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左利きの彼女 《詩》

「左利きの彼女」

濃密な空気の塊に雨の予感がした

もう時間が無い 

僕は高く茂った 

緑の草を掻き分けて  

綺麗な湖へと向かう 


野生の花の匂いと
幻想的なオルガンの音


ある時点で僕の感覚が

内圧と外圧に押し潰され 

其の接地面にあったはずの感情が

崩れ始め痛みと喜びを失った

綺麗な湖の辺りには
大きな木があって

その下に白いベンチがある

其処に君が居る 

その事だけはわかっていた


左利きの君は左手にペンを持ち

本当の哀しみが溢れた詩を書いた

其れは

失われてもう二度と戻る事の無い

限定された風景に似ていた

結局のところは君の抜けた穴を

自分自身では
埋める事が出来なかった


僕は具体的な意味を持たない事柄や

抽象的な散文を書き続けていた


不完全な僕は

全てを完結させる物語を

書く事が出来なかった  
それだけの事だ


もう時間が残されて無い

君に逢いに行くよ 雨が降る前に

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