マガジンのカバー画像

【ライブラリ】notes

3,217
Excellent curation of the noters, a truly inspiring compilation of content:
運営しているクリエイター

2023年2月の記事一覧

『イニシェリン島の精霊』アフタートークのまとめ

現在アカデミー賞にも様々な部門でノミネートされている『イニシェリン島の精霊』ですが、シネ・ギャラリーの上映もそろそろ終盤に差し掛かってきました。 皆さまもうご覧になりましたでしょうか? 個人的に見終わったあと、「……?」となっていましたが、ご覧になった方と話すと様々な見解で議論が巻き起こる、おもしろい映画だなあと思いました。(考察好きな方にはとても楽しめるのでは。) 映画の解釈は本当に人それぞれですが、ただのおじさん2人の喧嘩だと思いきや、その中にいろいろなメタファーが込め

【シリーズ「あいだで考える」】戸谷洋志『SNSの哲学――リアルとオンラインのあいだ』の「はじめに」を公開します

* はじめに  いきなりですが質問です。あなたはふだん、電車のなかで何をして時間をつぶしますか。  窓からの景色を眺めている、という人もいるかもしれませんし、車内の広告を見回してトレンドをチェックする、という人もいるかもしれません。もしかしたら、今まさに電車のなかにいて、この本を読んでくれているという人もいるかもしれません。  しかし、きっと多くの人は、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を利用しているのではないでしょうか。たとえば、Instagram、Twitt

昆虫食についての雑感

1.昆虫食などの代替たんぱく質の話が最近ぞろぞろ出てきているバックグラウンドについて現時点での自分の理解を記録する意味を兼ねて書いてみる。 いわゆるプロテインクライシスに関する危機意識は、主に可耕作地が頭打ちになりつつあることがベースにある。 実際に可耕作地面積は現在ほぼ飽和状態にあり、それらは現在家畜の飼料用のトウモロコシや大豆の大規模集約生産に振り向けられつつある。 https://data.worldbank.org/indicator/AG.LND.ARBL.ZS

新しい刃物のブランド「癶(HATSU)」

昨年8月から福井県に度々訪れ、あるプロジェクトに参加していました。 そのプロジェクトは「F-TRAD」という名前で、福井県の事業かつ福井で活動するデザインスタジオTSUGIがディレクションを行い、福井県内の伝統工芸を現在のライフスタイルに転換することを目的とし、伝統工芸の現場や職人と県外のデザイナーをマッチングし商品開発を行うという内容でした。 詳細はF-TRADのサイトをご覧ください。 今日はそのことについて少し書いていきたいと思います。 TSUGI新山さんとの出会い

だれのための「まち」なのか——政治学者・岡野八代さんに聞く、〈ケア〉と〈まち〉

「街づくり」はとても複雑なものです。 そこに住む住民はもちろん、商いを営んでいる人、デベロッパー、行政……さまざまな主体の活動の上に成り立っています。各々の活動はお互いに何らかの影響を与え、結果的にまちという姿で現れます。そう考えると、それらの主体自身が街づくりを意識することから、本当の街づくりが始まるのではないでしょうか。 複数の人たちの手によって進められる街づくりは、考えや思想の異なる人たちも一緒に、ひとつのまちについて議論を尽くさなければならないと考えます。まちにはさ

岡本太郎の原稿がよみがえる新刊『誰だって芸術家』制作の裏側!

(以下、本書より) 芸術はマニアの占有物ではないし、スノッブの教養でもない。ビジネスの商材でもなければ、金庫に溜め込む資産でもない。芸術とはあくまで民衆(ピープル)のものであり、無償無条件でエネルギーを放射し続ける太陽のようなものであって、日々のくらしのなかに生きるものだ。 そう考える岡本太郎は、膨大な作品群を制作する傍らで、数多くの著作を社会に送り出しました。芸術論、文化論、人生論、社会論……、ジャンルはさまざまなれど、想定読者はあくまで市井の人々。だからいずれも平易な

デイミアン・チャゼル監督『バビロン』エンディングで引用される映画史上重要な49の映像の全リスト

文:町山智浩 『バビロン』エンディングで引用される映画史上重要な49の映像の全リストを作りました。  サイレントを滅ぼしたトーキー映画『ジャズ・シンガー』のように、映画史を変えた技術革新になった作品が並んでいます。  ただ、『裁かるるジャンヌ』や『女と男のいる舗道』のクロースアップは、『バビロン』のマーゴット・ロビーのクロースアップの撮り方に影響を与えたから、ここに引用されていると思われます。 『アンダルシアの犬』などゴア・フィルムの元祖が並んでいるのは、『バビロン』のグロ

【本のあるところ ajiro】『ベルクソン思想の現在』刊行記念イベント 「ベルクソン思想の現在地」(3/2)

チケットはこちらから 会場参加チケット・ライブ配信チケット アーカイブ動画視聴チケット(9/14~2週間再販売!) 本のあるところajiroでの伝説のイベントがふたたび! ――2022年はまさしくベルクソンイヤーだった。 昨年3月から7月にかけて、檜垣立哉さん、平井靖史さん、平賀裕貴さん、藤田尚志さん、米田翼さんが著した、哲学者ベルクソンに関する重要な研究書が立て続けに刊行されました。 そして夏、本のあるところajiroでは「21世紀に炸裂する20世紀の生の思考」と題した