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小世界 《詩》

「小世界」

この世界には 

絶対的な善も無ければ

絶対的な悪も無い 

善は悪に転換し 

悪は善に転換する 

あるのは其の均衡だけだ

すなわち均衡そのものが善である

其の本にはそう書かれていた


死は解放でも復讐でも無く
空白を生むだけだ

僕はそう書き残した

世界が同義を失い崩れてゆくのは

僕達の苦悩や煩悶のせいでは無い

雷鳴とどろく夜に全ての意味を知る

いつだってどんな時だって 

君の名前は
僕の心から一歩も外へ出た事は無い

僕と君は入るべきして 

この世界に足を踏みこんだ


奇跡的なまでに親密で美しい光景が

白昼夢の先にある 

陽光に照らされた艶やかな肌

幸せと喜びと優しさの
欠如した空間を抜け出した

くだらないものの

限りない集積により 

成り立っている その世界を離れ


僕達ふたりだけの

小いさな世界の扉を開いた

其処には善悪の均衡も無い

小世界は永遠に滅びる事は無い

そして此処には

絶対的な愛だけがある

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