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”国際系” note まとめ

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This magazine curates notes relating to stuffs between globalness and localness.
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2020年9月の記事一覧

【海外旅行記】早朝のテヘランで絶望したけどなんとかなった話

テヘランへ向かう深夜のバスの中で絶望していた。 財布とパスポートともに旅行中の三種の神器と呼ばれるケータイが、私の手の中で凍り付いたように動かなくなったのである。 その真っ暗な画面は、すっぴんで眼鏡の私の顔を映したまま何も言わない。光らない。鳴らない。 充電はされていたはず。全ての宿の予約はオンライン上で行ったし、航空券のチケットはEメールに添付されていたし、翻訳アプリも入れていたし、地図もダウンロードしてあったし、現地の友達や日本の家族とのやりとりにもケータイが必要な

言語がはらむ文化の多層性:『ヨーロッパ学入門』摘読(1)IV「ヨーロッパの言語」

文化の読書会、前回、山本浩司先生をお招きしてブローデル『地中海世界』中締めの議論会。ひじょうにおもしろい回だった。今回からは、これを。 初めに申し上げると、私は外国語運用能力がすこぶる低い。ドイツ語の文献や英語の文献は何とか読むことができる(といっても、辞書が要る)。それ以外の言語についてはお手上げ。それに、そもそも会話となると、からっきし。 ただ、だからといって言語に関心がないのではない。むしろ逆で、関心は大いにある。 というのも、言語は生活の基層であり、生活そのもの

デュッセルドルフへの擬似一時帰国 和食編

ベルリンに住んで早2年。これまで半年に1回は仕事やプライベートで一時帰国していたのですが、今年は当分は諦めています。となると恋しいのが日本食…ということで、今回ドイツのリトル・トーキョーたるデュッセルドルフに擬似一時帰国してきました。 初デュッセルドルフはまさに擬似一時帰国! 各国和食レストランはあれど、ハレの日の和食でなく、毎日の定番和食が小さなエリアに密集してここまで気軽に食べられるエリアはなかなかないのでは。日本人駐在員の利用を想定しているお店が多いために、スタッフ

ゴルバチョフとナスのムッタバル

ナスの皮が焦げるニオイが好き。 ああ焦げた、いい感じねと、いつものように新聞紙を広げ、焦げたナスを風呂上りのベビーのように寝かせおく。くるりと包むのはタオルでなく新聞紙。ちょっと黄ばんだ新聞紙が、気になった。 新聞紙をくるくるくるとやって、ナスは一列に眠ったが、そこにあらわれたのは、ゴルバチョフだった。なんともいい場所に。目があった。 とんでもない新聞を使ってしまったらしい。注視すると日付は1991年(平成3年)12月22日。民主化(ペレストロイカ政策)を推進したゴルバチ

乳のみにて生きるにあらず

現在のモンゴル高原にあたるユーラシア大陸中央部には、かつて巨大な国が存在していました。おそらくは歴史の授業ですこし耳にしたことがあるかもしれませんが、匈奴の築いた遊牧国家 (紀元前3−紀元後3世紀ごろ) や、チンギス・ハーンのモンゴル帝国 (紀元後13−15世紀ごろ) が、そうしたものにあたります。家畜を放牧して、乳製品を食べ、馬に乗って早く長い距離を移動する「遊牧民」が、広大な地域を治めていました。現在のモンゴルに対する一般的なイメージも、馬に乗って牧畜をする「遊牧民」とい

ティシオ・エスコバル:アートの普遍性を問う「アルテ・インディヘナ」

私が在籍するエクアドルの大学院のクラスメートに、アメリカからの留学生が一人いる。彼女は学部時代、アメリカ合衆国の大学で美術史を勉強し、アメリカ大陸の先住民のアートに興味を持っている。学部時代のある授業で、彼女が先住民のアートの話をすると、「それは工芸だ」とクラスメートたちに批判された。彼女はそれでもアートの文脈で考えようと議論しようとしたが、それに対して2人の女子クラスメートが「工芸をアートとして語るのはアートへ冒涜だ」と主張した。 今でもインディヘナ(先住民)は自分たち作

独語教師の独り言 第1回―教師の発音

 森 泉(ドイツ語教師) 西欧の風景に映し出された語学教師の心の風景、ことば、教育をめぐる私の独り言、4回にわたって思いつくままに語ります。 良き発音は教師の条件 美しく魅力的な発音ができることは語学教師にとって実に大切な条件である、と言ったのは確かスラブ語研究者の黒田龍之介氏と記憶する。当たり前のことを言っているようだが、これがなかなか難しい。正しい発音をするだけでも苦労するのに、さらに美しく魅力的に発音しなければならないというのだ。要するに教室で教師の発する言葉を耳に

イギリスで何を食べても美味しかった話

イギリスの食事はまずい、という日本の常識に真正面から喧嘩を売ってみる。もちろんイギリス料理を制覇したわけでもないですし、住んでいるわけでもありません。ただ、ホームステイしたり旅の途中途中のいろいろなシチュエーションで食した食べ物がそれぞれに美味しかったので。 ホストマザーの作る英国料理、バースのカフェでいただいたクランペットとクロテッドクリーム、美術館のカフェで食べたフラップジャック、海辺の街のフィッシュ&チップス、B&Bのティーコーナーに置いてあった市販のオーツビスケット、