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ACT.62『更なる場所を見据え』

若人の活躍を後にして

 深川市では、地元。クラーク国際高の甲子園全国出場に一花添えているようであった。
『出場おめでとう!!』
と若者たちの活躍を送り出すようなホワイトボード展示が、自分の旅している時期が夏である事。そして記念すべき地元の一行事に立ち会っている事の思いを満たす。
 クラーク国際高は、令和5年の全国高校野球選手権大会の北北海道代表の高校として出場する事になった深川市の高校である。最寄駅はこの滞在中である深川ではなく納内であるが、それでもこうして地元の主要なターミナルで祝賀の掲示をされるのは大きな出来事だ。
 クラーク国際高は、北北海道大会にあたっては1回戦で旭川実業高を。2回戦で帯広農業高を破り、準決勝で白樺学園高を破った。2回戦の帯広農業高に関しては、スコアが10-11×で決着する乱打戦となり、熾烈な戦況が窺える。最終的な決勝戦に関しては旭川明成高を1-0で下し、甲子園行きを成功させた。
 ちなみにこの高校野球・北北海道大会に関しては北海道の新球場として今年に建設されたエスコンフィールドHOKKAIDOにて実施され、新球場での歴史に新たな足跡を刻んだのである。
 そして全国選手権として甲子園球場での戦い。
 前橋商業高に7-1で勝利。実はこの前橋商業と戦って勝利した功績というのは非常に大きいものであり、通信制高校として初の高校野球1回戦突破の記録を残したのである。順調に2回戦への進出を果たしたが、2回戦では強豪・花巻東高に2-1で敗退し、ここで終了している。
 通信制高校としての大きな偉業を達成し、大きな弾みの付いたクラーク国際高。これからの飛躍と発展を期待したくなるものだ。
 さて、そんな深川から移動しよう。
 この旭川周辺から深川・滝川に至るまでの当たりは普通列車の本数…というのだろうか。列車の本数が極めて少ない。特急列車こそが主役といった感覚になっており、移動は789系によるライラックを利用した。
 未だにこのグリーンの789系に遭遇してしまうと、『白鳥』と呼んでしまいそうになるのだがもう白鳥そのものが死後になろうとしている現代。こうした列車名が浮かぶのは平成生まれの性だろうか。ゆったりと車内の自由席に腰掛け、再び拠点にしている旭川市内に戻らんとする。
 若人のナインによる熱い功績と留萌本線廃止を目前にした、光と影を感じとった深川市。次の訪問は石狩沼田への到達以前だろうか。

北への光

 旭川市内に到着した。そして789系の車内では、終点到着を目前にして『鉄道唱歌』の車内チャイムが鳴動する。列車の旅をしていて良かったという充実感に浸れる一瞬だ。
 旭川駅に到着し、少しだけ列車を撮影する。
 キハ261系、特急サロベツだ。列車は稚内への表示を出しており、いよいよといった構えになる。13時35分の発車の後に名寄を抜けて最北の稚内へ。到着時刻は夕方の17時25分になる長距離の列車だ。
 自分のいる旭川市内からどれだけの遠さを誇るか、改めて考えさせられるばかりというか。最北の街への遠さを突きつけられた気持ちになる。
 そしてもう1つの実感としては、
「割りかし最北端って簡単に行けるのだな」
という事。指宿から西大山への訪問には挑戦しようとして失敗しているので、正直この列車の『稚内』表示を見ると
『列車の予約と時間のサーチさえしていれば』
の感覚にさせられる。なんとなくして、最北端への足掛かりを掴めた。個人的な難易度への見解だが、特急列車でのアクセス可能なこの点はかなり大きいと思う。
 現在増備されているキハ261系に関しては、塗装を白色系の新塗装に変更している。中には白色系の新塗装のまま増備され、旧塗装を知らないキハ261系もいるのだが。
 そうした中での、北海道特急気動車の象徴ロゴである『HEAT』の表示。ようやく出会えた。図鑑の中だけの車両だという思いからの解放。

 キハ261系の宗谷・サロベツに充当される車両は他の車両と異なって、車両前部に大きく幌が出張っている。
 幌の収納構造がないのだろう。
 精悍な顔つきのこのスタイルに、ぶわっと広がった幌のスタイルは、自分の心に大きなギャップというか力強き個性の主張が刺さる。
 そして、他のキハ261系と比較してもなんとなく感覚で伝わるのだが、車両が少し丸みを帯びているのが特徴なのだ。この丸さの感覚は、宗谷本線を走るキハ261系でしか体感できない要素ではないだろうか。
 現代アートのような高架駅の中で、キハ261系がエンジンをカラカラと回している。発車の準備は万端だ。

 キハ261系・宗谷のトレインマーク部分を撮影。
 しっかし走行中に光る部分なのか光線的な?問題なのか、マーク部分には虫の死骸に鳥の糞のようなものまで。
 しかし、白系の現在走っているキハ261系にはない、この仕事に揉まれた武骨さがこの車両の持ち味だ。
 前照灯はHiDに既に変更済みなのだろうか?白くボヤッと光る姿に目を奪われる。しかし、遠くして見ると高運転台兄弟の愛嬌担当…かのようなつぶらな目をしているのだ。この個性、中々外せない。

 宗谷本線へ向かっての発車前には、789系ライラックとの特急列車並びも見る事が可能である。
 そして、引いて撮影し列車の並びを収めると余計に旭川駅の近代さ。そして現代アートのような風情が伝わってくる。北海道の駅では個人的に1番、大きな心を掴まれた駅ではないだろうかと地元でも思ってしまう。
 ホームから乗客の姿も殆どなくしての、北へ向かう特急列車と北海道の動脈として活躍する電車特急の並び。自分の居る場所のカラーバリエーション。そして北海道に来たのだという実感を強く感じさせてくる。
 最北の都市への光を照らしたキハ261系サロベツ。いよいよ本命の宗谷本線に向かっての走行だ。

 どうやらこっちのが順光のようで。う〜ん。場所のチョイスが。
 列車の本命である宗谷本線へ走っていくキハ261系サロベツ。勇ましくも音の激しいエンジンサウンドを掻き鳴らすと、ゆっくり高架駅から去っていった。
 図鑑でも無灯火走行の写真を見ていたので非常に感じるのだが、やはり何か光っていないと物足りなさと顔のあどけなさのようなものがある。こう、光っているべきというか。非常に人間で言えば天然肌な感触の後ろ姿である。
 煌々と照らされる前照灯に対しての顔面ギャップ、この感触はなんというか撮影していてクセになりそうだ。
 そして順光線で撮影したので、顔の感触がハッキリと。丸いってか(それもあるんだがな)ちょっと顔細め??

エセ学生よ、おあがりなさい。

 昼食の時間だ。
 ん〜。ここまで来てどうしようか。一応、旭川に関してはラーメンの名物であるという事が訪問前に分かっていた。
「ラーメンでもええかなぁ」
そう思ってもいたのだが。一応、入店した駅前食堂の中に入っている観光案内所で
「旭川ラーメン」
について尋ねてみる。
 駅から遠くない圏内。そして駅から少し離れる範囲に旭川ラーメンの店舗はあるらしい。聞いたところで
「旭川でラーメン食っとく必要ってあるんかなぁ?」
という微妙にも贅沢にもな悩みが。そして、具体的にとマップまで貰ってしまった。
 しかし、マップまで貰ってもなおあまりラーメンに関しての食指が動かなかったので、ここは作戦変更。駅ナカ食堂で食べる事にした。
 と、駅ナカ食堂に自分らしいメニューがあるではないか。
『学生焼きそば』。
「これにしよう…!」
直感が動かしたので、すかさず注文する。どうやらかなり量に関しては盛られているようだ。
 注文して、ベルで時間を待つ。ベルが鳴動し、皿を取りに向かう。今森盛られた、細麺の焼きそばがそこにはあった。
「これ食ったらしばらくは要らんわな…」
その勢いの量。
 焼きそばでソース系。実際は濃そうな見た目なのだが、これがまた食してみるとあっさりしていてこの量でも全然行けるのだ。いくらでもこの味付けをメインにして、おかずを食べ進められそうなくらいには良い焼きそばであった。

※北海道訪問中の1週間に関してはこの格好を貫いた。

 改めて、留萌市の見晴公園で撮影した(自撮り)自分の記録写真を見返そう。
 この格好だ。この格好で『学生焼きそば』を食す。実にこの旅らしいというか、自分らしい体験になった。ま、ここまでこの姿を貫いて旭川ラーメンなんてそれられないじゃないですかと。今では駅ナカ食堂に感謝したい気持ちで満杯だ。
 海苔のフワッとした食感も、あっさりした味を刺激しない。この焼きそばの美味しい事。
 背負っていたリュックを赤子を座らせるかのようにテーブル対面の椅子に座らせ、焼きそばをかき込んで次の道に備える。
 ちなみに改めてではあるが、制服姿をしていてもこの姿で年齢は今年・24歳。そしてこの夏服姿にはしっかりとモデルキャラクターがいるのだが、またその話に関しては回を追っかけて。自分には忘れられない思い出があるのではあるが…
「ごちそうさまでしたぁ〜。」
「はいありがとねぇ」
皿を返却台に返して、その足で少し旭川駅の周辺を散策&食料調達。この先の事情を鑑みて。そしてまだ先の胃の事を考えた動きに入った。
 エセ学生、まだまだ食ってまだまだ歩く。
 その後は駅前のイオンに移動して、食料の購入に充てた。
 先ずは店内の土産物屋さんを散策し、道内の土産について質問も交えて視察した。
「これは道東のもので…」
「あぁ、調味料ならどうしますかね…」
と店員さんとの話を繰り返した後ではあったのだが、最終的にはサイコロキャラメルを買って店を離れた。キャラメルとして食糧にもなるし、最終的にはパッケージが土産に出来るので自分にとっては一石二鳥の品である。
 サイコロキャラメルは道内で幾つかの味が販売されており、物産展での全国進出も果たしている。そんな折で今回の北海道旅では『ぶどう味』の販売を知り買うのだが、何故かこの土産物屋では『ぶどう味』の方が少々安価な設定になっていた。材料などが違うのだろうか。『ぶどう味』を190円で。通常のサイコロキャラメルを200円で購入し、消費税を足しての421円で終了。北への腹を据えた。
 そしてイオン店内を物色し、フードコートや多くの食料品店。そして専門店を眺める。最終的には88円のパインサイダーを買って、イオンを後にした。旭川駅として自分の未知な辺りが少々あったが、最北の都市に相応しく多くの品揃え。大いなる活気がそこにはあった。老若男女、多世代の集うショッピングモールを後にして、いざ最北へ。

最北の無課金列車

 さて。先に向かっての道を切り拓くために乗車したのは、『快速なよろ』号である。車両はH100形を充当し、最北の町である稚内とまでは行かないまでも新型車両らしい健脚と俊足ぶりを見せ、旭川都市圏と宗谷方面を結節する列車だ。
 H100形の充当される路線には基本的に無課金の優等列車が存在していない。旭川都市圏から名寄を向かって突き進むH100形快速列車は、新鮮な風を吹かせる大きな存在だろう。小さい側面表示ながら、赤い快速表示が勇ましく見える。

 車両前面に回っての撮影。
 H100形のゴツゴツとした身体に、赤い文字の快速表示がアクセントながらキラリと光る。
 宗谷本線の無課金優等列車としての佇まいをこの時点で見せており、そして北海道の新型車両とはいえ随分と様になっている。
 何度も記しているが、建築美を漂わせる近代的な旭川の駅。その中に佇むH100形の姿は、美しいものであった。北海道の自然に。極寒の大地にも負けない、と言わんばかりの頼もしい姿だ。
 快速列車とは言っても、車内は通常のH100形と変化しているわけではない。1+2の座席配列に関してはそのままだし、快速だからといって専用の車両が充当されているという訳でもないようだ。
 しかし、快速列車でもあり。宗谷本線の優等列車でもあり。そしてここから先は列車の本数が少なくなってくる宗谷本線の列車とあって、乗客の数はかなり多かった。自分も苦心して座席を確保する。
 15時04分。列車は発車していった。高架橋の駅を後にし、いよいよ最北を目指す旅が始まる。列車はまず、富良野線と別れて加速した。しばらく、京都市民として。嵯峨野方面で育った心の感触。『二条駅のような駅屋根』とはお別れである。
 この続行には普通列車の比布行きが同じ15時台の30分に控えているが、それでもこの列車に乗車した方がかなりの瞬足走行と時間の有効活用になる。特急も少ない宗谷本線では、旭川市内とのパイプにこの列車が大活躍なのだ。
 列車は旭川を出て、旭川四条に到着する。ここから先、新旭川と永山を経て列車は旭川の都市圏をグングン進んでいった。
 旭川運転所をその先で交わす。
 運転所内には、冬場を待つ大量のディーゼル機関車のラッセルヘッドが置かれていた。
「なんや、ったくこの可愛いのは…」
首を切られたというと表現は少々に惨いかもしれないのだが、夏季になると使用しないラッセルヘッドはそのまま運転所内に放置され、その活動の時を待って眠っていた。車庫にまとめて収納するのではなく。こうして屋外に放置されている姿というのも予想外だったので面白い。
 雑誌に図鑑に様々な媒体で見た宗谷ラッセル…などの夏季休業の姿は、予想外に愛嬌の感じられるものであった。
 晴天の車窓から、789系電車などと一緒に拝む。冬季の勇ましい姿とのギャップには驚いたものだ。
そして、この旭川運転所内で架線が切れる。
 旭川運転所は新旭川から石北本線と分岐して永山までの間にあるのだが、この区間が電車の送り込み・返却をする為。そして札幌に向かう特急車の基地としての機能の為、この場所まで架線が張られているのである。
 この区間から先は『電気』ではなく『軽油』を燃料とする気動車たちが主役になる区間と地域の始まりだ。

 旭川を出て、新旭川・永山と走行した列車はそのままの勢いで比布から和寒へ。途中は、特急列車ばりではないものの通過駅を含む優等列車なので車窓は圧巻だ。
 しかし、この先の車窓に関しては幾つかの通過駅を観測した時点で寝ておりあまり先の思い出が見つからないというのが正直な点になる。
 車窓に関する思い出としては、途中の新旭川を通過したり蘭留・塩狩とその先も何駅か過ぎたので
「あ、飛ばしているな」
くらいの感覚だけがぼんやり渦巻いていた。
 しかし滅多に乗車できないとして。北海道で無課金の優等列車なんてあとは快速エアポートくらいだったんだから、眠くても車窓の把握はしておきたかったし思い出が薄い事へ大きな後悔を背負ってしまうばかりであった。
『カタッ、コトンっ。カタッン、コトンっ!!』
列車は晴天の中を突っ走る。
 旭川中心部で楽しんだ若者たちを乗せて。そして旭川市内からの架け橋として多くの乗客を乗せて。1人掛け座席で項垂れる学ラン姿の人間も抱え、名寄に向かって進軍していく。

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