マガジンのカバー画像

"歴史" 系 note まとめ

1,166
運営しているクリエイター

2022年2月の記事一覧

『リグ・ヴェーダ』を(趣味の範囲で)読むための前提知識

まえがき『リグ・ヴェーダ』(R̥gveda)という文献があります。一般にはRVと略します。使われている言語は、サンスクリットの中でも一番古い段階のヴェーダ期サンスクリット語(Vedic Sanskrit)、の中でもぶっちぎりで一番古風なものです。要するにインド・アーリヤ語の中で一番古い段階の言語の姿が残っている文献です。 この名前から一般に連想される韻文集は、厳密には『リグ・ヴェーダ・サンヒター』(R̥gveda-Saṃhitā)(の中でも、現存するのはシャーカラ(Śāka

【コテンラ図オ】資本主義編

Twitter上で多くの反応をありがとうございます。 コテンラ図オ: 当社では、文字や音だけでは伝わらないことを可視化して理解を深めるdesign部門があります。その一例として歴史を面白く学ぶ音声コンテンツ、コテンラジオを勝手に図化しております。 ▶コテンラジオ:https://cotenradio.fm/ 今回は資本主義編を図化しました。 Podcast音声を聴きながらご活用ください。 株式会社コテン:https://coten.co.jp/ 株式会社BOOK:ht

12時間で日本の歴史を語るために読んだ約500冊を紹介するよ。

この動画を作るのに使った参考文献約500冊について、「個人的な難易度」「個人的なおすすめ度」「簡単な一言コメント」をまとめた記事です。 動画でも話しているので合わせてご覧ください。 『GHQ焚書図書開封1、2、3、4、11、12』/西尾幹二 GHQ焚書図書開封1 →https://amzn.to/3mTmzIv 個人的難易度(5段階):2 個人的おすすめ度(5段階):3 一言コメント:1巻は初めて読んだ時いろんな意味で驚きました。そんな感じの本です。西尾幹二さんは保守

アメリカ文学史に屹立する「何もしない」英雄――『教養としてのアメリカ短篇小説』より、「書記バートルビー」を読み解く第2講を全文公開!

 “I would prefer not to.”(「わたくしはしない方がいいと思います」)とは、『白鯨』の著者として知られるハーマン・メルヴィルの短篇小説「書記バートルビー」に出てくる表現です。上司に言いつけられた仕事をこの言葉によって拒絶しつづけ、それ以外一切の説明をしない奇妙な人物・バートルビー。アメリカ文学史に屹立するこの「英雄」の物語が発表されたのは1853年。150年以上前の作品ですが、先ごろ日本経済新聞の一面下コラム「春秋」(https://www.nikkei

山田耕筰の歩みと「音樂は軍需品なり」から考える「コロナ禍における音楽は不要不急か」という問い

 もうすでに多くのひとびとは忘れはじめているかもしれない。「音楽(あるいは演劇)には力がある」。2年前に音楽家や芸術家たちが叫んだ言葉である。  コロナ禍が始まって最初に停止したもののひとつがコンサートをはじめとするイベントだった。一演奏家であるわたしの経験では、2020年の1月のコンサートではじめて演奏者にマスク着用が義務付けられ、2月からは公演の自粛が始まり、3月から4ヶ月ほどの「休業期間」が始まった。  多くの音楽家たちが路頭に迷った。もちろんわたしも例外ではない。20

ウクライナの歴史 スターリンの恐るべき政策

昨日の記事では、 「クリミア危機」を読み解くにあたり、 ウクライナの歴史を振り返ってきました。 話はソ連が東西のウクライナを 併合したところまで進んでいます。 なお、この記事に関しても 以下の参考文献をもとに 書き起こしたものです。 私自身の主張は含めておりませんので、 くれぐれもご了承ください。 スターリンの恐るべき政策1930年代、ソ連は全面的な 「農業集団化」を 強引に推し進めていました。 ソ連といえば 「社会主義」の国ですから、 一般国民の「私有財産の否定」

続編2:2022年ウクライナ情勢をより深く理解するための歴史文化背景雑学

当方はウクライナやスラブ研究者では無く、米国大学にてホスピタリテイ・観光経営分野で研究系博士教員をしている日本人学者・米国永住者です。ウクライナには縁があって旧ソ連崩壊後数年であった1995年から往訪しており、渡航回数は30回程度です。過去5年は年に数回のペースで渡航していました。 自分の研究領域専門分野ではありませんが、比較的現地情勢に詳しいので、約一か月前に掲題の雑学メモを書きました。現地に行かずに欧米メデイアを分析・評論するような日本語メデイア、或いは親ロシア派の自称

クリミア危機とウクライナの歴史

現在、ロシアが侵攻している とされているウクライナですが、 そのきっかけとなった 「クリミア危機」について書きます。 なお、ここに書くのは、 過去に私が読んだ文献から 拾った覚え書き程度の 内容に過ぎません。 私の主張は一切入っておりませんので、 誤解されないようにしてください。 (私自身は、欧米の味方でも  ロシアの味方でもありません) この記事を書くにあたって、 参照した本を先に紹介しておきます。 本書は2014年に文藝春秋から 出版された新書本です。 テレビの

『蘇州の夜』にみるジェンダーと植民地主義

 はじめに  ミュージカル『李香蘭』が再演されるそうだ。  私が観劇したン年まえは劇団四季の公演であったが、最近は「浅利演出事務所」主催公演に変わっているようだ。  私はこう見えて(どう見えて)ミュージカルと演歌・歌謡曲で育ってきた人間であり、この作品も私のお気に入りの一つである。本作品についての愛は以前instagramで詳細に述べたのでここでは割愛し、ここでは違った視点から〈李香蘭〉の周辺を見つめてみたいと思う。  本稿のタイトルは、「『蘇州の夜』にみるジェンダーと

地理の基本知識から、世界史を見る!―中国史編

世界史講師のいとうびんです。 今回は、地理の内容から世界史を見ていく、というちょっと変わったアプローチをしてみます。 ……とはいえ、この地理での基本知識は、ちゃんと知っているか否かで世界史の理解にかなり差が出る、ということも言えます。まさに、侮るなかれ、です。 今回は中国史をテーマに、地理と関連させながら見ていくことにしましょう。 また、この記事ではいくつかのクエスチョンを設置しました。みなさまもぜひ、クエスチョンの答えを考えながら、記事を読み進めてみてください。

はじめに~自己紹介と運営方針~

◆執筆者◆ 佐京由悠(さきょう よしはる) 日本史科予備校講師。 専門は日本近現代史、特に近代における〈日本人〉論や昭和期の言論弾圧について。 趣味は歌、熱帯魚と亀とよろしくやること、旅行、散歩、徘徊、飲酒。 ◆note運営方針◆ 私が日本史やこの社会一般に関して考えたこと、授業の内容を深堀りしたもの、映画・読書案内など多様な記事を掲載していく予定です。 ~現在予定しているお品書き~ ・日本史講義延長戦(授業では話しきれない深堀りした内容) ・さきょの本棚(読書案内/

奴隷に対する誤解―本質を理解するということ

世界史講師のいとうびんです。 今回は世界史で頻繁に目にする「奴隷」がテーマです。 この奴隷、実は、世界史などを教授している授業者のみなさまのなかには、説明に本当に骨が折れる、という方も少なくはないかと思います。 というのも、世界史には時代や地域によって様々な奴隷がおり、その多様な在りようのせいで混乱する生徒も少なくはありません。 例えば、「奴隷が国家を打ち立てた」と聞くと、「え、そんなことできるの?」と疑問に思われた方もいらっしゃるでしょう。 ですが、ここで重要なの

0-2. この世界の謎を、解き明かす方法 新科目「世界史探究」をよむ

高校の世界史は、2階建ての構造に変わる! 前回述べたように、世界史探究とは、この世界がどのように現在の形になっていったのか、われわれ一人ひとりと、どのようにかかわっているのか、そして、これからどうなっていくのか。そういったことを目指す科目であるようです。  それを私なりにパラフレーズすると、世界史探究は「この世界の謎を解き明かす科目だ」ということになるでしょう。  しかし、謎を解き明かすといっても、どんな手を使ってもよいわけではありません。  じつは、世界史探究に進む前