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"歴史" 系 note まとめ

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2023年5月の記事一覧

【たまチカ002】旧奈良監獄

東大寺南大門から大仏殿、戒壇堂、転害門とをすべて通りすぎて、坂道を上り切ったところの閑静な住宅地に、突如赤レンガづくりの堅牢な建築物があらわれる。 旧奈良監獄である。 旧奈良監獄とは、長崎・千葉・金沢・鹿児島と並ぶ「明治五大監獄」の一つであり、1901年に建築がいち早く開始され、かつほぼ完全な形を残している唯一の監獄である。 1908年に竣工して以来、1922年に奈良刑務所、1946年には奈良少年刑務所と改称され、2017年3月31日に廃庁された施設で、廃庁と同時に重要

「佐藤亜紀さんと、歴史×文学で歴史小説について考える」開催報告その③

【感想①】                 泉谷瞬(近畿大学 文芸学部 文学科 講師) 「佐藤亜紀さんと、歴史×文学で歴史小説について考える」で交わされた議論は多岐にわたるが、中心となるキーワードを私なりに挙げるならば、それは「想像力」である。  佐藤亜紀氏の講演「歴史小説の技法」では、日本の近代文学における「歴史小説」の条件(と一般に考えられているもの)を検討するところから始まり、西欧文学との比較や海音寺潮五郎の発言などを参照することで、歴史学研究と「歴史小説」の間に生

謎解き世界史 「2番目に多く話されている言語」 【カリブ海編】

 2017年のgigazine.netの記事で、マックス・ハロウェイ氏による世界各地で「2番目に最も使われている言語」のインフォグラフィックが紹介されていました。世界の歴史に対する「勘所」が養える、すぐれた地図であると思う反面、ほんとうに実情を反映したものなのだろうかと疑問に感じる点もありました。  そのあたりも含め、今回はカリブ海のいくつかの島国・島々に注目して紹介したいと思います。  今回は中央アメリカの注目ポイントを簡単に眺めてみましょう。 言語の分布に影を落と

新書『帝国図書館』執筆余録~年表のはなし

拙著『帝国図書館―近代日本の「知」の物語』(中公新書)をお買い上げくださった方、すでにお読みいただいた方、どうもありがとうございます。本当に感謝しております。 本書刊行後、何人かの友人から、どうやって書いたのか、どのくらい時間をかけたのか聞かれました。その回答かたがた、執筆余録として書き残しておこうかと思います。 執筆期間ですが、準備期間含めて入稿まで3年半、本腰入れて書き始めてからはだいたい1年弱です。 準備期間として、まず年表作成にかなり時間がかかりました。 本書の