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"歴史" 系 note まとめ

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2023年4月の記事一覧

5:日本人にはポストパンクが難しく、歌謡曲が「簡単」だというその理由——『教養としてのパンク・ロック』第37回 by 川崎大助

過去の連載はこちら。 第5章:日本は「ある種の」パンク・ロック天国だった5:日本人にはポストパンクが難しく、歌謡曲が「簡単」だというその理由 「女性陣以外」のポストパンク  それ以外のところ、つまり「女性陣以外」のポストパンクも見てみよう。ちょうど「バンド・ブーム」世代から遠くないあたりの「異物」に、やはりか細いながらもポストパンクの係累があった。そのひとつが、電気グルーヴだ。ニュー・オーダーをこよなく愛し、ダンス音楽と笑い(と人情)を真摯に追求する彼らは、正しくポスト

【社寺002】観心寺

今回の旅はここ、南海電鉄難波駅からはじまる。 ここから南海電鉄高野線、特急「こうや」に乗って26分、河内長野駅につく。 そこからさらにバスを乗り継いで10分弱だろうか、本日の目的地に到着である。 高野山真言宗遺跡本山、檜尾山観心寺である。 開創は701年の役小角にまでさかのぼるものの、「観心寺」との名称を得たのは808年に空海が北斗七星を勧請してからであるそうである。 *勧請とは、本来仏教用語で、仏がこの世にとどまって衆生を救済してくれることを請願することであるが、

『入門 歴史総合Q&A100』『監査法人との付き合い方がわかる本』ほか全7点! 中央経済社今週の新刊情報(2023年4月24日~30日)

2023年4月24日~30日の中央経済社新刊リリース情報をお届けします! 書影をクリックするとビジネス専門書オンライン(中央経済社ECサイト)にて詳細をご覧いただけます(発売日の3日前から予約受付開始となります)。 「今週の新刊情報」は、毎週月曜日の朝7時に公開しています。本コーナーをチェックしていただければ、中央経済社刊行の書籍をもれなくフォローすることができます。 4月25日(火)発売 4月27日(木)発売 4月28日(金)発売 #中央経済社 #中央経済社通信 #

「佐藤亜紀さんと、歴史×文学で歴史小説について考える」開催報告その①

【開催概要】  「歴史小説」と聞いて、みなさんは何を思い浮かべますか? 大河ドラマの原作でしょうか。あるいは、司馬遼太郎のいくつかの小説を思い浮かべるかもしれません。歴史は「事実」で、歴史小説は「fiction」だと思っている人もいるかもしれません。けれども、世の中には、もっと様々な「歴史小説」があります。  世界的に見れば、例えば20世紀イタリアの作家であるナタリア・ギンズブルクと歴史家カルロ・ギンズブルクについて、母のナタリアは歴史のような小説を書き、息子のカルロは小説の

「日本史探究」とは何か −学習指導要領解説より

今年度の高2生から新しく「日本史探究」が始まりました。 新しい教科書の内容については,いずれ比較検討を行いたいと考えていますが,とりあえず,『学習指導要領解説』でどのような説明がなされているのかを確認するため,2019年度に作成した資料(の一部)を PDF で掲載しておきます。

歴史学からみる火山噴火

 『火山と日本の神話 亡命ロシア人ワノフスキーの古事記論』(桃山堂)という本に載せたものですが、もうオープンして良いだろうと思います、 すべてを火山から考える  ワノフスキーの論文「火山と太陽」は興味深いものである。それは倭国神話のすべての側面、その本質に火山神話をすえて考えようという立場の宣言であった。同じような主張を最初に明瞭に述べたのは、おそらく寺田寅彦が一九三三年に書いた論文「神話と地球物理学」であろう。寺田というと「天災は忘れた頃に」という警句が有名であるが、私

教職志望の方へー教職の要件について

 「教職志望の方へー教員定数について①」で、明治生まれの祖母が(旧制の)女学校を出て小学校教員になったと書きましたが、補足があります。  母によれば、祖母は、女学校を卒業してから1年間明石で研修をした後、小学校教員になった、ということでした。  因みに祖父は、旧制中学を卒業後、姫路の師範学校を卒業して、小学校(戦時中は国民学校)や高等小学校で教員をしていました。戦後は中学校で教えていました。  祖父は、「師範学校が授業料無料だったから」と言っていました。師範学校では鉄棒でな

歴史ドラマを書く難しさ

「例の脚本、結局まだ一本も上がっていないじゃないか」  そうお思いの方がいてくれるのかどうかすら怪しいところなのですが、この理由を説明させていただこうと思います。言い訳させてください。 ○脚本ができていない理由 というのも――  この記事で書いたように、僕は今まで歴史をドラマ的に見ていた節があり、もっと日常的で、今の僕たちと地続きである事を考えられずにいました。  だからこそ「今回の脚本はより日常的にしたい」「ドラマチックな部分と日常的な部分を滑らかに繋ぐものにしたい」と

歴史のことばNo.21 伊藤敏『歴史の本質をつかむ「世界史」の読み方』の読み方

各所で話題になっている伊藤敏先生の『歴史の本質をつかむ「世界史」の読み方』をご恵贈賜りました。 具体的なところに目がいってしまう質なので、特に読みでがあったのは、「より深い理解へ導く見方」とうたう第Ⅲ部である。 さらに読み進めていくと、なんと「モヒの戦い」が! モヒの戦いなんて、高校世界史の教科書には載っていない。 じゃあモヒの戦いなんて必要ないんじゃないのか? 単にマニアックなのではないのか? さらにその後には、イギリスでもフランスでもなく、なんとスイス(盟約者団)

ワインと世界史の深いつながりに酔う

ワインを飲むと蘊蓄を語りたくなるのはなぜでしょう?? 教養と味わいが深まる魅惑のミステリーに酔いしれる――。 豊潤な本の紹介です! ※発売日はAmazonなどのWEB書店に準じます。 <4月4日発売> 『世界史を動かしたワイン』 著:内藤博文本の冒頭から、うんうんと同意しながら読んでいたけれど、最後の一文にはうなずくことができなかった。 けれども次の一文で前言撤回。 「というのも、ワインには人間の歴史が詰まっているからだ」 たしかにワインの歴史はとんでもなく古そうだ。

池間と佐良浜、写真でよみがえる祭祀の数々。

現在宮古島市に属する池間島には池間という地域が、伊良部島には佐良浜という地域がある(さらに宮古島の西原も加えて「池間民族」とも称される)。 池間の分村として誕生したのが佐良浜であることから、池間と佐良浜では祭祀を共有しており、年間を通して数多くの祭祀が行われる。その中から、池間のユークイ(1985年)、動物供儀(1988年)、佐良浜のカーニガイ、ムズビューイウサギ(1993年)の祭祀を取材したのが本書である。 著者は、糸満の漁業に携わる女性や浦添市小湾の字誌に関わり、多く

歴史のことばNo.20 西平等『グローバル・ヘルス法―理念と歴史』名古屋大学出版会、2022年

この3年、国際保健協力については色々と読みあさる機会があったが、その集大成というか、総整理にふさわしい書籍だった。 おそらく初めに読むものとしては、偶然COVID-19の初期に刊行された下記がよい。 アジア(特に日本と中国)の果たした役割については下記。 むしろ、マラリア対策については、マラリア対策中心に国際保健協力の手法をたどった、下記所収の脇村氏論文を先に読んでおいたほうが、理解がすすみそうだ。 テクノロジーか社会改革か さて、本書を踏まえてシンプルにいえば、国際

新科目「歴史総合」入門(5)参考になるもの

さて、ここからは「近代化」「国際秩序の転換と大衆化」「グローバル化」のそれぞれについて順を追ってみていく前に、参考となる書籍をちょっとだけ紹介しておきたいと思います。 よみやすいもの 個別のテーマや歴史学、歴史教育について、どのような問題意識があるのかをつかむには、これがおすすめ。1冊120ページ程度で、読みやすいです。山川出版社のリブレットは高校生向けのつくりではないので、この清水書院のシリーズのレベル感で間口をひろげたシリーズがあればいいなあと思います。 観やすいも

新科目「歴史総合」入門(6)1つ目のしくみ:近代化

■「近代化」の時代の大前提 では、ここからは各論です。 まずは、1つ目のしくみである「近代化」について見ていきましょう。 これまでの日本史の教科書では、近代という時代のはじまりは「開国」に設定されていました。 ところが、世界史の教科書では、産業革命が近代のはじまりとなっています。 歴史総合では、「近代」という時代がいつ始まったのか明示されているわけではありませんが、産業革命が大きな意味を担っていることはたしかです。 ではどうして産業革命が、そんなに重要なできごとだと言