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【前編】学びの報告会より |公立高校を舞台とした、社会人向け越境学習プログラム「SOTEIGAI」

社会人向け越境学習プログラム「SOTEIGAI」。今年5月に、2020年度の参加者のみなさんによる学びの報告会を行いました。
このプログラムは、「社会や組織のなかで自分らしさを生かす」をキーワードに、NPO青春基地が日頃、学校改革をすすめている公立高校という普段と異なるフィールドにおいて、半年間にわたって対話と実践を深めていくものです。

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プログラム名の「SOTEIGAI」は、「一人ひとりに想定外の未来をつくる」という私たちのビジョンからきているのですが、敢えて断言してしまうと、このプログラムによってどんな成果や結果がおこるかは、運営チームにとっても”想定外”なんです。自分らしさをいかすことから、一人ひとりと組織の創造性を広げていきたいと考えていますが、「具体的にこんな成果や変化がおきる」「こんなスキルが身に付く」という研修効果を、あえて固定化していません。想定外の先にこそ、人の創造性があると考えるからです。

プログラム「SOTEIGAI」詳細と昨年度の体験談は以下noteに記載してます。

研修なのに、、と、ちょっと不安もよぎるようなプログラムだと思いますが、どんな学びが生まれたのでしょうか。そもそも、参加者の皆さんはどんな動機で参加を決めてくださったのでしょうか。報告会での発表から、今年の参加者のみなさんの思いをまとめました。

急に、イノベーションを起こせと言われても…。会社で感じていた戸惑いや迷い。

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まずはEさん。普段はメーカーのシステム部門で働いています。2児の母でもあります。

「普段は、メーカーのシステム部門で働いているのですが、数年前に親会社の出向になってから、急に、イノベーションを起こせ、働き方改革を進めてくれ、と言われるようになったんです。社員数も違う、会社のやり方も違うなかで、提案してみても受け入れられない。
そもそも、学生時代も社会人生活も決められた通りに仕事をやってきたところがあるので、戸惑いもあり、自信をなくしていました。人生も後半戦になるなかで、自分がやりたいことはなんだろう、役に立てることはなんだろう、その答えを自分で見つけたかったんです。」
「もう一つは、二児の母として、教育を学びたかった。子どもを叱ってみたり、ああしなさいと言ってみたりしているけれど、そのやり方で自己肯定感を育めているのだろうかと疑問を感じていました。」

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そしてJさん。大手企業でキャリアアドバイザーとして働いていましたが、求人や業績に囚われずに人と向き合いたいと考えるなかで、コーチングと出会い、昨年、フリーランスのコーチとして独立しました。

「コーチングって比較をしないことなんですが、昨年に独立してからは、不安もあって、まずビジネスとして成立させなければとか、XXさんは経営者だからできるけど自分は、、と比較したり、社会性ばかり考えてしまう自分がいました。自分を生きるために独立したのに、”Have to”ばかり考えてしまう。がんじがらめになって、なかなか動き出せなかったり、頑張りすぎて体調を崩してしまったりしていました。」

自分の”型”ができてきているとき、揺らぎが生まれると聞いて、なんかピンときた。

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そしてGさん。企業の営業職として10年以上のキャリアを歩んだあと会社勤めを辞め、銀座のBarのラウンジピアニストに転身しました。今は地元で「江古田 Music School」という音楽教室の経営を加え活動されています。

「ある知り合いの方が、『自分の”型”ができてきているとき、揺らぎが生まれるので物の見方が変わるかも。自分自身が想定外の強烈な学びがあった』と、このプログラムについて紹介していて、なんかピンときたんです。
おそらく40代になって、価値観を変えていきたいと思っていたからだと思います。30代のころは常に”選択と集中”を意識していて、自分の得意なことにフォーカスして働いてきました。脱サラして音楽教室をやったのも、明らかな自信があったからです。でも進化論的に考えたら、強みを強化するだけでは生き残れない種になるじゃないですか。それは自分は嫌だなって。」
「もう一つは、いい歳してきてますから、自分の仕事だけでなく、社会に、教育になにか力になりたいと感じていました。」

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数十年ぶりの校舎。SOTEIGAIで感じたこととは。

当日は、まずプログラムに参加してどうだったかの振り返りから始まりました。このSOTEIGAIは、大きく二つに構成されており、その一つは、公立高校のなかで高校生たち向けの授業をつくり、届けることです。今年はオンラインで「インタビュー」を実践しながら学ぶ授業と、高校生たちが音楽や映像をつくる「Creative Workshop」に参画していただきました。異世界のなかへ、まさに越境する時間です。

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Eさん:「高校に行くこと自体が数十年ぶり。高校生たちの元気さにも、ジェネレーションギャップにも圧倒されてドキドキしました。でも実際に対話をしてみると、何倍にもなって答えが帰ってきたり丁寧に教えてくれました。普段、自分自身がインタビューされる機会もないのでその純粋な嬉しさと、こう自分を客観的に捉えられる時間にもなりました。」
Jさん:「元気さ、やべーなって思いました。自由だなと。大人になると理屈というか、大手だから、ゲストだから、とかで人を見てしまうところがあるじゃないですか。でも高校生たちはそういう次元じゃない。ある意味での怖さでもあったけれど、人のあり方をそのまま見て、受け取っているんだなと感じました。」

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”だめだったら、だめでいいんです”というスタンス。

そして三人共通して盛り上がったテーマもありました。

Eさん:「あとは、大学生たちから大きな刺激を受けました。各教室のファシリテーションは大学生のインターン生たちが進めているんですが、それがすごく上手くて。高校生たちに話しかけることにまだまだ壁を感じていたなかで、なかなかテーマが決まらないチームに、あるインターン生がすっと入って話し始めた。
そしたらあっという間に話が進んで、”中高生向けの古着屋さん”というオンラインショップのデザインが出来上がっていったのを目の当たりにしたんです。」
Gさん:「大人だからこそ、高校生たちが計画や用意できていないことに対して、これが必要だ、ここの部分も考えるべきと、見えてしまうから言いたくなってしまいますよね。でも決まったら自分たちでガンガン進めていく様子をみて、そういう口出しはしない方がいいんだなと気付かされました。ぐっとこらえて教えない方がいいんだなって。」
Jさん:「音楽をつくるワークショプに関わっていましたが、事前にコンセプトや構成を練ろうというワークシートを、誰も書いていなかったんです。宿題にしても翌週白紙のまま。
自由とはいえ、こんなんでいいんだろうと戸惑いましたが、最終日には本当に出来上がってしまった。言葉にすることはできなくても、言葉にできないものから作り出せる、生み出せる、そのシーンを実際に見ることができました。」

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なかでもGさんが何度も話してくれたのですが、そこにはある背景があったそうです。

Gさん:「実は、このプログラムに参加に参加した背景には、苦い経験もあったからなんです。音楽講師の仕事の一環として、音大への受験勉強をサポートしたことがあるんですが、このままだと合格率が50-60%にとどまってしまうなということで、少し強めに指導をしたんです。そしたら結果的に合格率は上がったのもの、その子は受験自体を辞めてしまった。その子が決めたゴールじゃなくて、私が決めたゴールを押し付けてしまったなと、反省がすごくあるんです。」
Gさん:「だから高校で授業をすると聞いて、少し不安でしたし、押し付けがましくならないようにしようと思って、まず外から様子を見ていました。”授業はゆるいです、なにも決まってないです”と聞いてはいたけれど、想定の度合いをこえて自由だった。私のようなタイプだと、成果物に対して逆算して段取りを立ててしまう。”だめだったら、だめでいいんです”というスタンスさえあって、本当に大切なものはなんだろうと考えさせられました。」
Gさん:「こう動けは早いじゃんという大人の合理性が間違っているとは思いませんが、実際に見ていると、ほっといても動くんですよ。多様な生徒がいる高校だったので、偏差値でいえばまだまだ力が開花していないのかもしれないけれど、そういうことではなくて。生きる力というか、気づいて、面白がって、そしたらやり始める。周りの力をかり始める。自由度と柔軟性のなかで、人を信じることを気づかされました。」

教えるとはなにか、人が動き出すとは一体どういうことなのか。子どもたちが動き、学んでいく姿を目撃することで、教育について、自分自身のあり方について、じわりじわりと問いが生まれていきました。この相手を信じて、「手放す」ことは、半年間かけて一人ひとりにとっても大切なテーマになっていたようにも思います。

一人ひとりにとっての「手放す」とはなんだったのか。そもそも「手放す」とはどういうことなのか。後編ではプログラムのもう一つの柱である「マイプロジェクト」を立ち上げることから、参加者それぞれの変化を聞かせてもらいました。

続きの後編は、以下よりどうぞ!

また、今年も8月より募集をはじめますので、気になる皆さんはまずは説明会にお越しいただければ幸いです。


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