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記憶の蓋 《詩》

「記憶の蓋」

不確かな覚醒 

夜明け前の色 

それは
不自然に現実性の核を喪失していた


事実を記録した

モノクロの無声映画が流れる

断続的に訪れる場面に僕は居た


その映画に字幕は無く

僕は彼女の口元を見つめていた

灰色の曇り空を
飲み込んだ様な空間が

辺りを包み込み


僕等か共有したはずの時間が 

其処に映し出されていた

思い出せない 

何もわからない

彼女の名前も顔も

ぼんやりとしか記憶に残って居ない


僕の頭の中を深い霧が包む

罪悪感 

自己嫌悪 

わからない

抑圧した記憶の蓋


少し大きめの金属のイヤリングが

陽の光に輝いていた


それは 
運命的な美しい光だと確信していた


僕はミントガムを噛みながら
煙草を吸っていた

直ぐにまた

霧が記憶を消し去って行く


銀紙で出来た星が

黒い闇のカーテンに貼り付けてある

僕が眠っている間に

勝手に幕は降りていた

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