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anarchism - 暗闇の中の蝶 - 《小説》

「anarchism」 - 暗闇の中の蝶 -

暗闇の中を

彷徨い飛ぶ蝶の夢を見た


私 誰にも迷惑をかけたく無いの

誰の重荷にもなりたく無いの

そう何度も何度も
闇の中から声が聞こえた


それは玲子さんの声の様に聞こえた


僕は目を覚ました 

夜明け前だった

外に出て真夜中に輝く月を見ていた

少しずつ辺りが白くなって行く

その中で独り彼女の名前を囁いた

その日の午前中に

玲子さんの家に電話をした

留守だった 

午後にも夜にも電話をしたが
やはり留守だった

次の日 電話をした時には

「現在 この電話番号は使われておりません」

そうメッセージが流れた


僕は状況を理解出来なかった

もう一度 
玲子さんの家に電話をかけ直した

受話器の向こう側からは

事務的なメッセージが流れていた


僕は焦っていた 

訳がわからなかった

急いで駅前の輸入盤屋さんへと走った

店内の従業員に玲子さんは? 
そう訊いた

彼女は昨日

バイトを辞めたと聞かされた

何故なんだ 

どうして何も言わずに

何故 居なくなったんだ 

そう何度も心の中で繰り返した

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