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【ライブラリ】notes

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2024年1月の記事一覧

2023年の活動記録、その1

2023年の活動報告です。学校教育とか、表に出ない企業仕事は紹介せず、みなさんがアクセスできる範囲でまとめます。 こうやって書かないと、自分の仕事量を把握できないのでよい機会かなと思って毎年まとめているんです。これは、その1です。 1月:まだゆっくりした日々 ①【8-9日】東洋経済オンラインに『スマホ時代の哲学』の転載記事 ②【23日】毎日新聞に『スマホ時代の哲学』がとりあげられる 武田徹さんに毎日新聞のオピニオン欄(メディアの風景)でとりあげていただく。1月辺りか

【目次】「文學界」2024年3月号の内容をご紹介します

2月7日(土)発売、「文學界」2024年3月号の目次を公開します。 9月号から配信がスタートしております電子版、今号の配信は1月11日(木)より順次開始します。 ⋱特集 🖊 身体がいちばんわからない⋰評論小川公代「〝規範的身体〟を揺るがす文学 」 インタビュー 町田樹「言語表現がアスリートの背骨になる 」 聞き手・構成=辻本力 ロングエッセイワクサカソウヘイ「時に笑いはセイウチに似たる」 中村佑子「身体を物語ること」 ブックガイド 鳥澤光「書く身体を読む身体 」

出口治明・月本昭男対談——博覧強記×碩学無双! “歴史と神話の交差点”を語り明かす

 2018年~2019年にかけて、月本昭男さんと出口治明さんの対談が重ねられていました。  今回、月本昭男さんのNHKブックス『物語としての旧約聖書 人類史に何をもたらしたのか』、出口治明さんのNHK「100分de名著」ブックス『貞観政要 世を革めるのはリーダーのみにあらず』が、1月・2月と連続で刊行されるにあたって、その対談のエッセンスを、再構成してお届けいたします。  立命館アジア太平洋大学学長特命補佐・ライフネット生命創業者で、「博覧強記」な教養の達人、出口治明さん。

本が売れない時代に50万部ベストセラー! スゴ腕PR黒田さんに聞いてみた「どうしたら本は売れますか?」

世の中の書籍編集者がいちばん好きな言葉。それは間違いなく「重版」でしょう。私もそうです。 けれど、手間暇いとわず、思いを込めて、苦労して作った1冊がなかなか重版しない。売れない。ミリオンとは言わないから、10万部、5万部、いやせめて3万部売れてくれたら。私には編集能力が決定的に欠けているのでは……。 そんなモヤモヤと諦めを抱えながら2021年に出した1冊の本。それがなんと、突如、半年足らずで12万部を超えるヒットとなったのです。しかも社内では「初版4000部なら……」と辛

國分功一郎『近代政治哲学』(ちくま新書)を読んで

 こんにちは。柚子瀬です。  先日、國分功一郎さんの『近代政治哲学』(ちくま新書)を読み終えたので、その感想を書いていこうと思います。今年はX(ツイッター)に簡単な感想──伝えられる情報量が限られているのでもはや読書報告といえるかもしれない──を投稿するだけでなくて、なるたけnoteにきちんとした感想を投稿していけたらいいなと考えています。  まず、なぜ本書を読もうと思ったかというと、第一に國分さんの作品だからというのが大きいですね。内容の如何にかかわらず、これまで読んだ

【ニッポンの世界史】第16回:授業時間が足りない?—就職者にとっての世界史

A科目とB科目に分かれるまでの世界史の変遷  1960年度指導要領で就職者向けのA科目と進学者向けのB科目に分かれた世界史。A科目は週3時間、B科目は週4時間が標準とされました。  前回の1956年度学習指導要領では、社会科に「社会、日本史、世界史、人文地理」が設置され、このうち高等学校の社会科は日本史、世界史、人文地理から2科目は必ず履修することになっていました。  しかし1960年度指導要領では、社会科として「倫理・社会、政治・経済、日本史、世界史A、世界史B、地理

【ニッポンの世界史】第15回:世界史の分裂!—1960年代の学校世界史と働く青年の教養主義

世界史Aと世界史B:1960年度学習指導要領改訂  「歴史ブーム」が巻き起こる中で、学習指導要領が改訂され、世界史は「世界史A」と「世界史B」の2つの科目に分けられることが決められました。  「世界史A」とか「世界史B」という科目名は、1990年代以降に高校時代を送った年代の人であれば、大学受験の科目として世界史を使わなかった人であっても、聞いたことがあろうかと思いますが、実は1960年度改訂以降の約10年の間にも、「世界史A」とか「世界史B」という科目が設置されたことがあ

ロビー・ロバートソンが奏でた残響のアメリカーナ

ロバートソンはずっとそうだった  昨年、ロビー・ロバートソンが亡くなった。  2023年8月9日のことだから、もう半年がたつ。私がもっとも敬愛していたミュージシャンであったので、彼がすでに地上にいないという事実は、とてもさびしい。  おそらく多くの日本人がそうであったように、私も結局ロビー・ロバートソンが音楽を奏でる現場に立ち会うことはできなかった。そのことも、よけいに喪失の穴が埋まらない原因になっている気がする。  しかし、奇跡的な瞬間もあった。  2002年、「ラスト・

【ニッポンの世界史】第14回:「大国」化する日本と司馬遼太郎の登場

これまでのまとめ  ここでいったん1950年代までの流れを整理しておくことにしましょう。  一番左には、高校のカリキュラムのなかに位置付けられた "公式" 世界史の動きを、真ん中の列には、それに対抗したり影響を与えたりした "非公式" 世界史の動きを配置してあります。  教育や歴史、思想といった分野別に、日本の世界史のあり方の変遷を追ったものはこれまでもいくつか見られます(注)。  しかしそれらの対象の多くはアカデミックなものに限られていたり、政治的な動きとの関連に焦点

分断とナショナリズムを乗り越えるための「小さなシステム」、または自治

先日緑のFIKAの会なるイベントにお邪魔してきた。 FIKAという名前だけで、学生時代スウェーデンに住んでいた僕としては胸が高鳴る。 FIKAとはスウェーデンで広く浸透している「コーヒータイム」のような時間。 ただ、単なる休憩時間というより、コーヒーとシュークリーム(セムラ)を手に、友人や家族、同僚とまったりした時間を一緒に過ごすニュアンスのほうが強い。 スウェーデンで過ごした1年足らず。 自然と調和し、家族や友人との時間を大切にする北欧での生活は、その後の僕の価値観を

静岡 西伊豆 日本三大民宿に泊まる①

1月は私の誕生日月なのだ。もう、誕生日がきてもぜんぜんうれしくない歳になってしまった。 毎年、誕生日は奮発していい宿に泊まることにしている。それがプレゼントだ。 今年も1月の温泉旅始め(湯始めは町田のロテンガーデンで済み)は去年と同じ、伊豆。今年は西伊豆、松崎へ。 そして誕生日スペシャルとして「日本三大民宿」のひとつに泊まることにした。 日本三大民宿は、静岡松崎の「かいとく丸」、三重県紀北町の「美鈴」、富山県氷見の「魚恵」だったようだが、「魚恵」は廃業してしまったようだ。現

【ニッポンの世界史】第13回:現在の世界史教科書のルーツ?—上原専禄と吉田悟郎『日本国民の世界史』(2/2)

 一度は検定に合格したものの1958年の検定で不合格となった上原専禄らによる『高校世界史』。前回は、これを1960年に一般書として刊行した『日本国民の世界史』(岩波書店)の構成と特徴について紹介しました。  世界史教育の歴史において「現在の世界史教科書のルーツ」と位置付けられることの多い『日本国民の世界史』ですが、今回はさらにいくつかの視点から「ニッポンの世界史」に対して果たした役割を考えてみたいと思います。 〈にとって〉の世界史:「書かれざる主語」を書く  編者の一人、

【ニッポンの世界史】第13回:現在の世界史教科書のルーツ?—上原専禄と吉田悟郎『日本国民の世界史』(1/2)

上原専禄『日本国民の世界史』  梅棹(→【第12回】)の生態史観が議論を呼ぶなか、中国と日本の遠さを強調することなく、また人類史を一望するような大局的な眺めでもない、「今、ここから」の視点で世界史と向き合おうとした歴史家がいます。以前一度とり上げた上原専禄です。  上原専禄は、ヨーロッパに留学して原典資料を読み込み歴史研究をおこなった第一世代にあたる経歴をもつ歴史家。戦後には西洋史という枠を超え出て「世界史」をいかに描くべきかを構想するようになった人物です。  彼がこだわ

【批評の座標 第19回】「戦場」から「遊び場」へ――西田幾多郎と三木清の関係性を手がかりに「批評」の論争的性格を問い直す(岡田基生)

「戦場」から「遊び場」へ――西田幾多郎と三木清の関係性を手がかりに 「批評」の論争的性格を問い直す 岡田基生 1. 「論争」が「戦争」に変わらないために  「批評」という営みが、批評の対象(言論、作品、活動など)の問題点を指摘する、という側面を含んでいる以上、それは論争的性格を離れることができない。この性格をどう捉えるのか。それが問題である。問題点を指摘することは、直ちに対象のすべてを否定することではない。しかし、しばしば論争という構えを取ると、問題点を指摘する以上の