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[小児科医ママが解説] SIDS【Vol.6】添い寝はダメでも「同じ部屋で寝る」のは、効果あり?!

乳幼児突然死症候群(SIDS)の対策として、
添い寝は基本的に推奨されないこと。
その理由・わかっていること。

これらについて、前回は書きました。

では、親子はどこで寝るのがベストなのか。

今回はそんなことについて、書いていきます。
SIDS連載すべてにおいて、共通の参考文献はこちら。

●AAP(米国小児科学会)
"SIDS and Other Sleep-Related Infant Deaths: Updated 2016 Recommendations for a Safe Infant Sleeping Environment"
(Pediatrics. 2016 Nov;138(5). )

●UptoDate
"Sudden infant death syndrome: risk factors and risk reduction strategies"
https://www.uptodate.com/contents/search

●厚生労働省
「乳幼児突然死症候群(SIDS)について」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/sids.html


添い寝はしない・でも同じ部屋で寝る。「同室寝」がベスト。


赤ちゃんと親はどこで寝るのがベストなわけ?という答えは、「同室寝」です。

英語では、いわゆる添い寝が”bed-sharing”というのと比較して、”room-sharing”という言い方をしています。

実際に(bed-sharing=添い寝)ではなく「”room-sharing”=同室寝」をすることで、SIDSを50%減少させているのではないか、という報告があります。
(①BMJ. 1999;319(7223):1457–1461 ②Lancet. 2004;363(9404):185–191 ③J Pediatr. 2005;147(1):32–37 など)

じゃあ、いつまで親子一緒の部屋で寝たら、SIDSの対策になるんですか?というのは、絶対的なエビデンス・見解はありません。
(Pediatrics. 2017;140(1) Epub 2017 Jun 5.)

SIDSの定義上は「1歳未満」となっていますが、実際は数少ないですが、1歳以上でも、SIDSのように「明らかな原因が突き止められない突然死」は起こっているのです。

・・・とはいえ、そんなこと言ってたらキリがないので、

「できれば1歳まで。少なくとも生後6ヶ月未満まで」
同じ部屋で寝ることで、SIDSのリスクを下げうるだろう

というのが米国小児科学会の見解です。
(Pediatrics. 2016 Nov;138(5).)

実はこれ、結構、奥深いです。

もし生後6ヶ月くらいまで、親子一緒の部屋で寝ていたら。
(個人差はありますが)その後1歳にかけて、人見知りや母子分離などがでてくる時期です。

ママやパパが同じ「部屋」にはいるけど、同じ「ベッド」にはいない。
この状況で、すんなりとすやすや寝てくれるお子さんが、何%くらいいるのかな、というのは個人的に気になっています。

「同じベッドにいないと寝たくない!」という自我が出てきうる発達過程の時期において、「部屋は同じだけど、寝床は分ける」を徹底するのは、実はなかなかむずかしいんじゃないかと思っています。

実際に、睡眠コンサルタントへの相談としても、このようなお悩みはよく聞かれます。ほんとに育児って一筋縄じゃいかないですよね。

前回の記事ともあわせると・・・

●添い寝「単独」がSIDSにおよぼす影響は、意外とハッキリわからない点も多い。
●でもたしかに、添い寝することで、大人用の寝具など、ほかのSIDSのリスクも合併しやすくなる。
●というわけで、添い寝は推奨できない。生後6ヶ月までは少なくとも「同室寝」が良い。

という点がポイントですね。


「添い寝」と合わさると、SIDSのリスクが上がるもの→喫煙・飲酒。etc


とはいえ。

実際は、ワンオペ育児、他に兄弟がいる、家に部屋がいくつあるか。
添い寝できるか、同室寝できるか。これは家族・家庭環境におおきくよりますよね。

そんなときは、すくなくとも、「添い寝とあわさると、さらにSIDSのリスクを高めてしまう因子」をなるべく排除してあげてください。

もう一度、掲載しておきます。

【「添い寝」とのコンビで、SIDSのリスクをさらに高める要因たち】

●(片親あるいは両親の)喫煙 ※ベッドで吸っていなくてもリスク!
●妊娠中のお母さんの喫煙
●両親の飲酒
●子ども用寝具じゃない場所(とくに柔らかい・狭い場所)
枕やブランケットなどがある
複数の家族(とくに大人)との添い寝
両親じゃない人との添い寝
生後4ヶ月未満


・・・とはいえ、生後4ヶ月未満とかは、もはやどうしようもないですよね。授乳も頻回な時期だし、添い乳・添い寝するな!というのはむずかしいことも多いですが。

それならなおさら、枕やブランケットを使わない、ソファやリクライニングチェアでの授乳・寝落ちを防ぐ、といった対策を強化しましょう。

米国小児科学会も鬼ではなくて

夜中に授乳してたら、寝落ちしちゃうときもあるよね。
そんなときは、せめて、ソファやアームチェアじゃないところでやって。

で、もし寝落ちしちゃってたら、次に保護者がおきたら、すぐに赤ちゃんは子ども用の寝具に戻してあげて。

と書いてくれています。(Pediatrics. 2016 Nov;138(5).)


ちなみに「大人用の寝具には寝かせない。でも同じ部屋で、すぐ近くに親がいる。」という同室寝の状況を再現する一つのアイテムに、サイドスリーパー(大人のベッドのすぐ横に置く、コの字型の、子ども用のベッド)やコースリーパー(小さい子ども用のねんねサークル)があります。

が、「サイドスリーパー・コースリーパーがSIDSのリスクを低下させるかどうかは、エビデンスがない」というのが現状です。
(Pediatrics. 2016;138(5))

もうほんとに、調べれば調べるほど、訳がわからなくなってきます。

でも、単にこういうアイテムを使ったから・同室寝しているから、といって「SIDSのリスクが下がるんだー!」と安心しないでね。
ちゃんと「同室寝」以外にも、禁煙とか、ちゃんと注意してね。

…というメッセージだと受け止めましょう。

ご家族の状況は様々ですが、上記の情報をふまえたうえで「これならできる!ここまでやってみよう!」という目標を決められるお手伝いができたら、幸いです。

(この記事は、2023年2月7日に改訂しました。)


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