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復活を賭ける人には勢いがある。大相撲初場所。横綱照ノ富士が4場所ぶり優勝。3場所連続の休場を乗り越えた。大関昇進の可能性が高い琴ノ若と一時代を築いて

復活をかけた人には勢いが生まれる。大相撲初場所で横綱照ノ富士が4場所ぶりの優勝を果たした。先の3場所は休場し横綱の進退がかかっていた。今場所は7日目までに2敗を喫する苦しい展開だったが、後半以降は日を重ねるごとに勢いが増していた。千秋楽は優勝決定戦にまでもつれ込んだが、大一番を制した。まるで不死鳥のような復活劇だった。

今場所の2日目に早くも1敗を喫した時に、照ノ富士の優勝を予想する人は急減したのではなかっただろうか。7日目にも前頭4枚目の正代に敗れた。中日を前にしての2敗は痛い。

それでも今場所に賭ける横綱は下を向かない。8日目から白星を積み重ねていき、13日目に単独トップを走っていた関脇琴ノ若を下して首位に並んだ。

勢いがつくと運も味方する。14日目は大関琴昇龍の挑戦を受けるはずだったが、不戦勝が転がり込んできた。照ノ富士が2011年5月に初土俵を踏んでから初めての不戦勝だった。

照ノ富士はこれまで不戦敗を10回与えている。「不戦敗がいっぱいあるから、1回ぐらいはいいんじゃないですか」と初めての不戦勝に自嘲気味に話す余裕もあった。

そして28日の千秋楽。結びの一番で大関霧島を寄り切りで下して、優勝に望みをつないだ。先の取組で琴ノ若が2敗をキープしていたため、賜杯の行方は優勝決定戦にもつれ込むことに。

この大一番で、横綱は関脇琴ノ若の両腕を抱え込むと、前に出ながら右へ左へと揺さぶった。そして絶好の両差しにすると寄り切って、優勝を手にした。これで通算9度目の賜杯だ。

今場所は逆転劇ともいえる復活優勝。あきらめずに一番一番白星を重ねていった取組は、照ノ富士の相撲人生ともつながる。

9年前に23歳に大関になったが、一度は序二段にまで落ちた。そこからの再浮上は容易ではない。それでも自身の復活に賭けた。そして大関に返り咲いた後に、横綱へと昇進した道のりとなった。

苦難の相撲人生。それを経験しているからこそ、一場所で苦しい展開を余儀なくされても慌てない。一番一番、自分の相撲を取っていくだけ。そして今場所の復活優勝にもつながった。これぞ不死鳥だ。

優勝決定戦で敗れて惜しくも初の賜杯はお預けとなった琴ノ若だが、大関昇進の可能性が高まった。来場所はリベンジの思いを胸に抱いて、照ノ富士に挑むだろう。

不死鳥の横綱照ノ富士。そして新大関となるだろう琴ノ若。2人がライバルとなって戦い続ければ、大相撲はさらに面白みを増すだろう。2人で一時代を築いてほしい。次の三月場所が楽しみだ。

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