリーの歩道を、自転車を押して彼女は歩いていた。
駅から出てきた僕の横を通り過ぎる時、僕に気づいて話しかける。
もう傘使わんから貸したるわ、と、傘のない僕に言うと、自転車に乗って走り出した。
黒色に黄色いヒマワリの花模様が散りばめられた傘だった。
その傘の模様を、何故か今でも覚えてる。

高校三年生の梅雨頃だったか、僕は初恋の女の子Yさん

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寅さんになりたい。その5

高校時代、タイソンというあだ名で呼ばれていた。
髪質がくせ毛で、親にくせ毛であることの証明書を学校側に書いてもらっていた。そんないきさつもあり、手入れが面倒くさかったこともあり、短めのスポーツ刈りにしていた。
短いチリチリ頭。そう、当時人気だったボクシングのヘビー級王者、マイクタイソンの髪型みたいだった。
しかも、頭の形や小さな目も似ていて、おまけに背も低いので、自分でもタイソンの雰囲気あるなぁ、

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寅さんになりたい。その4

中学校三年生になって、僕の状況は好転する。

僕の初恋の相手Yさんと同じクラスになっただけでなく、男友達やクラスメイトにも恵まれて、僕の学生生活で一番楽しい一年を過ごすこととなった。

Yさんとは、結局ただの仲の良いクラスメイトだったけれど、クラスみんな仲が良くて、学校に行くのが楽しかった。

中学校も最終学年であり、みんなそれぞれ、自分の進む道を模索しながら学生生活を送っていたように思う。
かく

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寅さんになりたい。その3

自分の周りの状況が変わると、すぐには上手く馴染めず、殻に閉じこもりがちになる癖が僕にはある。
それは今でも変わらない。

中学生になった僕は、その例にもれず、暗い中学校生活を送ってた。

仲のいい男友達と、その友達の家で、当時流行ってたファミコンのゲームばかりやっていた。
友達の1人が、お姉さんの影響でか、最新の邦楽ロックやポップスに詳しく、ゲームをやりながら流行りの歌をよく聴いていた。
そんなな

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寅さんになりたい。その2

小学校の頃は、特定の好きな子はいなかったように思う。
クラスの可愛い子とかを見て、かわいいなぁ、と普通に思っていたけれど、特に好きと言いたくなるほどでもなかった。

クラスでは、僕はおとなしいグループだったので、そんなに目立つこともなかった。
話しかけてくれる女子も、やはりおとなしい女子が多く、当時からひねくれ者の僕は、しょせん僕にはかわいい女子は高嶺の花、と、決め込んでいた。

そんな僕だったが

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寅さんになりたい。その1

幼少の頃、僕らの住んでいたアパートの隣に、僕のお姉さんがいた。
お姉さんと言っても、本当に血が繋がってる訳じゃなく、幼い僕をとても可愛がってくれた、隣の家のお姉さん。

ちょっとぽちゃりで、優しくて面倒見が良くて、僕の恋愛観に、きっと多大な影響を与えた人。

今でこそ惚れっぽくて、色んなタイプの人を良いなぁ、と思うようになったけど、僕の恋愛は、もう会うこともない彼女の後ろ姿を追うようなものだったか

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